初デート?
まあその後いろいろあって今に至るわけだ。
俺は今秋葉に来ている。もちろん乃花と二人で。今日わかったことはこれは初デートなんて甘いものではなく荷物もちという労働だ。
買っているのが洋服とかならデートとも言えたのだろうが・・・残念ながら俺が両手に持っているのはとても残念なものだ。
まず右手の小さな袋には、某人気アニメショップで購入した、新刊ラノベ三冊。ここまでなら普通の女子のヲタクとしてすんだのだがそうは行かなかった。そもそもラノベ買う女子っているのかな。あまり女子のヲタク事情に詳しくないのでわからないが。ここまでなら荷物も多くないし、ライトなヲタクで済ませられたのだが次に乃花が向かったのは俺もよくお世話になっているエロげーショップだ。ここで五本のゲームを買ったことで俺の両手は完全に埋まった。
俺が一番驚いたのは乃花がエロげーを買ったことではなく、乃花が行ったエロげー屋が俺がよく通っていた店だったことだった。その店は大通りにあるような店じゃなく裏路地の雑居ビルの三階にある店なのだ。普通のエロゲーマじゃまずしらないようなところなのだ。おそるべし女。高嶺乃花。
そんな俺の考えなど全く気にしないでズンズン足を進めていく。俺はその後ろを金魚の糞のようについて行くことしかできない。願わくばこれ以上荷物を増やさないで欲しい。
俺の願いが通じたのか乃花は秋葉には似つかわしくないお洒落なカフェの前で足を止めた。
「お昼にするわよ。」
今日はずっとこの調子だ。必要最低限のことしか話さない。てか必要なことも話さない気がする。朝あったときなんて俺がおはようって言おうとしたら「おそい。行くわよ」と返された時はそのまま帰ろうと思ったが奴の一言でその考えは一蹴された。
「池尻さんにあんたがヲタクだってこと言うわよ」
その後の言葉は言わなくてもわかるだろうというような目で言った。要するにばらされたくなければ私に従えということだろう。てか何で俺が池尻のこと好きなこと知ってるんだよ。まさか。エスパー?恐るべし高嶺乃花。
「早くしなさい。愚図」
へいへいと軽く答え後に続く。そのカフェは外観どおり中もお洒落な空間が広がっている。両手にあるものがなければ一瞬ここが秋葉であることを忘れるところだった。
俺たちが案内されたのは店の中ほどに位置した二人がけの席だ。時刻は後二時過ぎ。朝から何も食べていない俺は腹ペコだ。気分的には牛丼とかガッツリしたものが食べたいのだが店の感じからしてそういうものは望めなさそうだ。しかもなんか高そうだしな。
「ここよくくるのか?」
向かいに座りメニューを見ている乃花に聞くと奴はメニューから目を離すことなく答える。
「来たことあるわけないでしょ。秋葉に来るのもはじめてなんだから。」
初めてきたやつの買い物の仕方じゃなかったぞ。この店とかも普通に何回も来た事あるみたいに入っていたのに。女子というのはこういう生き物なのか。それとも高嶺乃花という人物がこうなのか。
「ボーっとしてないで早く決めなさいよ。」
いやいや。一個しかないメニューを独占して見てたの誰だよ。 理不尽、暴虐という言葉を体現したような奴だ。
乃花の早くしろよという視線を浴びせられながら手渡されたメニューを見てみると予想通りお洒落な名前の料理が並んでいる。わかるのはカルボナーラと海老ドリアくらいなもんだ。
「決まったの?」
俺があぁと答えると乃花はすぐに店員さんを呼んだ。俺たち以外に数組のお客がいるだけで比較的に手が空いていたのかすぐに店員さんはやってきた。俺は結局カルボナーラを注文することにした。対する乃花は海老ドリアだった。
まさかこいつもお洒落なメニュー名に怖気づいたのか。まあ普通の高校生だったらこういうお洒落な店よりファミレスとかの方なじみがあるだろう。
店員さんが注文を取りにきてから何分足っただろう。その間俺たちは一言も話していない。せめて乃花がスマホでもいじってくれれば俺もスマホいじるのだが奴はちらちらこっち見たりそらしたりを繰り返している。ただの無言よりも性質がわるい。この空気に耐えかね俺は無視される覚悟で話しかけた。
「お前。ヲタクだったんだな・・・」
今日の率直な感想だった。クラスの奴が知ったらどう思うのだろうか。てかこいつの弱み握ってんじゃね。
「はぁぁぁぁ?タクじゃないし。」
否定する奴の顔は真っ赤になっている。この期に及んで否定するとか無理があるだろうと思う。
「じゃあこれはなんだ?」
俺はさっき買った流行のラノベを袋から取り出し乃花の目の前に突きつけた。ここでエロげーを出さなかった俺の良心を褒めて欲しいものだ。
「なに。小説読んだらヲタクになるの。あんた馬鹿じゃないの」
そういわれるとこと言葉に困るがやっと攻勢に出れるこの場面で引くわけにはいかない。
「じゃあこの小説のタイトルを言ってみてくれよ」
たいていのラノベのタイトルって声に出すと恥ずかしいものだ。乃花が買ったラノベも例外じゃない。
「何よ。簡単じゃない。キンタマでしょ?
