キモオタデブニートでも彼女ができるやさしい恋のおまじない
デブよ、身の程しらずに彼女が欲しいのか?
欲しいのか? んん?
欲しいなら、はっきりそう言え。
そのためならなんでもやりますと言え。
言ったな。
吐いた唾は飲み込ませんぞ。
契約書にもサインしろ。署名捺印だ。実印だぞ、実印。持ってないだと? 銀行印でもいい捺印しろ。
ない、だと?
三文判もないのか?
この糞デブニートめ。
もう拇印でいいから早く押せ。
指が汚れるだと? お前の指が触れた朱肉の方が汚れるわ、デブめ。
押したな。
よしそれでは始めるぞ。
レッスン1 寝るな。
寝てはならん。
睡眠不足で脳の保護機能がぶっとんで魔境に至るまで寝てはならん。魔境は見えない連中がなにか囁いてきたり、あるはずのないものが見えたりするワンダフルでスペクタクルな境地だ。
素晴らしいぞ。
合言葉は、脳をぶっ壊せ! だ。
なんで、だと?
分かりきったことを聞くな。
そのともなにか? お前はその脂まみれの脳みそで女を口説けるのか? 洒落た会話ができるのか? んん?
そもそもお前は家族以外の女と話したことがあるのか?
ないんだろう?
そんな脳みそはぶっ壊して誤作動させるしかないだろう。
とにかく寝るな、寝てはならん。
レッスン2 飢えろ
ダイエットしろと言ってる訳ではない。
大体、お前が万が一奇跡が起きて痩せたとしても、モテはしない。諦めろ。
睡眠不足と同じく脳をほどよくぶっ壊すためだ、水はいいが一切カロリーを摂取してはならん。
心配するな脂デブ、なにも食わなくても脳が死にはしない。お前の体を分解して食い始めるからな。
脳にお前の体を生け贄に捧げよ!
レッスン3 香を焚け
デブよ。お前はイカの臭いだけではなくどこの腐った海産物だ、というぐらいの異臭を放っているな。
大変、よろしい。
おまじないには穢れが必要だ。だが、いささか俺が耐えられん。
香焚くのだ、デブよ。さっさとそのパソコンでポチれ。アロマオイルはだめだぞ。火をつけるタイプにするのだ。
部屋の一酸化炭素濃度を脳が壊れるくらいにあげろ。
さて、いよいよおまじないだ。
聞いてないだと?
当たり前だ、お前には一言も言ってない。
お前にまともな手段で彼女ができるものか。
お前に彼女を作るには、道を外れねばならん。
もう遅い。なんでもすると言っただろう。契約書にもサインしただろう。
冥府魔道に落ちる覚悟をしろ。
もう入り口は見えているぞ。
レッスン4 呪文を唱えろ。
いい具合に脳が壊れてきたところで、脳を違うところにシフトしていくぞ。
このリズムで呪文を唱えろ。リズムが大事だ。リズムを崩すな。忘れるな。
呪文? それはなんでもいいお前の好きにしろ。
いいか、この世には神も悪魔も存在しない。
存在しないったら存在しない。
ゆえに俺も悪魔でもなんでもない。
ただの親切な人だ。
神も悪魔もない、あらゆる不可思議は存在しない。存在しないものに対応する呪文も魔方陣も存在しない。あったとしても意味がない。
だからそれはお前が作れ。
魔術師がやたらと体系づけするのは、現実に、神々の法則に介入するのは他の法則が、少なくとも体系が必要だからだ。
外に対して意味がなくても、内に対して意味があればいい。
なにをとまどう?
お前に彼女を作るのは神々に逆らうほどの大業と知れ。
やれ。
寝るなよ?
壊れるまでやれ。
なんだ?
飽きるから音楽が欲しいだと?
アホか? いやわかっていたがアホなんだなお前は。
音楽など法則の塊だぞ、やつらは伊達にムジーナを名乗っている訳ではないのだぞ。法則に介入して狂わせようとするお前が、いや世界の法則が狂わなくともお前の法則が狂えばいいのか。
では、三拍子の音楽からお前の鼓動から最も遠いものを選べ。
いちいち聞くな。少しは自分で考えろ。
お前の心臓は三拍子で脈打っているのか? 心室が三つあるのか? んん? デブだと血を送るのに心室三ついるのか? んん?
わかったら、さっさと三拍子で一番嫌な音楽を選べ。
フラメンコ、確かに悪魔の音楽だな。
聞き慣れると案外いけるだと。
バカめ。
それはお前が三拍子で鼓動を刻む心臓というありえない存在に近づいていっているだけだ。
レッスン5 幻覚を見ろ
お前が好きな女の写真を用意しろ。
待て、そこでなぜアニメキャラが出てくる。壊れすぎて人と絵の区別もつかなくなったのか?
