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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第二百六十話 視察 1

7450年12月25日


 なんだかんだ言って、結局昨日は報告書を作り直した。


 各騎士団長たちを困らすというのもあれだし、所詮は将来的に別れて独立する、いうなれば友好的他国になるのだからして……いかな友好国とはいえども軍事官僚のレベルはあまり高くない方がいいからだ。

 第一、ロンベルト王国にしても現状で諸外国に対して軍事的な後れをとっている訳でなし、いやむしろ先行している程だと言える。

 で、あれば、今俺がちょっとだけ苦労するのみで来年以降の手間が大幅に軽減されることを考えるとやらざるを得ない。


 なお、べグリッツで作成していた内容の濃い(俺に言わせれば当たり前の)報告書については各騎士団長へは進呈せずに全て回収している。


 そのため、俺は勿論、バストラルやレイノルズも睡眠不足気味である。


 だが、王都に滞在可能な時間は限られており、のんびりと睡眠を貪るような贅沢は出来なかった。


 今日は朝から商会で王家を除く、二億Z以上の大口顧客の相手が数件入っており、午前中は納品を兼ねての挨拶や商談で費やされている。

 そして昼には作成したばかりの報告書を騎士団に届けて内容を確認してもらった後で王宮に提出し、飯も食わずに商会にとんぼ返り。


 そして今、午後一時から四時までの三時間は最大の注文をくれた相手に回している。

 グラナン皇国に本拠を置く、リベラという超大きな商会だ。

 リベラ商会は、いわゆる総合商社と高級デパートを兼ねているような性格であり、彼の国では最大規模を誇っていると言われているだけに気が抜けない。


「……はっはっは。これは手厳しいですなぁ」


 俺の前で大口を開けて笑う商会長は中年の矮人族ノームで、一見無精髭にも見える髭がなんとなく魅力的な男だ。

 若い頃から隊商を率いてあちこちを周ってきたというだけあって、その肌は赤銅色に灼けている。


 なぜだかわからないが前世の取引先にいた、やり手だと有名なあるデパートの店長を思い出す。


 当時はデパート冬の時代と言われて久しかったのだが、あのデパートが潰れないのは偏に彼の店が常に前年よりも売上、利益ともに最高額を更新し続けているからだと業界ではもっぱらの噂だった。

 その店長さんは、俺が駆け出しの頃からかなりお世話になった、ある意味で恩人でもある。


 商会長の笑い方や表情がその人に似ている感じがして懐かしくなったのかもしれない。


「いえいえ、これだけの品質にこの量をご用意可能なのは我が国広しと言えども、我がグリード商会だけだと自負しております。それもこれも、我が商会が優秀な職人を多数抱えているからでございまして……加えて、原材料も高品質なものの中から厳選に厳選を重ねて吟味しておりますれば、この価格は致し方ないところだと思いますよ」


 だがそれはそれ。これはこれ。

 今言ったように、これだけの品質のガラス製品をある程度まとまった量で生産可能なのは、今の所世界でも俺一人だけだろうし。

 いずれは腕の良い職人と硅砂など良質な原材料とが組み合わさることで、今の俺の品質に近い製品が出て来るとは思うけれどね。

 板ガラスに代表される、表面の滑らかさを除けばの話だけど。


 だとしても、良質な原材料があるのであれば更に高品質なガラス製品(当然魔法に頼らないものだ)の製造が可能になると考えているので、我がグリード商会は永遠にガラス業界をリードする存在であり続けるだろう……永遠は言い過ぎか。


 因みに硅砂以外の原材料である炭酸カルシウムは石灰石から、無水炭酸ナトリウムは石灰石を食塩とアンモニアによるソルベー法(大規模な設備はいらないし、石炭が手に入ったことでコークスやアンモニア、コールタールなどの生産が可能になった)で生成可能な事は実験済みなので、石英石(又は勿体ないけど水晶)を微細な粉末に出来る機械さえあれば透明なガラスは今とは比較にならない量で大量生産が可能になる事は判明している。


「なるほどいちいち尤もですな。しかしながら、今回ご発注したお品は相当な量になります。全て今年中に納品が可能なのですかな?」


 商会長はこちらを値踏みするような目つきで言ってきた。

 ふん、抜け目がないと言えばそうなんだろうが……こちとらまっとうな商売を心掛けている善良な商人なんだよ!