作者のために訂正しておこう。乃花が買った小説の名前は金霊という今巷で流行っているものだ。読み方はおうごんそうるなのだがファンの間ではキンタマと呼ばれ愛されている。そして男についている二つのタマも同じ名称が使われる。だから少しは恥じらいを見せるかと思ったんが全くそういうそぶりを見せないものだから俺のあては完全にはずれた。それとも睾丸=キンタマという風に考えないのかもしれない。
「お、おう。これはやってるらしいな」
乃花にギャフンといわせられなくて残念だったがさっきの変な空気に戻るのだけは避けたい。とりあえず話を続けるために適当に言った言葉のだったのだが思った以上に乃花に噛みつかれることになった。
「ちょっとあんた。もしかして読んでないの?」
ヲタクだからってラノベやゲームをすべて網羅しているわけではない。これはヲタクじゃない奴らの偏見以外の何者でもないと思う。そもそも一言にヲタクといっても全員がアニメヲタクというわけでない。中には電車が好きなものアイドルが好きなもの種類は無限大だ。もっと細かく言うならゲームやるけどアニメは見ないという人もいるだろう。二次元ヲタクですら数種類のタイプがいるわけだ。
「たまたま読む機会がなくてな
なんで俺がこいつのこと気にして話さなきゃいけないんだよ。脅されてなけりゃつまんないから読まないんだよっていってやるのに。
「はぁーよくそれでヲタク名乗れたわね」
完全にあきれられてしまったようだ。そもそも一度たりとも俺は自分でヲタクと名乗ったことはない。
「じゃあそれを読んでる高嶺は俺より上級のヲタクってことだな」
自分の発言がヲタクであることを認めたことに気づいていなかったようだ。俺にしてやられたのが気に入らなかったのすさまじい眼光で睨みつけてくる。
しかしここで手を抜いてやるほど甘くない。
「やっぱりヲタクなんだな。学校の奴らが知ったらどんな反応するのやら」
目には目を。歯に歯を。脅しには脅しを。日本にはほんとにいい言葉があるとこのときほど思ったことはない。
「言ってもいいわよ。その代わりあんたがヲタクだってこと池尻に言うだけだから。そもそもあんたの言うことなんて誰が信じんの」
乃花が言うことには一理ある。クラスで男女問わず人気を集める乃花と入学して一週間事務的会話が以外誰とも話したことがない俺とでは結果は見えている。奴をみてヲタクだと思う奴はいないだろう。現にアニメショップでもゲームやでも控えめに言ってかなり浮いていた。
「今更なんだが何で俺今日つれてこられたんだ?」
お世辞にも仲がよいとはいえない間柄の俺をどうして連れてきたのかそこが一番気になっていた。思いつく理由としては俺がヲタクだからとか、単に荷物もちが欲しかったからとかくらいだ。
「ああいうところって女子一人じゃ入りにくいじゃない」
乃花の言うああいうところとは俺がひそかに通うエロゲー屋「宝の山」のことだろう。そういう割りに結構堂々としてたような気がしたけどな。
「まぁそれもそうか。お前エロゲーまでやるのな」
俺のエロゲーという言葉を聴いた瞬間乃花が俺のほうをまた睨む。
「こんなところでエロゲーとか言わないで。恥ずかしいじゃない。」
至極真っ当な意見だがさっきキンタマって普通に言ってた奴に言われるとどうも納得できない。
「お待たせいたしました。こちら海老ドリアとカルボナーラでございます」
ちょうど会話の切れ目に店員さんが俺たちの昼飯を持ってきた。会話をいったん切り上げ腹ペコのの俺は早速カルボナーラ食べることにした。
ファミレスや家で食べるものと違ってやはりうまい。端的に言うならば濃厚な感じがする。こういうときに気の利いたコメントが言えないあたりが俺とリア充の違いなのかも知れない。
「なにこれ。チョーうま。」
どうやらリア充筆頭の乃花も俺とどうレベルらしい。まあ正体はただのヲタクだもんな。
