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「おつかれ〜」


会社の後輩にねぎらいの言葉をかけて、俺は会社を出た。

外はすっかり真っ暗だ。

一体何時間働いたのだろう?

確か朝八時に出勤して今が夜の11時だから・・・15時間⁉

どう考えても働きすぎだ。

これまで自分の勤めている会社をブラック企業だとは思ってこなかったが、考えを改めたほうがいいのかもしれない。

会社の上司も同僚もいい人たちばかりだ。

人間関係を築くのが苦手な俺にとっては、本当にありがたい環境だった。

だから気づかなかったのかもしれない。

上手く会社の社畜としてこき使われているということを。

給料も少ないしな〜。転職しようかな〜。

そんなことを考えていたときだった。


「転職をお考えなのですか?」

急に俺の前に一人の女性が姿を現した。

どこから出てきたんだ?

前には誰もいなかったぞ。

怪しい。非常に怪しい。

何かの宗教の勧誘か?


「いや、大丈夫です!今の職場で十分満足してますから」

「でも、先程会社の社畜として働いている割には給料が少ないと嘆いていましたよね⁉」

「何で知ってるんだ?」

「それはですね・・・ちょこっとあなたの頭の中を覗いたからですよ。テヘペロ」

かわいい顔して何言ってんだ?

頭の中を覗いた?え?は?

俺は混乱する。

「それでですね〜・・・実は今、異世界の土地を安く販売しておりまして、そちらをご購入されませんか?というお誘いだったのですが」

異世界だって⁉

これってまさかラノベとかでよくある異世界転生ってやつか?

まさかそんな夢みたいな話が俺に舞い込んでくるとは。

それよりも、この女性は一体誰なんだ?

神様かなにかなのか?


「よくぞ聞いてくれました。私はこの世界と異世界を管理する立場にある者。その名もマリーちゃんです!」

マリーちゃん・・・?

もしかしてこの女、見た目に反してヤバイやつなんじゃ?

やっぱり逃げよう。

俺は全力でダッシュする。

ハァハァハァ。

しばらく本気で走ったので疲れた・・・って、なんで俺の目の前にいるんだよ!


「私からは逃げれませんよ!それでどうします?買いますか?買いますか?」

「何で二回も聞くんだよ。そこは買うか買わないかの二択だろ?」

「いいじゃないですか。大和(やまと)さんにとっても悪い話じゃないと思いますけど」

俺の名前まで知っている。

ということは、おそらく俺の住所も?

「はい、ご存知です。遠藤大和─年齢28歳、独身、仕事は中小企業の営業職、趣味は読書、貯金残高は・・・」

「ちょっと待った〜」

慌てて大声を出してマリーを制止した。

「どうしました?」

「どうしたもこうしたもないよ。何で俺の貯金残高まで知ってんの?」

「管理人ですから!」

いや、言っている意味がわからないが、もうコイツからは逃げられそうもないな。

俺はもう諦めて、マリーから詳しい話を聞くことにした。


「それで・・・その土地はいくらなの?」

俺の貯金残高を知っているぐらいなのだから土地の値段も常識の範囲なのだろう。

「一億円です!」

「一億⁉」

俺が甘かった。

まさかそんな法外な値段を吹っかけてくるとは思いもしなかったのだ。

「無理無理!そんなの払えないよ!」

「分割払いも可能ですが?」

分割払いって・・・。

結局、一億払わなきゃならないじゃん。

「無理だよ一億なんて・・・」

「大丈夫です!こちらの知識を総動員すれば、異世界で一億稼ぐのなんて朝飯前ですから!」

何やらマリーは気前のいいことを言ってくるが、正直コイツの話は信用できない。

俺が疑いの眼差しを向けていると

「何で詐欺師を見るような目で私を見てるんですか?」

「だって詐欺師だろ?」

「違いますよ!」

自分のことを詐欺師呼ばわりする俺にマリーは心底幻滅していた。


マリーの話によると、土地の広さは約一万五千坪、東京ドーム一個分の広さがあるらしい。

あまりそういう不動産関連には詳しくないのでよくわからないが、一億円でその土地が買えるのは破格な気がした。

「あっ、ちなみに購入特典としてある程度の魔法が使えるようにしてあげますよ!」

何⁉

聞き捨てならないセリフがマリーの口から聞こえてきた。

魔法だと⁉魔法が使えるというのか?

「当たり前ですよ。大和さんが転生する先の異世界は、剣と魔法が存在するようなファンタジー世界ですから。当然魔物もいますけどね」

魔法・・・。

それは俺が愛読しているラノベとかでよく出てくるワードで、俺がずっと恋焦がれていたものだ。

それが使える・・・?

俺の感情は揺さぶられていた。異世界に行ってもいいかもと。

その変化を敏感に感じ取ったマリーが、もう一押ししてくる。

「魔物と聞いて少し不安かもしれませんが大丈夫です。特典として大和さんにはそれ相応のステータスをプレゼントするつもりですから!」

俺の不安を払しょくするようにマリーはガッツポーズしてくる。

それが俺の不安を一層掻き立てているとも知らずに。


けど、異世界に行くのも悪くはないかもな。

俺は回想する。

今の俺は普通に生きていく分には十分なお金を稼げている。仕事もある。彼女はいないが、何も悲観することはない。これから素敵な出会いがあるかもしれないからな。

しかし、どこかそれで満足している自分がいた。


本当にそれでいいのか?

やはり人生を楽しむには刺激が必要だ。それが現在の俺には足りない。その機会(チャンス)が今俺に巡ってきたんじゃないのか⁉


そこでようやく俺は決心した──異世界に行くと。


「どうやら決心がついたようですね」

「ああ、土地を買うよ」

「わかりました。では、こちらが契約書です」

一枚の紙を手渡された。


土地の購買契約書。

お値段:一億円。

支払方法:分割払い、年一千万円の十年ローン。

と書かれてある。


そして最後の一文に俺は目を疑った。

払えない場合は、その命で償ってもらいますだと⁉


「これは何?」

「何とおっしゃられましても・・・紙に書いてある通りですけど」

いやいやいや・・・。

そんな平然と言われても。

やはりコイツは信用するべきじゃなかったのかも。

後悔するが、もう遅かった。

「では、楽しい異世界ライフをお送り下さい。一年後に最初の徴収に参りますので、それまでにはあちらのお金で一千万円を用意しておいてくださいね!」

「ちょっと待て!俺はまだサインして・・・」


最後まで言うことなく俺の意識は闇の中へと吸い込まれてしまった。

チクショー、あの(アマ)


こうして俺は異世界の土地を購入して新たな人生を送ることになったのだった。


──────────────────────────────────────────────

最後まで読んで下さりありがとうございます。

できるだけ毎日更新できるように頑張ります!

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