 前言撤回。

 あの店長さんはこんな阿呆ではない。


 ウチの商会が納入出来もしない量の受注を取ったのかと思われているようで、ちょっとだけムカつく。


 確かに彼の商会は大量の発注をしてきている。

 それは、俺がレイノルズたちに「今年年末の納期さえ納得してくれるなら幾らでも受注しろ」と言ったからだ。

 そして、値引きについては一切応じる必要はないとも言っている。


「えー……確か、板ガラスが規格品で一五〇枚に、規格外品が六二枚、タンブラーが二七組、ワイングラスが四〇組、シャンパングラスが一五組でしたかと存じますが……」


 王都に到着してすぐに受注リストを眺めておいて良かった。

 この商会はこれらの商品を三回に分けて発注してきているのだ。


「総計で十七億六千九百万Zでございます」


 レイノルズの言葉に頷く。

 そうそう、今回受注した中では二位の国王陛下おっさんをすらダブルスコア以上で突き放す、ダントツの最高金額だ。

 そして、王国は何一つ労力を掛ける事なく、ガラス関税として一二億六千万近い歳入を得る事になる――これについてはなんだか釈然としないが、そもそもは俺自身が「輸出関税を掛けたらどうか」と言った事でもあるので無理矢理にでも納得するしかないのがどうにも悔しいところだ。


 店の隅で俺たちの話を聞いていたのか、サーラとレイラが商談スペースの脇に積み上げていた商品に被せていた布を取り払う。


 特注品を除く全てのガラス製品の梱包箱は全て専用の規格を定めて、サイズを合わせて作らせている。

 安い物でもン百万Zからの品なんだし、それくらいはやるさ。


 それをご存じない彼らにしてみれば、そこには展示スペースとの仕切りのために棚か何かでも置いてあり、中を隠すために布でも被せていたのだろうと思っていたようだ。

 勿論、全てすぐに中身を確認出来るようにと完全な梱包はしていない。


「んぉ……これは……」


 商品の山を見た商会長の声は掠れ、目と口を大きく開いている。


「どうぞご確認ください。ご注文を頂戴した数量は勿論、品質にも一切の抜かりはございません」


 俺は慇懃に言った。

 どうやら、納期遅延を理由に値切りたかったようだが、出来ない物を出来ると言ったりはしない。

 仮にレイノルズやバストラルが無茶な注文を取ったとしても、どんな無理をしてでも絶対に間に合わせる。


 なんにせよ、大口だからと言って後進のためにもここで値段を下げる訳には行かない。

 ライバル製品が有る訳でもなく、品質や納期に落ち度があった訳でもないのだから。


 それに……俺の鼻血は安くねぇんだよ。


「お、おい……」


 商会長はお供の番頭さんに声を掛けたが、上ずっている。

 まさか……値切れると思って金を用意して来なかったんじゃあるまいな?

 何人もの護衛と荷馬車、乗用馬車で来たからそこまで失礼な事は考えていなかったのだが……。


「どうぞご遠慮無く。品質のご確認がしやすいようにそのまま開けられるよう、全て蓋は縛ってはおりません」


 表情と声の調子を変化させないよう、多大な努力が必要だった。


「あ、ああ。そうさせて頂きます……何せ高価なものですし……」


 確かにその通りだ。

 彼にしても本国で納品を待っている顧客はそれなりに裕福な有力者なのだろうし、最初から不良品を掴まされたらたまったものではあるまい。


 大口顧客だし、これだけの量でもあるから検品に時間が掛かるだろうと、元々三時間も空けてある。

 こちらとしても存分に確認して欲しいというのは本音だし。


 リベラ会長に命じられた番頭は店の外で待機していた護衛も中に呼んで一つ一つ商品の検品を始めた。

 ガラス製品はそもそもがとんでもない価格だ。従って、たとえ僅かな傷などがあったことが原因で多少価値が落ちようともかなり高い値が付くのは想像に難くないので、その手付きは非常に丁寧だ。

 護衛も商会が専属で雇っている者のようで、繊細で高価な商品を扱うのには慣れている感じがする。


「見事なものですな……」


 番頭さんは虫眼鏡(!)で品物を見ながら感嘆のセリフを吐いた。

 だろう?