俺たちは食事中特に会話することなくもくもくと食べ続けた。朝から何も食べていなかったのもあるがすぐに俺は完食した。対する乃花を見るとまだ半分くらい残っている。様子を見る限り腹がいっぱいというよりもただ食べるのが遅いようだ。その証拠にドリアを口に運ぶたびに舌鼓を打ちながら笑顔になっている。普段奴の偽者の笑顔を見ることはよくあるがホントの笑顔を見るのは初めてな気がする。不覚にもどきどきしてしまう。
「なにみてんの。キモ。」
俺のどきどきを返せくそビッチ。その後もなんどかあらぬ容疑をかけられ罵倒されることになった、。
そんなこんなで昼飯を終えた俺たちはまた秋葉の町を散策している。ホントはこのまま帰宅という流れだと思っていたのが乃花が買い忘れたものがあると言って最初にラノベを買ったアニメショップに向かっているところである。これだけ買ってまだ買うものがるのかよと愚痴をこぼしたくなる。
でも俺も秋葉に始めてきたときはなんか興奮して別に秋葉じゃなくても買えるものまで無駄に買って帰りが大変だったななどと懐かしいことを思い出した。
「中下。おそい。愚図。」
今日だけで何回愚図って言われたかわからない。たぶん普通に生きている人間が生涯で言われるあるだろう愚図は今日だけで余裕で超えている。そもそも普通に生きていて愚図って言われることなんてほとんどないと思うんだが。
店の前に着くとここで待っててと言って一人で店の中に入っていった。仕方なく俺は店の前でスマホみて時間をつぶすことにする。
「あれーシューヨウだー」
俺の前に見知らぬ美少女が立っていた。池尻さんとも乃花とも違う正統派美少女だ。小柄な体型に似合わぬ大きな胸そして優しそうなパッチリとした目。小動物のようなかわいさを持っている。これ何のエロゲーですか。
「え、えと人違いじゃないですか?あっもしかして学校で話しましたか?」
彼女が着ている制服は俺たちが通う高校のものだ。しかし俺たちの学校は学年によってリボンが違うとか言うエロゲーの定番のような設定はない。だから彼女が先輩なのか同級生なのかもわからない。ひっかかるのはシューヨウという呼び方だ。
「えー入学式ちゃんときてた?」
もちろんちゃんと出席している。言われて見ればなんか見たことあるきがする。しかし思い出せない。
「そもそも俺の名前はアキハです。シューヨウじゃないです」
久々にこの間違いされた気がする。とはいっても天然で間違えたのはこの人が初めてだな。故意に間違える奴はたくさんいたが。
「なるほどねー。それでシューヨウなわけか。めんどくさいからとりあえずこれ見て」
そういって彼女は自分のスマホを勢いよく俺の目の前に差し出す。画面を見るとそこには一人の男子が眉間に手をあていかにも中二病感満載のポーズをとっている。何か見覚えがあるきがしたしたがとりあえずスルー・・・
「ってできるかぁあああああ」
思わず考えていたことが口に出てしまった。それも結構なボリュームで。しかし落ち着いてはいられない。何を隠そう中二病感満載の少年は中学二年のとき俺だ。しかしなぜその写真を彼女が持っているんだ。
「ちょ、ちょっといきなり大きな声出さないでよー変な人だと思われるじゃん」
変な人でもかまわない。それよりも大事なことは彼女がなぜその写真を持・っているのかだ。その写真は俺の黒歴史の筆頭だぞ。
「そ、その写真は一体とこで?」
怒りなのか恐怖なのかわからないが声が震える。
「どこでってシューヨウからもらったんだよー闇の力に目覚めたーとか言ってさー。まぁーあの時、異能力系のラノベは流行ってたもんね」
俺が渡した?いや正確には写メなわけだから俺が送ったということになる。残念ながら俺のスマホに女子は三人しかいない。母親。妹。乃花だ。よってまだ名前も知らない彼女に送ることはまず不可能だ。
「で、でもあなたの連絡先を俺は知らないですし」
心底不思議そうな顔をして首をかしげる。
「そんなのわたしもしらないよー。てかあなたとか他人行儀な呼び方やめてよ。昔みたいにミナトって呼んでよ」
