XIII
―――『発作』が起こってしまった……
全然『発作』起きないから、もう大丈夫だと思ったのに、これかよ…
やっぱり、俺には…
未来なんてないのかな?―――
―――
俺は車の助手席に乗っているみたいだ。父さんの墓参りが終わって帰っている途中だな…また、夢だ。本当に最近よく見る…
「…陸」
車を運転している母さんは前を見ながら、泣きそうな声で話しかけてきた。
「何? 母さん」
「ごめんね…」
「急にどうしたの?」
「父さんがいないことで今まで苦労かけたでしょ? だから…」
「やめてくれよ。別に苦労とか思ってないし、母さんにも感謝してる。だから、母さんが俺に謝る必要なんかないよ」
「…ありがとう」
母さんは眼に涙を溜めながらも笑った顔を見せてくれた。
このやり取りは今でも、昨日のように思い出すことができる。だって…
「帰ったら、久々に陸のために腕に寄りを掛けて夕飯を作るわ。何がいい?」
「ありがとう。でも、別に何でもいいよ……母さん!! 前!!」
「…えっ」
…俺はこの後の記憶はない。そして、気が付くと病院にいた。
「…っ」
「先生、目を覚ましました!!」
女の人の声が響き、奥から医者が出てきた。
「これが何かわかるかい?」
そういって胸にあったボールペンを出した。
「…ボールペン」
「じゃあ、6×4は?」
「…24」
「じゃあ、このボールペンを使って、ここに何か動物の絵を…」
「なんなんだ? あんたは俺に何をさせたいんだ?」
「脳に障害がないか調べていたんだよ」
「なにが…あったんだ? いや…」
この時、俺は正面から来る大型トラックを思い出した。
「墓参りの帰りに正面からでかいトラックが来て…」
一瞬にして、頭の中で抜けている物に気が付いたのを覚えている。
「母さんはどこだ!?」
その一言で、部屋にいた医者や看護師が言いにくそうな顔をしていた。
「どうなったんだよ!? なぁ!!」
「言いにくいことなんだが…」
「君のお母さんは亡くなった。完全に即死だったそうだ…」
―――俺は悪い夢でも見ているんだと思いたかった…
…そこから医者は刻々と事故のことなど、話してくれた。トラックの運転手が飲酒運転していたこと、1ヶ月以上俺が昏睡状態だったこと、その間に母さんが火葬されたこと、そして、その事故で俺の脳に何らかの損傷が出来ているかもしれないこと…
「君はほとんど身体の外傷はなかった。しかし、脳に何らかの障害が出来ている可能性がある」
「障害?」
―――この障害が俺の未来を奪うことになったんだ…