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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第二百八十二話 百鬼夜行 8

7451年4月6日


 ミマイルとの結婚を二週間後に控え、アルは昨年の今月に生まれていた奴隷の赤ん坊の命名の為に神社にやってきた。


 今日は土曜日で休日ではあるが、奴隷頭のズールーも休日出勤で付いて来ている。


 アルが前任のリーグル伯爵の代官を務めていたラフリーグ伯爵から引き継いだ奴隷の数は、老若男女合わせて優に四〇〇〇名を超え、べグリッツの人口の半数に迫る。


 これだけの人数ともなれば、話したことも無ければ近くで顔を合わせたことも無い者も未だ多い。

 従って、ご主人様に忠実な奴隷頭としても、本来の部下である奴隷達と顔を合わせる良いチャンスであり、見逃す訳には行かないのである。


 当然ながら休日出勤手当てなど、制度自体存在しない。


「お? なんだ、混んでるのか?」


 散歩を兼ねて歩いてきたアルが少し意外そうな声を上げた。

 神社の入口の前には聞いていた奴隷の親子の数よりも少し多い数の人だかりがあったのが見えたためだ。


 如何に万に近い人口を抱えるべグリッツといえども、神社は神社であり、執り行われる儀式の数はともかく、種類自体はそう多くない。


 基本的には結婚と命名だが、結婚は別にして命名は大体月の中頃、具体的には毎月一〇日から二〇日の間に纏めて執り行われることが多い。

 領主であるアルも特別な用事でもない限りは毎月一五日頃に行うようにしている。


 今月はその日が本人の結婚の儀と同一日になってしまうので、単に面倒を避けただけだ。


「もうすぐご主人様のご結婚ですからね。従士の方々も奴隷の子供の命名などはさっさと済ませておきたいのでしょう。それにご結婚の宴会を聞きつけた近隣の商人たちもべグリッツに集まってきていると聞きます。行政府のロッカーはそういった商人たちの預け品で一杯になっていると仰られていたではありませんか……」


 確かにべグリッツの行政府でも貴重品預かりのロッカー(国法により街の人口一〇〇〇単位で貴重品預かりのロッカー数の上限は厳格に定められている)は存在し、それらは全てズールーの言う通り、パンパンになっていた。

 先日もズールーに「今月いっぱい、ただ金を預かるだけで九〇〇万も儲かるんだぜ! これだから領主業はやめらんねぇな!」とだらしない顔で自慢をしていたのだ。


 馬車も停まっているようだし、行政府に預けられなかった商人が神社にも来ていることは十分にあり得る話だろう。


 アルはズールーの言葉に頷きながら神社へと近づく。


 彼らに気が付いた奴隷達から次々に挨拶が送られてくる。


 それらに対し一つ一つ鷹揚に頷きを返しながら、アルは鳥居へと近づいていった。


「これはご領主様、本日はご機嫌麗しく……」


 そう言いながら進み出てきたのはアルの従士の一人で、結構な面積の耕作地を任されている男だ。


「うむ。そなたもな。命名か?」

「は。伯爵閣下のご結婚も近づいておりますれば、今のうちに済ませておこうかと。それと、私の奴隷にも結婚を予定しておる者がございまして……」


 話しながら従士は額に汗を浮かべ始めた。

 アルは粗雑な冒険者出身である。

 己の結婚と同時期に奴隷が結婚する事に気を悪くし、謂れのない勘気を被る事に思い至ったのだ。


「ほう、そうか……」


 そういった事など何も考えていなかったアルは特に思惑なく喋るが、僅かに言葉に詰まった。

 それを見て従士は「来るのか!?」と更に畏まってしまう。


「それはめでたいな……ふむ、今まさに儀式の最中であったか。どれ、出て来たら私からも祝福の言葉を掛けてやろう」


 が、アルは神官長の儀式を受けている奴隷達二人の後ろ姿から目を離すことなく続きを口にした。


「は、ははっ。ですがあの者らは奴隷です。ご領主様からのお言葉など、もったいのうございます」


 アルはここでもう一度従士へと顔を向け、「たかが一言二言の言葉をかける程度、何も勿体なくはないだろ」と思いながらも「こいつはこいつで奴隷たちへの教育に悪い、とか考えてるのかな? もしくは俺から直接言葉を貰ったとか後で周囲に自慢するような奴らなのかも知れないし……だとしたらここは何もしない方がいいのか?」と髪が薄くなり始めた従士の頭頂部を見ながら軽く悩んでしまった。


