V
あれから数日が過ぎた。
気が付けば俺は屋上に足を向けるようになっていた。
「よう」
「また君か」
飽きれた目を俺に向ける不良少女。
「今日もサボりか?」
「そういう君もだろ?」
「そうだな」
何となくこいつと居るのは楽しかった。
なんでだろうな?
あんなにも人と接するのに嫌悪感を抱いていた俺が…
「どうした?」
「いや、なんでもない。ところで思ったんだが、あんた授業に出てるとこ見たことないぞ?」
俺はたまに授業サボってここに来るぐらいだが、こいつは全く出ていないと思う…
「私はちゃんと考えてサボっていると言っているだろ?一学期は真面目に授業受けてたから心配しなくても無事卒業できる」
それでも俺が編入してから授業に参加しているのを一回も見たことがない…
「そうか」
「ところで君はどうなんだ?」
「今のあんたよりかは真面目に授業に出てるよ」
「そうか」
……屋上に行けばこいつは必ず居て、そして俺はたまに授業をサボって屋上に行くのが日課になっていた。
………
……
…
病院―――
「天野くん。最近何かいいことでもあったかい?」
先生は診断書を書きながら、そんな話を切り出した。
「どうしてです?」
「どことなく楽しそうな感じがするよ」
「そうですか?」
「あぁ」
「………」
「まぁ、いいことだよ。君がこの病院に初めて来た時は絶望を受け入れた悲しい瞳をしていたからね」
「………」
「たまにはこの先に来るかもしれない絶望を忘れて今の幸福にしがみつくのもいいものだよ」
「はい」
確かに最近は楽しいかもしれないな…
理由はあいつかな?
………
……
…
屋上―――
やっぱり、今日も屋上に向かった。
「また来たか」
屋上にはやっぱりこいつがいる。
「悪いか?」
「いいや? 君と話すのは楽しいからそんなことはないぞ」
「俺もあんたと話すのは楽しいな」
「そうか」
「………」
「………」
静かな沈黙――
それはなぜか妙に心地よかった。
………
……
…
陽も沈み始めた頃、神月がこんなことを聞いてきた。
「君には夢があるか?」
「夢?」
「そう夢。」
俺は……
「…特にないな。あんたは?」
「私は…この世に悔いなく笑って死ぬことだ」
こいつ何言ってんだ?
「あんたの人生はまだまだ長いだろ?どんな風にこの世を旅立つなんて今は考えなくてもいいんじゃないか?」
そう、こいつの人生は長い。俺と違って…
「…人はいつ死ぬかわからない。もしかしたら明日車に跳ねられて死ぬかもしれないだろ? 通り魔に出会って殺されるかもしれないだろ? …私は、たとえそんな不慮な事故に巻き込まれたとしてもこの人生に悔いはなかったと思いたい。」
こいつは、なんてことを考えているんだ……
そんな事故なんてほとんど立ち合うことなんてない。
普通、そんなものとは自分は無縁だと思うだろ?
こいつは………
俺とは違って運命というものを信じてる……
それを受け入れる器があるんだ……
「あんたやっぱ変わってるな」
「そうか?」
「かなり」
「失礼な奴だな」
「…俺は今まで遠い先のことを考えてた気がする。」
「………」
「だから、これからはあんたみたいに今を生きるようになろうかな…」
「急にどうしたんだ?」
「あんたの夢に共感したんだよ」
「……そうか」
神月は笑いながら空を見上げていた。
その笑顔はとても綺麗で美しかった…




