表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

地獄太夫

作者: 件

【鴆記上】

黒楽くぐらの舞は


毒臓腑にて踊り御百度


参らせる


碧空なぞ望むべきも亡く


溶暗ようあんと共にあれかしと


夜露と消ゆる血の気が 去れば



中陰と戻る理と



いふ



【地獄太夫】

孕めや

孕め


地獄の恋情

虚に溜まる雨垂れの如く腐りましたるかなしや

泥水


みどりごなぞ在るはずもなく


あぁ何度情けを

賜ろうと

結実を結ぶべく事無く


ただ

ただ

ただ


卑しい窖に垂れた潮水に絶望するばかり


蜘蛛に喰われた羽虫の様に

男にひさぐ醜女の様に


爛れたこの身を嘲笑う


【乙嫁小唄】

♪愛し(かな)愛しの

花顔はなかんばせ

あちらに嫁ぐか

こちらに嫁ぐか

親のえにし

踊りゃんし


遂にと迎えた夜合やごうしとね


床をみゆるは婿花むこばな

迷うた末の破瓜やぶり



【つがいはいらない】

わたくしといふのは


酷く曖昧で不確かなもの

で御座います。


それが判らぬ愚物など


要らぬとゐうのです。


確固たる己を信ずるは


何故なにゆえでせう。


どなたもほんたうに


一つと思ふは何故なにゆえか。


疑ふ貴方が一等好き。


見えるを判じたあなたは

嫌ひ。




【恐らく】

貴方は啼かぬでしょう


でも


それでも良いんです


嘆きはいけない


ひきづるなど


成りません


此方にくるのは


まだ先


ゆっくり来なさい


この言葉は


まだ判らなくて


良いんですよ


そちらにいる限り


だから


ねぇ


またね





【潜苦楽暗(クグリクラクラ】

いたずら醜女の世界は、皆様承知の嘘っぱち。


何が浄土か素知らぬ顔。


何で穢土か解らぬ頭。


花街は終うばかりの女の命が在る。


水銀キラキラ綺麗と思わば、流れてさすらう月と星は、何処に漂流れ着く。


「あつめてたのし、あらうれし」


女陰(ソソ)に詰めこみ、棄てられ肉叢(シシムラ)溶けてはサヨナラのご挨拶。


狂い醜女は苦界が素敵?


オギャア

オギャア

オギャア


緑児(ミドリゴ)(カナ)しき母に寄り添う。


「わっちのまなこはうそぱっち」


貴方の(マナコ)も嘘っぱち。


【小娘悪食】

大蛇の舌よ、咎めて潰せ。


その(アギト)


紅々(コウコウ)と見開く(マナコ)に焼きつけ、肉叢を。


幾ばく為れば裂けて尊ぶ戯れ言を。


融けて溜まれ、吾が慕情。


渇いてとおる


喉越しの彼の方の悪味オアジ


美味為りし。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