「いや、結婚はめでたい事だろうに。そなたもあの二人がくっついて子供を生んでくれたら財産も増えるし、めでたい尽くしではないか」


 その言葉に従士は「ははぁっ! 有難きお言葉、誠にあの二人には良い門出の日となりましょう!」と平伏した。


 アルはそんな従士には興味を無くし、「今日も赤ん坊を全員抱かなきゃならんのよな……しかし、この頃の赤ん坊は皆可愛いなぁ。だけどウチのアルソンが世界でいっちゃん可愛いんだもんね!」と、もう既に全く別のことを考えていた。




・・・・・・・・・




7451年4月7日


「うーむむむ……」


 ロンベルト王国国王、ロンベルト公爵トーマス三世は執務室の机を前に苦虫を噛み潰したような顔で唸り声を上げていた。

 ここ数日というもの、仕事には碌に手がついていない。


 それは執務を放棄したとも取れる程にお粗末な仕事量であった。


「おい、まだ報告は入らんのか?」


 執務室の隅に座る警護隊長に、今日何度目かの同じ質問をする。


「陛下。イツーリンも駆け回っておりますれば間もなく続報も届きましょう。そもそも私も今朝から陛下とずっとご一緒しております」


 だからお前が知らない情報を俺が知っている道理はなかろう。

 隊長はそう言いたげな声で返事をする。


「そんな事はわかっておる! そなたも軍の重鎮ならそれなりの連絡方法は持っておろう!?」


 辛抱強く机の前で国王のサインを待っていた事務官は突然の怒鳴り声に身を固くする。


「それなりの連絡方法ですって? 一体どのような?」


 警護隊長は厳しい目つきで国王に尋ねた。


「う……ま、魔法とか?」


 まさか返事があるとは思わなかった国王は少し慌てたように取り繕う。


「はっ! もしもそんな魔術をご存知なのであれば是非ご教授ください。非っ常に便利そうですからね」


 自らの警護隊長に鼻で笑われて国王はきまりの悪そうな顔になる。


「おい、そなた。あの者をどう思う? あれが己の君主に対する態度だと思えるか?」


 今度は一時間も立ち続けていた事務官に言った。

 事務官は目を白黒させるばかりで言葉に詰まり、何も言うことが出来ない。


「あらら、今度は弱い者いじめですか。下らないことに時間を割いてないで、手の方をお動かし下さい。陛下が執務をなさらないとその者が上司に叱られましょう」

「く、くそ……そなた、娘を思う親の気持ち……」

「いやいや、何を仰いますやら。そちらの心配など全くしておられないでしょうに……」

「おい、貴様。言うに事欠いたにしてもそれは言い過ぎだろう?」

「あー、そうですね。これは失言をば……先の発言につきましては取り消しますのでどうかご寛恕いただき、お忘れ下さいませ」

「ふん、まあいい。忘れてやる。だが、俺は、余は、余も娘の身に何が起きたのか心配くらいはする。あれも余の血を分けた可愛い娘の一人であることに違いはない」


 今日の護衛当番である第一騎士団長、タクラード・ゲンダイル子爵は国王の言葉に肩を竦めると「またお手が止まっておられますよ」とだけ言って、心の中では「当初の報告から四晩が経つにも拘わらず、ご令嬢の安否について何ら続報が入らないというのはな……ふ。俺も人のことは言えぬな。あのご令嬢の政治的な価値にしか目が行かん……」と溜め息を吐いた。


 確かに遠隔地に対する通信手段など碌に存在しないオースであるが、国王の血に連なる者の安否について、何一つ具体的な続報が入らないというのは異常事態だ。

 襲撃によって多少の被害を受けたとしても、どこかの村や街などに腰を落ち着けた後に居場所や重要人物の安否情報を送るのは当然の行為である。


 まして彼女を護衛していたのは王国軍の一部隊だ。


 下っ端の兵隊はともかくとしてそんな事も出来ない、思いつかない程度の無能が騎士に叙される道理はない。


――まさか、指揮を執っていた騎士が全滅した? いやいや、たとえそうだとしても古参兵の一人や二人は残っているはず。


 ゲンダイル子爵は第三騎士団を率いる女傑を思いやって「俺が考えることくらい彼女もとっくに考えに入れて行動しているはずだ」と小さく首を振った。


 襲撃され、被害を受けた事でまずは安全の確保を行う。

 本来ならその前、襲撃直後にこれこれこういう事があったと伝令を送らねばならない。


 逃げるのに必死で送れなかった、という事もあるかも知れないが、それを勘定に入れても遅すぎる。

 何せ、最初の伝令が持ってきた情報は「馬車隊が何者かの襲撃を受け、どこかに避難した模様」という漠然とした情報だけで、それも馬車隊とは関係のない、現地近くに駐屯していた第三騎士団員によって齎されたものだ。


