VII
この日も俺は授業をサボって屋上にいた。
授業で教室に居るよりもこの屋上に居る方が長くなっていた。
「……あいつ来ないな」
独り言を呟き、あいつが来るのを待っていた。
待っていた?
なんで俺があいつを来るのを待っているんだ?
まぁいいか…
そして俺は眠りに就く。
………
……
…
カリカリ……
ここはどこだ?
俺は何をしている?
目の前には1枚の描きかけの絵があった。
あぁここは……
「天野先輩コンクール近いから燃えてますねぇ〜。
何描いてるんですか?」
「『夕焼け』だよ。朱色の配色に悩んでちょっと手が止まってるんだけどね」
美術室か……絵は前の高校で美術部だった時に描いていたものだった。
俺はこの時はひたすら絵を描いてたっけ……
「というか三宅。お前は何か描かないのか?」
「私は今アイディア考えてたところですぅ〜」
「そうか。いいアイディアが浮かぶといいな」
「はい♪」
三宅はまた他の美術部員のもとに行った。
「さてとどうするかな?」
そして俺はもう1度この絵と向き合った。
赤いオレンジ色の太陽とそれに染まる空が印象的な絵……
確かこの絵は完成させることができなかったな…
「よし。やるか!」
………
……
…
「ただいま〜」
場面は飛んで家のドアを開けるところだ。
「あれ?帰ってきてないのかな?」
家は真っ暗で人の気配がなかった。
「まぁいいか」
そして俺はリビングの方へ向かった。
リビングの机の上には置き手紙があった。
『今日も遅くなります。
晩ご飯はこれで食べて下さい』
置き手紙の横には千円札が1枚あった。
「今日も………」
母さんは毎日忙しそうだったが、それでも毎朝朝ご飯や弁当を作ってくれた。
俺はそれをありがたいと思いつつもう少し家族の時間がほしいと思っていた。
「………」
………
……
…
「……っ…」
また昔の夢を見ていたようだ…
無理もないか…昔といえるほど前のことでもないし…
「というより寝すぎたな」
空はオレンジ色に染まっていた。
最近サボり過ぎかな?
まぁいいか…帰ろう。
この日神月と会うことはなかった。
………
……
…
「今日もみんなよくがんばったね♪それじゃ解散!!」
あれから数日がたった。
この数日あいつは学校に来なかった。
考えてみたらこの学校で話するのはあいつくらいで、あいつがいないと俺は何か物足りない気がした……
「天野くん。ちょっといいかな?」
「?……はい」
最近、授業サボり過ぎたかな……
「ちょっとこのプリント、神月さんの家に持っていってくれないかな?」
そのプリントは俺ももらった、最終進路選択のプリントだった。
「天野くんでも言ったけど、早く進路決めてもらわなくちゃいけないの……
このプリントは今週の金曜に絶対提出だから早めに
神月さんにも渡して置きたくて…」
「なんで俺なんですか?
俺は神月の家とか知りませんよ?」
「それは神月さんの住んでるマンションが天野くんのマンションと同じだからだよ。
部屋の番号教えるから行ってくれないかな?」
先生が上目遣いでお願いしてきた。
それよりあいつは俺の住んでるマンションに住んでたのか!?
まぁあいつはいつも遅刻して学校来てるしいっしょに帰ってる訳でもないからわからないのも当然か…
「…天野くん?」
「あっ、はい?」
「ダメかな?」
「そんなことないですよ。
マンションが同じならそこまで面倒じゃ無いですし」
「よかった〜♪えっと部屋番は406号室だよ」
406号室か…
俺の階の一つ下だな。
「あともうひとつ話したいことがあるの…」
「なんですか?」
「最近授業サボり過ぎ!!
もう少し授業出なさい!!」
「…はい」
やっぱり最近サボり過ぎかな……
そして結城先生からプリントを貰い神月の家に行くことになった。
………
……
…
俺は結城先生に頼まれて、神月の家にプリントを届けに来たのだが…
「………」
思ったんだが、あいつは風邪とかで学校を休んだんだよな…
もしかしたら寝てて出てこないってこともあるんじゃないか?
「………」
いや、扉の前でこんな風に考えても時間の無駄だな…
とにかく早くピンポンを押すか。
……ピンポーン
十数秒後――
ガチャ……
神月がパジャマで出てきた。
「…よう」
「どうして君が私の家を知っているんだ?」
「結城先生に聞いたんだ。
それでこれ」
俺は結城先生に頼まれたプリントを渡した。
「これは…」
「進路選択のプリントだよ。金曜までに決めて絶対に提出だってよ」
「わかった。ありがとう」
「…思ったより元気そうだな。風邪でも引いてたのか?」
「あっ…あぁ。
昨日まで熱があったんだ。
それで今日は大事をとって休みを取ったんだ」
「そうか…」
「………」
「………」
沈黙が流れた……
早く帰れってことなのか?
「…じゃあそろそろ家に帰るな」
「ちょっと待ってくれ」
「?」
「その……今することがなくて暇だったんだ……
よかったら家に上がって少ししゃべらないか?」
突然の神月からの誘いだった。俺も帰ってすることないしな……
「用事とかがあるんだったらいいんだ」
「いやいいぞ。俺も帰ってすることないしな」
そして神月の家に少しお邪魔させてもらうことになった……
………
……
…
家に入ると俺の家と同じ間取りのようだった。
まぁ同じマンションだしな
「何もない家だがまぁくつろいでくれ」
神月には悪いが言う通り何もない家だと思った。
部屋の真ん中にソファと机があるだけのまるで生活感のないリビングだった。
俺の家に似てるな……
「お茶でも入れるからそこのソファに座っといてくれ」
神月はそう言ってキッチンの方に行った。
何か神月の家だと思うと落ち着かないな。
ふと、机の上に一枚の写真があるのに気が付いた。
「……これは」
「ウーロン茶でよかっ………!!」
写真は幼い女の子とその子の母親のような人が写っていた。
母親のような人は神月似ていてとても美人だった
幼い女の子は神月かな?
笑っている顔は今の神月の笑顔とまるで違っていて今の雰囲気とは反対だった。
「勝手に見るな…」
ドスの聞いた声が上から聞こえてきた。
神月はとても怒っているようだ。
「…悪い、気になって見ちまった」
写真を勝手に見たのが悪いと思って、さっき置いてた場所に戻した。
「…それは私が6歳の写真だ。そしてその横にいたのが私の母だった人…」
母だった人?
「そうか…」
「……そうだ。飲み物はウーロン茶で良かったか?」
「あぁ」
俺はこの時神月の言動からわかったことがあった。
それはこのことには触れるなと言っていたようだったことに。