ミナトという名前を聞いて俺の頭の中のもやもやがすこしずつなくなっていった 苗字はしらない。中学二年の頃まだ俺がライトなヲタクだった頃にはまっていたネトゲで仲良くなった少年の名前がミナトだった。彼は俺よりそのゲームに詳しくヲタクだった。彼の存在がなければ俺は今のようなヲタクにはなっていなかっただろう。なぜな俺にエロゲーのことを教えてくれたのは彼だったから。彼とはSNSでもやり取りをしていたから俺が写真を送っても不思議ではない。しかし俺の知ってるミナトはこんなかわいい女子ではなく下衆な言葉を平気で吐く紛れもない男のはずだ。
「忘れちゃったかな・・・もう二年前だもんね」
ミナトは二年前突如ネトゲから姿を消し連絡が途絶えた。最初なにかあったのかと気にしていたが時間がたつにつれ俺は気にしなくなっていた。ネトゲをしていればよくあることだ。新しいゲームが出ればみんなそっちに移るし飽きてやめる奴もいる。なんだかんだ俺もあれ以来ネトゲとはずいぶんご無沙汰だ。
「いや、俺の知っているミナトは下品な男のはずなんだ」
ミナトはよく言っていた金髪ビッチって最高じゃね?と。どう考えても目の前にいる美少女が発する言葉ではない。
「なにそれーひどいなー。でも仕方ないか。あの頃は金髪ビッチさいこーとかよく言ってたもんねー男の子だと思われても仕方ないか。」
彼女は笑いながら俺の肩を叩く。痛みは全く感じない。もともとそんな力強く叩いていないのはもちろんだが、俺が彼女の言葉に呆然としていたかもしれない。
「え、ほんとにミナトなのか?」
彼女はパッと笑顔になり大きく頷いた。
「ゲームいきなりやめちゃってごめんね。ずっと謝りたくって」
どうやら彼女はネトゲをいきなりやめたことをずっと気にしていたらしい。さっきも言ったがネトゲというのはそういうものだ。だから気にするとはないのだがとペコリと頭を下げるミナトを見て思った。
「いや、別に気にすることじゃないだろ。それよりさっきの写メ消してくれ」
あんなものがこの世に存在していたら俺は恐怖と羞恥で夜も眠れない。
「えー。かわいいじゃん。よーしこの写めを消して欲しくば力ずくでこのスマホが奪うのだな。」
急に変な寸劇が始まったと思ったらミナトはスマホを天に掲げた。まあ要するに取れるもんなら取ってみろーって奴だ。
「んじゃ。遠慮なく。」
残念ながらミナトが精一杯手を伸ばしてもせいぜい俺の頭よりちょっと上くらいだ。要するに少し手を伸ばせばすぐ取れてしまう。俺はミナトから軽くスマホを取り上げると早速写真を消した。
「ふふふ。甘いぞ。シューヨウ。」
ミナトは俺から取り返したスマホを見ながらニヤニヤしている。それにしてもいつまで続くんだその寸劇。
「何がだよ。ちゃんと消したぞ。」
何が甘いのかさっぱりわからない」
「それが甘いのだよ。ジャジャーン」
変な効果音と同時にミナトがスマホの画面を俺に見せてくる。そこに写っているのはさっきデータ世界の波に飲まれたはずの俺の写メだった。
「おい。早く消せよ。」
俺がすばやくミナトのスマホに手を伸ばしたが間一髪のところでかわされてしまった。しかもその後スマホを制服の胸ポケットにしまいやがった。
「取れるものならとってるがよーい」
誇らしげに胸を張るミナト。さっきのミッションの危険度が1だとすると今回の危険度は10もしくは無限だ。もし少しでも手先が狂ったらミナトの立派な胸に触れてしまうかもしれない。うん?待てよ。むしろ手先が狂ったほうがよくね。いやいや目的を見失うな。あくまでも目標はスマホだ。胸ではない。煩悩よ立ち去れ。
「ほれほれーもーあきらめたのか」
俺の葛藤を知らないミナトjは俺を挑発する。仕方ないここは甘んじて奴挑発に乗ることにしよう。俺がスマホを奪取するべくミナトの胸に侵攻していく。あと数センチというところで待ったかかった。
「ちょっと。あんた人が買い物してるときになにしてんの。」
待ったをかけたのは小さな袋を持った高嶺乃花だった。俺は伸ばしかけてた手を引っ込めた。