それが理想の女だと?
いいのかお前はそれで?
いいのか。
知らぬあいだに人間は変わってしまったのだな。
ではそのアニメキャラを凝視せよ。目玉を動かすなよ、まばたきもするな。ひたすら凝視せよ。
視線に狂気をこめろ。
それ、今度は白い紙を見つめろ。
アニメキャラの補色残像が見えるだろう。
そこに幻覚を乗せろ。
感覚としては脳から溢れた水が眼に伝っていく感じだ。脳を食い荒らした虫が視神経も食い荒らして眼を破る感じでいいぞ。
お前の脳の保護機能はもう壊れている。幻覚を乗せるぐらい容易いだろう。
お前の理想の女を映画よりも写真よりも、現実よりも鮮明に、息遣いを感じるように幻視しろ。
レッスン6 生き人形を作れ。
喜べデブよ。いよいよ彼女作りだ。
落ち着け落ち着くのだ、デブ、ハウスだハウス。
よしよしいい子だ。
まず彼女の素材として、等身大の人形を用意しろ。なにお前に人形を作る技術も、高価な人形を買ってくる財力も期待などしてない。
押し入れにしまっている空気入れて膨らませる式のビニール嫁でいいから早くだせ。
なに? それじゃいままでと変わらないだと。
デブ、お前ごときにいきなり人間の彼女ができる訳がないだろう。身の程を知れ。
安心しろ、作るのはただの人形ではない。生きている人形だ。
お前のビニール空気嫁に命を吹き込む。
俺の大好きな立川流の髑髏本尊の法を応用する。
ブタよブタよ、マスかきブタよ、いつも朝昼晩晩晩とやっているように、なに朝朝朝昼昼昼晩晩晩晩晩だと?
お前、正気か?
まあいい、マスをかいて、ええい、いま粗末なものを出さんでいい。
なぜ、マスかきの話になるとそんなに張り切る?
んん? ライフワークなのか。
そうか、まあ、なんだ頑張れよ。
それでだ、マスかいて出た精子を女の愛液に混ぜて空気嫁に塗り込むのだ。
死にそうな顔をせんでいい。お前に女の愛駅が無理なのはわかっている。嫁汁でいい。押し入れに嫁と一緒にしまっているローションがあるだろう、それいい。
ただ精子のローション混ぜを塗りこめばいい訳ではない。精子の一匹、一匹を一人の人間と見なせ。
分かるな?
朝朝朝昼昼昼晩晩晩晩晩で幾千万、幾億の生け贄を捧げるのと同じになる。
香を焚け。
呪文を唱えよ。
空気嫁を幻視しろ。
脳よ、幾千万の狂気の果てへとんでいけ。
レッスン7 チャクラを回せ。
へそ下三寸にあるというあれだ。
あれを物理的に刺激して回す。いままでのレッスンに比べれば遥かに簡単だ。五分で終わる。
ビール瓶を底からケツの穴にねじこ、おお、躊躇いなくいったな。完全に裂けたな。一生、垂れ流しだなこれは。
ええい、ブタはブタらしく鳴け。へけへけと気味悪く笑うな。
だが、いい壊れ具合だ。
花丸をやろう。
レッスン8 解脱。
お前の空気嫁、毎日嫁汁と精子を塗りこんでいるお蔭でいい色合いになってきたな。腐った人間の皮みたいで非常にいいぞ。
そうか毎日甘えてくる可愛い女か。
おめでとう。彼女ができたではないか。
なに契約だ、礼を言われることではない。どうしてもというなら、お前が死んだあとに腐臭を放つ魂を回収させてしまうとしよう。
あ、破裂したな、お前の空気嫁。
デブ、お前が正常位で体重をかけるからだ。
嘆くなデブ、お前は俺の期待以上によく壊れた。
だから、褒美をやろう。
服を着ろ。
外へ出るぞ。
何年ぶりの外だ? デブよ。
見よ、デブよ、外には女が無数にいるぞ。
お前は十分に壊れた。
拐うなり強姦するなり好きにするがいい。
お前にはその権利がある。
警察には捕まるだろうが、お前にはもうどうでもいいだな。
捕まったとしてもお前は精神鑑定で無罪になるだろうし、もし刑務所に入るとしても寂しくはないぞ。
だって、潰れてしわしわになった腐った人間みたいな空気嫁、お前の後ろに憑いてきているぞ。