 何しろ元の金属の造形からして、文字通り俺が心血を注いで作っているのだ。


「この箱も素晴らしいものですよ!?」


 梱包箱から商品を取り出している護衛の人も感心している。

 うん。

 建材などに使われるであろう板ガラスの箱は単なる木箱(それでも造りが良いので五千Zもする)だが、特にグラスのセットを収める箱はご購入頂いて以降も使えるようにと、漆塗りにウチの紋章(例のゴムノキの花と実を象ったもの)を箔押ししてあるのだから。

 内側も柔らかく上品な革張りで、まさに高級なガラス器を収めるのに相応しい逸品だと思うんだよね。


 この箱はゾンディールやウィードに住む職人たちに作って貰った一級品だ。

 それ一箱で一〇万Zくらいかかってるんだぜ。


 ……え?

 過剰な無駄包装極まれりだって?

 その分値段を下げろ?

 そんなケチくさい事を言う奴は、今まで通り貧乏くさい木の器とか、大して白くもない汚ったねぇ色の焼き物で酒を飲んで満足してりゃあいい。

 ウチの客にはふさわしくない。


 そもそも現時点では俺の生産力にも限界があるんだし、最初から貧乏人を相手にした価格付けなんかしていない。

 何しろ二脚一組で六〇〇万以上もするグラスなんだから、梱包箱に凝るくらいはするさ。


 それに、恥ずかしいからとても口には出せないけど、我が領の職人たちにも少しは潤って貰いたいし、その金で後進を育てて欲しいしね。


 護衛の一人が箱から商品を取り出して番頭に手渡し、もう一人の護衛が検品を終えた商品を箱に戻してレイノルズから受け取った専用の紐で箱を綴じ直している。


 タンブラーを一〇組程検品し終えたあたりで、商品に全く瑕疵がないためか、リベラ会長の顔に焦りが浮かんできた。


 こりゃあ、やっぱり全額は用意してきていないな。


 いかにも舐めた真似をしてくれた事に腹が立つ。

 だが、確たる証拠がある訳でなし、今の所妄想の域を出ていない。

 だいたい、あの表情はうんこを我慢しているだけかも知れないのだ。


 それに、大口顧客に恥を掻かせるのも、ほれ、なんだ。

 今後もあることだし。


 ここに全額を持って来てはいないんだろうが、半分以上は持って来ているとは思うし、これだけの取引なのだからそもそも全ての代金くらいは国内に持ち込んでいる筈だろう。


「さて、リベラ様。お代の方なのですが、一つお願いがございます」


 見事なガラス器から目を離せずにいる会長に向かって静かに話し始める。


「な、何でしょうか?」


 突然の俺の声に視線をガラス器から俺へと戻して会長は答えた。


「いえ、その、大変に申し訳ないお願いなのですが、お支払いについて、白金貨を一枚分、金貨でお願いすることは適いますか? ご承知の通り、予約を受けておりましたお客様が殺到しておりまして、恥ずかしいことに釣り銭に用意しておりました金貨が少々心もとなくなりまして……いえいえ、リベラ商会様が全額白金貨にてお支払い頂いたとしても大丈夫ですが、本日は夜までお客様がご来店くださる予定ですので何分……」