 そして、それすら四日も前に到着している。

 当時は翌日か遅くても翌々日には馬車隊から発信された情報が続報として届く、しかも襲撃現場と思われる場所には破壊された馬車すら残されていなかったのだから続報はミマイルの生存とどこに腰を落ち着けたか、というものになると予想されていた。


 ゲンダイル子爵も国王も確かに最初に齎された情報には驚いたが、双方とも事情を聞いて「それなら少なくともミマイルは無事だろう」と考えていた。

 何しろ襲撃地点の近辺には以前より脅威的な魔物は確認されていない上、野盗団や山賊が確認されていたのもはるか昔で、とっくに退治されて久しいのだ。

 よしんば、オークやホブゴブリンと言った、比較的戦闘力も高く組織的な動きをする魔物の大群に奇襲され、大きな被害を被ってしまった、という極小の可能性であっても、伝令一人送れないほどの大被害は考え難い。


 数十もの騎士団員に大被害を与えるにはオークだろうがホブゴブリンだろうがそれなりの数を必要とする。

 それが全く発見もされずにいた(すなわち、今回の馬車隊が初めての獲物で、今まで誰も襲っていなかったという事になる)という事などまず有り得ない。


 また、馬車隊以外の現地に駐屯する第三騎士団も一時的に情報が錯綜したり混乱したりなどはあるだろう。

 しかし、そんなのは本当に一時的な物である筈だ。


――何にしてもイツーリンは一報を受けてすぐに一個中隊を調査に送り出していると言うし、今は何も出来ることはないな……。


 子爵はまだこちらを睨んでいる国王には視線を合わせず、姿勢を改めると薄目になった。




・・・・・・・・・




7451年4月8日


 道なき道を進み、バース達はガソレイン子爵領の主要部を全て迂回し、更に南にあるオービス伯爵領の首都、カームッドに到着した。


 すぐに第三騎士団の屯所に向かうと詳細を報告する。

 駐屯していた小隊長は「確かにもうとっくにカームッドに入っていなければおかしい。遅れているにしても遅すぎるし、一体何事が起きたのかと心配していた」と顔色を変えた。


 そして、バースや道案内の騎士の言う通り、グリード侯爵への連絡も必要だと認めてくれ、バース達が乗ってきた馬を交換してくれた。

 また、ここオービス伯爵領からダート地方にあるドレスラー伯爵領との間には北からバルニエ子爵領、グレミヨン伯爵領、レイレイン子爵領と三つの貴族領が並んでおり、ここまで道案内をして貰った騎士も土地勘が無いだろうと、道案内についてもここで交換になるとの事だった。

