えっ!? 現世界転生ですか!?
時は平成。世は……、乱れていた。
「えっ!? 現世界転生ですか!?」
普段から異世界転生ものの小説を読み漁っていたため、つい口を突いて出てしまったようだ。
「現世界って……他に何転生があると言うのですか」
「いや、その……い、異世界転生……とか……」
彼の名前は二村 太一。
二だか一だか分からん彼は、21歳という若さでこの世を去った。
「はぁ……? 異世界……?」
「あ、いや……すみません」
そんな太一が対峙しているのは、何を隠そう仏様。
現在太一の今後についての面談を行っているのだ。
「すみませんではありません。異世界とは一体何なのですか?」
「えっ!? いや……仏様が気になさるような事ではないですよ」
思わぬところで食い付いてきた仏様に戸惑いを隠せない。
なにゆえスルーしてくれなんだか。うっかりいらぬ事を口走ってしまった数秒前の自分を恨めしく思う。
「いえ、私も知っておきたいのです。今の世の死生観が如何様に変貌しているのか、仏たる私には知る義務があるのです」
「異世界というのはですね……その、中世風の世界? で、魔法とか使えたり……」
なぜ仏様はこの様な仕打ちをされるのだろう。そして、自分が考えた訳でも無いのに、何故これ程に恥ずかしいのだろう。
「魔法? つまり、神通力のようなものなのですか?」
「え? 神通力? あっ、ポ○モンの技の?」
「はて、ポ○モン?」
またやってしまった、自分の学習能力を嘆き頭を抱える太一。
聞かぬが仏ではなかったか。どうか聞かんでくれ。
この仏様、俗世に興味津々である。
「いえいえ仏様、それは死生観等とも一切関係無いものにございます」
「そうですか……して、今の世では人が死ぬと、皆その異世界とやらへ行くと教えられているのですか?」
「いえ、皆が皆という訳ではないのですが……そうですね、一部の人達はそれを願っている、と言いますか」
「ほう、願い?」
はっ、と気付くも、やはり再び手遅れだった。
願い。それ即ち煩悩。この場における最大級のNGワードであった。
「その異世界へ行く事で、何故人々は安らぎを得られるのでしょう?」
「安らぎ……ですか。そうですね、やっぱりチーレム……」
「チーレム?」
もはや太一は自身の思考回路が信じられなくなった。
なにゆえ自分は死んでまで、地雷源でタップダンスを踊っているのか。
そして何故仏様に、よりにもよってチーレム等と言うワードを発させてしまったか。
「チートと……ハーレムを合わせた、造語です」
「!? 複数の女性への結婚詐欺という事なのですか!?」
cheatを知っているのは良いとしても、ハーレムを知っているのはいささか意外である。
「いえ、そうではなくてですね。強力な力で以て敵を蹂躙し、ハーレムを築くのです」
「…………なんっ……と……」
やってしまった。
「あなたも、それを望んでいた訳ですね?」
「まぁ……はい。ぶっちゃけそうですね。して、私の転生先は」
「畜生道」
「あらま」
おあとがよろしいようで。
なんなんでしょうね、これ。
私らしくない、まったりとしたお話でした。