「遅かったなー買い物は済んだのか?」
初めて俺は奴に感謝したかもしれない。乃花がこなければ俺は生涯性犯罪者の汚名を背負って生きていかなければならなくなっていた。
「荷物持ちもろくにできないなんて、ホントつかえない愚図ね」
俺の質問に答えることなく、乃花は地面に置かれたいる紙袋を見ていった。
「わ、わるい」
蛇に睨まれた蛙というのはこういうことを言うのだろう。あまりの眼光に俺は反抗することができずに素直に謝罪した。
「愚図はおいといて。何で会長がここにいるの。」
会長って?と思ったが聞いても答えてくれなさそうだったので黙って様子を見守っているとミナトが口を開いた。
「いやー歩いてたらたまたま昔の友達に見つけたから昔話に花を咲かせたんだよー」
どうやら会長というのはミナトのことらしい。ミナトと乃花が知り合いとは世間は狭いとはよく言ったものだと関心する。
「会長ってなに?」
恐る恐るミナトに聞くとその答えはいまだに俺を睨みつけている乃花から意外にも返ってきた。
「あんた昨日の入学式きてなかったの?」
なんかさっきも同じ様なこと言われた気がするな。もちろん参加していた。でもその前日も遅くまでゲームしてたから眠くてほとんど聞いてなかったけど。
「ならわかるでしょ。あんたの横にいる人は湊ミリア。うちの学校の生徒会長よ」
てかミナトって本名だったのかハンドルネームか何かだと思っていた。それにしても生徒会長ねー。人は見かけによらないな。俺の生徒会長のイメージはメガネでシャツをインしているがり勉タイプ男だ。ミナトはそのイメージの正反対に位置する超美少女だ。
「とりあえずメガネかけるか、スカートひざ下にするかどっちかにしろよ。キャラ薄いぞ。」
生徒会長はメガネこれははずせないだろう。のこういう美少女が会長をする場合はド田舎の高校に限る。
「やっぱり甘いよ。シューヨウは。学校内では、メガネでスカートは膝下だし。なんと・・・おさげなのだよ~」
詰め込みすぎて逆にキャラ立たない奴だろ。たまにいるのんだよなー。いろんな属性のキャラのいいとこだけとった結果中途半端なキャラになっちゃうキャラ。おとなしいキャラなのに私服ギャルとかね。ミナトの場合こだわりすぎてガチの地味になってる奴だ。
「甘いのはお前だ。黒縁メガネで一見地味だけどスカートは短いというギャップがあるからいいんだよ。お前のは詰め込みすぎて地味キャラじゃなく、ただの地味なんだよ。」
ただの地味キャラやくそビッチがヒロインなんて需要なさ過ぎるだろ。ギャップが命だろ。ギャップ萌え万歳。
「はぁ。まぢ引くわ。てか、会長普通に学校でもそのままじゃん」
今まで不機嫌そうに俺たちの様子を見ていた乃花の一言によって俺たちの属性談義は静かに終わりを告げた。
「話終わったんだったら疲れたから帰りたいんだけど。」
そういえば今乃花の荷物持ちをしてたんだった。いろいろ短時間の間にいろいろありすぎてすっかり忘れていた。
「そうだな。帰るか。ミナトはどうするんだ?」
エロゲーが入っている紙袋を拾い上げながら生徒会長様に聞いてみる」そのときなぜか乃花から睨まれたが気づかない振りをすることにした。
「あー私この後ちょっと用事あるから。また明日ね。」
乃花に手を振るとさっさと行ってしまった。さっきまでべらべら勝手に喋っていた奴がいなくなりなぞの沈黙ができた。
「結局なに買ったんだ?」
乃花は小さめの袋を一つ持っている。店に入る前には持っていなかったからたぶんそれが買ったもので間違いないだろう。大きさ的にラノベだと思われる。
「べ、べつにあんたには関係ないでしょ。」
なに買った聞いただけでこれだもんなー。休日返上して買い物に付き合う父親の気分ってこういうのなんだろうなーとくだらないことを考えながら駅に向かって歩き出している乃花追った。
最寄の駅に着くなり俺はベンチ倒れこんだ。帰宅ラッシュに巻き込まれた俺の体力赤ゲージに突入していた。何がしんどいって両手にある紙袋のせいで手すりをつかむことができなかったことだ。