 少しはにかんだような笑みを湛えたまま言った。

 ほれ、うんこにしろ持ち金が足りないにしろ、助け舟だ。

 飛びつけ。


「ええ、ええ。お安い御用です。ですが、今ここには持ち合わせがございませんものですから、私と護衛だけ中座させて頂いて行政府まで行っても宜しいでしょうか?」


 会長は明らかにホッとした声音で言う。

 勿論俺が言った言葉は大嘘だし、それは会長も承知しているだろう。

 何せ、本当に釣り銭の金貨が足りないのならば、俺の方こそが取りに行くのが本筋だからだ。


「勿論ですよ、会長。検品にはまだ暫く掛かるでしょうし」


 そう言うと会長は一つ頭を下げ、そそくさと店から出ていった。


 俺としてもあれだけ太い顧客を抱えている商会とは末永くお付き合いしたいのだ。




・・・・・・・・・




7450年12月27日


 昨日は残りの納品や顧客の応対、上納金の計算書を民部省と領土省に提出したりなどで一昨日以上にてんやわんやだった。

 今日も朝から行政府で商会の納税関係の事務処理を済ませ、なんとか約束の時間には登城することができた。


 いつものように、二の丸の応接で国王陛下と面談である。


 まずは軍事関係の報告をしたが、特にツッコまれる事はなかった。

 流石に一国の王様が細かな事まで気にしやしないのだろう。

 ちょっとだけビクついていたのだが、ホッと胸を撫で下ろす。


 その後は上納金関係やガラス製品の売上に話題は移る。


「ほう、そんなに売れたのか!?」


 国王はガラス製品の売れ行きを聞いて大喜びだ。

 何せ、今回の売上は全部で九〇億Zに近い金額であり、うち国外向けの物は三分の一くらいを占めている。

 労せずに二〇億近い輸出関税が手に入るのだからそりゃあ嬉しいだろう。


「お陰様で、大変な売れ行きに嬉しい悲鳴です」


 実際、王宮に出入りする御用商人や各国の大使なんかには結構宣伝してくれていたみたいだし。

 あのリベラ商会だってグラナン皇国の大使、カーマイン伯爵から「とても高品質なガラス製品を扱う商会がある」と紹介を受けての来訪だったのだ。


 グラナン皇国との間にはキナ臭い雰囲気が充満しつつあるらしいが、まだ直接ぶつかった訳ではないし、国王には稼げるうちに稼いでおこうとの腹積もりもあったのだと思う。


「グリードよ。そなたもかなり潤ったのではないか?」


 嫌らしい笑みを浮かべて尋ねられた。


「ええ、まぁ、それなりには。ですが、当面の間、ガラスで得た利益は全て王都への鉄道路線に投資いたしますので……」


 当然、全てではない。

 と言うか、俺の試算では王都までの工事費用は人件費で六〇億Z程度を見込んでいる(線路の材料である鋳鉄や枕木の購入、処理費用はまた別の話だ)から現時点だけを考えればそれなりに儲かっている。

 勿論、この試算には適価で工事人夫を雇える事が条件だが、そう大きくは外れていないだろう。


 なお、鋳鉄の購入については王都や道中にある専門の商会に継続的な大量購入について打診をしているところだ。


 現時点ではそこそこに良い返事を貰えているが、俺の見立てでは購入を始めてから一年から一年半程度で一割以上――場合によってはもっと――鉄の相場が上がると見込んでいる。


 中西部ダートから中部ダートにまたがる山脈からはそれなりに鉄が採れることは判っているが、それはダート平原の線路を賄うだけで費やされてしまうだろう。


 何しろダート平原は南にも広がっているし、いずれはそこも含めてもっと南まで征服するつもりだから、北の方は北の方で何とかしなければならないのだ。

 因みに西の方は王都と開通した後の工事になるだろうし、ヨーライズ子爵と購入の話をつけているので現時点ではあんまり心配していない。


「ふむ。して、何年くらいで工事が終わる? まだ王都ここからの工事は始まっていないようだが?」

「は。工事人足の募集は王都でも先月頃から開始させておりまして、年明けくらいには工事が開始できるものと見込まれております。工事期間は人集めと線路の材料である鋳鉄の調達が順調であれば五年もかからないかと」


 丁寧に答えると「五年だと!?」と警護のリチャード王子が割り込んできた。


 流石王子様。なかなかいい鎧着てるね。

 それ、俺が献上した奴じゃん?


「人夫の教育が進めば進むほど工事の作業効率も上がっておりますものですから……」


 実際、今では工事チームの数は一〇を超え、一日当たりの工事距離は二㎞に迫っているのだ。

 土曜を休日とした一週間で九㎞、というところかな?