 尤もこの件については、これから先は街道沿いに進んでも問題は起きない筈なので、どうせなら折角顔見知りになった騎士と一緒に行きたいと申し出て認められている。


「ドレスラー伯爵領まではどのくらいかかりますか?」

「軍の伝令並みに馬を操れるなら半日で行ける距離だと聞いているが、それは途中で何度も馬を交換出来たらの話だ。交換できなきゃ急いでも二日はかかるだろう」


 バースは馬の交換について手配が受けられる事を期待したが、この小隊長は彼を送り出してくれた小隊長ほど優しくはないようだった。




・・・・・・・・・




7451年4月9日


「ううううっ……」


 若者の頭部が膨らみ、目や鼻、口などからどろりとした血液が染み出すように漏れた。


「ぐあっ!」


 腕や首など表皮に近い場所の血管が太く膨張する。


「おお!」


 同時に、体はおこりにでもかかったかのように震え始めている。


「……ばっう!!」


 胸部が大きく膨らみ、着ていた粗末なシャツは内側から弾けるように破れた。


「か……が……!」


 目が眼窩から飛び出すように膨らんだ。


「頑張って! それに耐えきればきっと……!」


 苦しむ若者に近づき、ミマイルが声援を送る。

 だが結局は目玉を飛び出させたばかりか、胴体の内側から肋骨が飛び出すようにして動かなくなった。


「駄目ね……何が間違ってるのかしら」


 その凄惨な光景を見てもミマイルは顔色一つ変えないばかりか、落胆したように呟いた。

 当初は鬱血したことで赤黒かった白目は今や完全に黒くなっており、金色に輝く瞳と相まって彼女の美貌に凄絶とも言うべき様相を加えている。


 彼女はアンデッドと化した際に多くの特殊技能を獲得しており、今はそのうちの一つを試していたのだが、失敗を重ねていた。

 勿論、失敗の可能性が高い事はアンデッド化した際に認識している。


 だが、量産の利くドラウグルはともかくとして、それらを束ねられるようなある程度強力なアンデッドを作らねばならないのだ。


 今まで挑戦しなかったのは大した数をアンデッドにしなかったからだ。

 だが、今回は四〇〇〇に迫る材料が手に入っている。


 自分が使える能力についてより深く識る事も大事だが、ドラウグルが合体した際の核となるような強力なアンデッドの作成も必要であったのだ。


「……なんで成功しないのよ……」


 ミマイルは汚れた床を掃除するように一人のドラウグルに命じると椅子に腰を掛けた。


「これで五〇……肉人形デクを大分無駄にしちゃったわ」


 肘掛けに突いた右手に頬を乗せて呟く。


 方法は間違っていないはずだ。

 また、成功確率も低いことは理解しているが、ここまで低い訳ではない事も同時に判っていた。


 どこかで間違えているとは思うのだが、心当たりはない。


「……んん、まさか……?」


 何かに気が付いたようにミマイルは立ち上がると、遺体を片付けていたドラウグルに近づいた。

 彼も先に失敗した若者と同様に肉付きの良い体格をした虎人族タイガーマンの男性である。


 そして、遺体を担ぎ上げようとするドラウグルの背後に立つと両手を振り上げる。


 特殊技能を意識しながら勢いよく両手を振り下ろし、鉤爪のように折り曲げた指を両肩に突き刺した。


(ぐ……)


 ドラウグルは遺体を取り落とすと小さな呻き声を上げた。

 また、動きも止めてしまったばかりか、顔には先程の若者同様に苦痛の表情が浮かんでいる。


「頑張って!」


 ミマイルが声援を送るが先程よりも余程真剣な声音だった。


 そして声援を送り続けること数十分。


(はしゅー)


 ドラウグルは大きく息を吐き出すと瞳の色を蛍光グリーンに輝かせて立ち上がる。

 それに加えて、体の各所から染み出すような小さく黄色い光を漏らしている。


「やった? 成功したの? ステータスオープン……ドラウグル・ワイト……やったわ! 大★成★功! キャハッ! 私がアンデッドにした相手じゃないと使えないってことね」


 彼女が使っていた特殊技能はその名を【ラディカル・エヴォリューション】という。 


 技能の対象となるのは自ら創造・作成したアンデッドに限られ、成功した場合、対象はアンデッドとしてのランクが一つ上がる。

 一日の使用回数は肉体レベルと同数であり、成功率は自分の肉体レベルと同一のパーセンテージである。

 失敗すると対象の肉体は塵のようになって失われるが、その対象が生きている場合には必ず失敗し遺体はそのまま残るのだ。

 

 この特殊技能に限らず獲得した能力の使用法について、ミマイルはおおよその所は理解していたものの、どれもこれも不完全な知識であることもまた理解していた。


 が、たった今、【ラディカル・エヴォリューション】についてのみは真の理解に至ることが出来た。

 これらは一見して無駄のように思えるが、水晶球の力で無理やりアンデッドと化したばかりの使用者に対し、少しでもアンデッドに対する理解を深めて貰う必要があってのことである。


「よ~し、この調子で色々試そ……流石にそろそろ行かないと遅れちゃうか……ま、試すのは着いてからでもいいわよね」


 ミマイルは明るい声で呟くと、ワイトに進化したドラウグルに声を掛けた。

 ドラウグル・ワイトを巨人化の核とした場合の性能くらいは確かめた後でもバチは当たるまいと考えたからだ。




・・・・・・・・・・



7451年4月10日


 うーん、何かあったのかな?