「これだからヲタクは困るのよね」
なんでこいつがそんな余裕なのかは言うまでもない。こいつはなぜかいすに座っていたからだ。
「ヲタクじゃなくてもあれはきついだろ」
まぁ俺の体力がないことも事実なんだよなー。あしたからランニングするか。
「とりあえず。ちょっと休憩したら帰るから。」
この間と同じジュースを俺に渡すと俺の横に座った。
「 へいへい」
「荷物持ちの報酬なんだからありがたく飲みなさい」
これが報酬って俺は小学生かよ。
「どこのブラック企業だよ。」
「じゃあ返しなさい」
そういうと乃花は俺の手からジュースを取ると残りを自分で飲んでしまった。
「あああああああああああぁ」
「うるさっ。なによ。いきなり」
こいつ・・・俺のファーストキスをあっさり奪いやがった。間接だけど。ビッチのこういうところがいやなんだ。
「俺のファーストキスを返せ。このヲタクビッチめ」
乃花は缶を見ると顔を真っ赤にして予想外のこと口にした。
「わ、わたしも初めてなんだから、いいでしょ。」
その理屈はおかしい。もし逆だったら確実にセクハラで訴えられることになるだろう。
「てか、あんたはむしろ感謝するべきじゃにゃいの」
そっちまで動揺するのはやめてくれ。どういう反応すればいいかわからなくなる。たださえ変に意識して乃花のほうを見れなくなっているのに。
「お、お互い初めてなら無かった事にしよう」
最善の方法を提案したつもりだったのだが無常に却下されたしまった。
「あ、あんた私が始めてじゃやなの?」
と上目遣いで言われてしまえば男は拒否できないのだ。これは二次元でも三次元でも一緒のようだ。
「と、とりあえず休憩は終わりだ。帰るぞ」
俺が立ち上がると乃花も黙って立ち上がり俺に着いてきた。そのまま階段を上り改札をでたところで俺は立ち止まった。
「急にとまんな愚図」
鼻を押さえながら今まで一番弱い愚図をいただいた。
「いや、荷物どうすんだよ。」
「あ、忘れてた」
おい。俺の日曜返せ。
手に持った紙袋を乃花に手渡すと乃花は夏休み最終日の小学生のようになってしまった。買い物も荷物の持ち帰りも計画的に。
「じゃあ。気をつけて帰れよ」
二人して駅の前で立ってても仕方ないと思い俺は先にその場を去ることにした。
「おい。なんでついてくんだよ。」
俺が歩き始めると同時にすぐ後ろから乃花がついてくる。しかしこいつは学習しないな。俺が立ち止まるとまた俺にぶつかって鼻を押さえている。
「家がこっちなだけだから」
「じゃあもってやるよ」
女子が重そうに荷物を持っているときはもって欲しいアピールだって書いてあったからな。相手が乃花なのはちょっとしゃくだが、ヲタクはみんな仲間ってことにしてやろう。
「じゃあこれだけもって」
てっきり持ってる荷物を全部丸投げされるかと思ったが最後に買った一番小さい袋だけ渡すともくもく歩きだした。表情はわからなかったが罵詈雑言がとんでこなかったところを見ると不機嫌ではないらしい」
もう少しで俺の家というところまで来たとき今度は乃花が足を止めた。
「家ここだから」
乃花の家は最近できたタワーマンションのようだ。この家のせいで俺のマンションの日照時間へって洗濯物が乾かないと妹が嘆いていた。
「じゃあこれ」
「持てないからそれあげる」
そういうとさっさといってしまった。てかいらないなら何で買ったんだよ。まあこれ買ってなかったらミナトに会えなかったわけだからまあよしとするか。中身によるけど。中を見ると昼飯のときに話していたキンタマだった。
昼の感じだと確実にもう読んでる口ぶりだったしこれは俺に布教するために買ったのだろう。どうやら高嶺乃花はホンモノのヲタクらしい。ヲタクは自分の好きな作品は相手の趣味関係なく押し付けてくる傾向にある。
「まぁ暇なときよむか」
こうして俺の休日は終わっていた。そしてこの日を境に俺の平和な日常はなくなっていた。
「