 尤も、邪魔な木や岩さえ何とか出来ればほぼ平坦に近い土地のダート平原だから、というのが大きい、とは聞いているけれど。


「それにしても……」

「人も順調に集まっておりまして、現在は十分な技術力を持つ工事グループが三つ、実地教育を兼ねて成長中の工事グループが八つ育っています。お陰でもう西ダートの街や村は殆ど鉄道での行き来が可能になりつつあります」


 中でもゾンディール-べグリッツ-ウィードは複線化の工事まで始まろうとしているところなのだ。


 俺としては清水の舞台から飛び降りるような覚悟で言ったセリフだが、国王も王子もそうかと頷いただけで終わった。

 この馬車鉄道は物流の革命にもなるのだが、積載量や速度についての情報は全くと言って良い程渡していないからか、未だにガラス製品を安全に運ぶためのものだと軽く見られているだけのようだ。


 領内で屠竜ドラゴン・スレイヤーを使って間引きをする度に大量の兵隊を輸送しているのだが、実際に乗ったこともある第二騎士団や第四騎士団の連中はそれを報告していないのだろうか?

 また、タバコ農家をやっているザイドリッツなどの乱波からの報告は届いていないのであろうか?


 そもそも報告をしていない、というセンもある。

 単にでかくて少し早い馬車程度と見られているのならそういう事もあるだろうが……全員が全員その程度の気持ちで済むのかねぇ?


 俺としては報告の正確さと速さについて確認したいという気持ちが勝ったからこその発言だったのだが、これじゃあ肩透かしもいいところだな。


 その後も淡々と議題は消化されていく。


 まず、俺の陞爵については今日これから神社で執り行われる。

 国内貴族たちへの正式なお披露目と叙任式はミマイルとの結婚後、来年の秋頃になる予定だ。


 また、年明けの一月~二月中にはバスボーン公爵の孫のカーライル君とザーム伯爵の姪のベリンダちゃん、国王の孫のダンカン君がそれぞれべグリッツにやってくる予定になっている。


 最後に四月一五日を目標にミマイルがベグリッツへと輿入れに来る。


 これらについては人質の三人の件を除いて、この年明けを以て公示される。


 なお、西ダート以東に並ぶ三領土の割譲についても同時に公告され、有効になるのは来年四月からになる。


「さて……」


 お?


「はい」


 いよいよ侯爵への命名に行くのかな、と思ってソファから立ち上がろうとする。


「あ、いや神社へ行く前にもう一つ話がある」

「は、何でございましょうか?」


 話さなきゃいけない事、決めなければいけない事は話し終えたと思うんだが、何だろう?

 

「そなた、べグリッツへの出発はいつだ? 明日か?」

「はい、そのつもりでおりましたが……」


 何せ、正月にはミースとジェルの結婚式に出なければならないのだ。

 頑張れば二日で戻れないことはないが、流石に全速で飛ばし続けるのは辛い。

 明日には出発し、少しゆっくり目で帰りたいものだと考えていた。


「西ダート内で鉄道路線が開通していると聞いて、予てから考えていたのだが、リチャードと警護の兵を同行させてくれ。どんなものか確かめておきたいからな」


 あ……うん。

 報告なんか聞くより実際に見て、乗った方がより良く理解できるのは道理だ。

 っつーか、この様子だとある程度は報告済みみたいだね。

 甘く見てたのは俺の方だった。


 だが、遅かれ早かれ鉄道についての実際なんかどっちみちバレる。

 それに、王都と開通するまで隠し続けるのも不可能な話だからこれはしょうがない。


 それより、そよ風の蹄鉄ブリーズ・ホースシューについて悟られる方が問題だ。


「は。出発は明朝七時頃を予定しております。王城正門までお迎えに上がれば宜しいでしょうか?」


 ……ミース、ジェル、ごめん。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 [気になる点] 重要な人物のご一行が何度も通過するなか、デーバスの連中が我慢できるでしょうかね? [一言] どうせ間に合わないならば、年明けの出立にして師匠に年…
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