 聞いていた予定通りならミマイルは昨日あたりにはべグリッツに到着していた筈だ。

 まぁ、長旅だし一日や二日程度なら予定がずれ込むことはままあるのであまり心配はしていないが、国王の庶子だし、嫁入りだし、予定通りに来ることが出来ないようならば普通は先触れという名の言い訳要員を寄越す案件だ。


 どっかで馬車が故障して立ち往生でもしている可能性が高いな。

 だとしてもそれを説明するための先触れくらい来ても良さそうなもんだが。


 せめてウィードまで辿り着いてくれていたら、ゼノムが馬車鉄道で連絡だけでもくれる筈なんだが……。 

 こちらに向かってくるコースは大体のところしか分からんから何とも言えんがね。

 王都からダート地方に来るコースは何通りかあるが、馬車で来るなら普通はコリドーク街道という大きな道沿いに来る。

 ダート平原に向かってくる軍隊も大型の馬車や歩兵が沢山いる場合には一番使われている道だし、治安も良い。


 まぁ、俺としては第二夫人になるんだから、さっさと来て第一夫人であるミヅチに挨拶し、ご機嫌でもとって欲しいところだ。

 家庭内に波風を立てて欲しくないし。


 しゃあねぇ。

 日程から言ってかなり近くまで来ているのは確実なんだから、誰か様子でも見に行かせるか。


 誰が良いかな……っつったってズールーしかいないだろう。

 あ、駄目だ。

 法的には今月からダート地方は俺の物になっているが、まだ領有の宣言はしに行っていない。

 ズールーは奴隷だし、俺が宣言しない限りは領地をまたいでの移動は出来なくはないが色々面倒くさい。


 クローかマリーでも行かせるか?

 何人か付けてやりゃ……いっか、まだ一日ずれただけなんだし。


 どーんと構えていればいいさ。


 

 行政府にある貴重品預かりのロッカーは、神社で行われている同様のサービスを「補助する」ために存在する、というのが本来のあり方です。

 神社よりも安全性が低い分ずっと安価なので商人などの人気は高いのですが、ロンベルト王国を含むオース一般では神社への敬意を表すために行政府のロッカー数を制限しています。

 これは、敬意と言うよりは神社の収入源を確保させるという目的の方が大きいです。


 神社は羊皮紙業者などの最大の顧客(ロンベルト王国では神社に「戸籍」とも言える人別帖の作成を委託しています)であり、同時に人口実態の最大の情報源でもあるばかりか、高額貨幣の鋳造に必要な貴金属や魔石の購入をしてくれたり、場合により貨幣の鋳造(多くの上級貴族は領内の神社に低額貨幣の鋳造を委託しています。

 勿論自前の鋳造所を持っている上級貴族や国もあります。割合は四分六で自前の方が多いくらいでしょうか)なども行っているため、為政者は彼らとの関係が悪化しないように良好な関係を保つ必要があります。


 ステータスが確認できない銅貨や賤貨は為政者が鋳造し、発行する事が可能ですが、基本的に鋳造量は高額貨幣を鋳造可能な神社からその地の為政者(国王など基本的には国のトップ)へ「理想的な低額貨幣の鋳造量」が毎年示されるのです。


 この指示を守れば領内のインフレやデフレ率は限りなくゼロに近づき、経済は安定化します(大きな成長もなくなってしまうので、それを安定と言って良いかの是非は置きます)。

 守らなくてもペナルティなどはありませんが、記録が残されている大抵の場合、必要以上に多量の貨幣鋳造が行われ、結果として貨幣価値が下がり(だからといってモノの消費の大半を占める庶民の収入が上がる訳ではないので)インフレに苦しみ、次いでデフレに苦しむ事になります。

 その結果、国力が落ち、周辺諸国の脅威への対抗が難しくなってしまうのです。


 加えて神社の荷物を襲うなど神社へ危害をなす者への天罰の雷もあります。

 そのような事情もあって、オース一般では「神社は特別な組織である」と認識されています。

 現実にある多くの宗教のように極端に神聖視されていないのは、説法をしたりお布施を要求したり、信者を増やそうとか、領地や徴税権などの世俗の権利を要求したりなどの一切を行っていないからです。


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ラディカル・エヴォリューションは日本語に直すと激進化といったところでしょうかw

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― 新着の感想 ―
[良い点] ギャル系アミバが爆誕してるw
[良い点] ラディカル☆エボリューション! だと魔法少女の必殺技にしか聞こえないw
[良い点] 面白い。 [気になる点] 主人公が領内にしか意識を向けてない点。隣国などの動きは一番気にする必要があると思う。 以前尾行が失敗したのに諜報員を育てていない点。 慢心しているように見える。
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