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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第八十四話 接触者 5

7449年10月14日


 日付が変わるには充分な時間が経った頃。

 バケイラは先程のダーガン同様に、俺のエアバッシュで壁に後頭部を打ち付けられて気を失い、床に倒れている。


「……よし。こいつも地下室に放り込んどけ。週末にでも全部吐かせろ」


 バケイラを見下ろしつつ立ち上がりながらズールーに命じた。


 こいつにも人物魅了(チャーム・パーソン)はもとより、仄めかし(サゼッション)まで使って情報収集を試みた。

 しかし、誰かの命令でザイドリッツに接触してきた事とその目的など大体の内容までは掴めたのだが、他の間者についての情報は一切漏らさないばかりか国王との関係について話が及ぶと魔術を打ち破ったのだ。


 情報収集において人物魅了(チャーム・パーソン)も仄めかし(サゼッション)もかなり有効な魔術であるのは確かだが、洗脳して強い暗示にかけた上で恭順させたり薬物を使用するなどでもしない限りは全部の情報を吐き出させるのは困難だというのが良く解った。

 自白剤などの薬物はともかくとして、情報を自白させるような超高度な洗脳法など知らない以上、これ以上は精神的肉体的な苦痛を与える拷問しかないだろう。

 情報の供述に対して相当に強い意志で抵抗しているから苦痛それ自体に屈する可能性はそう高くない。その際には丸一日ズールーに責めさせ、しかる後に尋問役を俺と交代しての共同質問くらいしか手はないだろう。


 因みに自白剤と呼ばれるものは数種類知っている(バルビツールとかメスカリンなんかが有名だ)。

 時間さえかけて試行錯誤すれば多分作れるが、麻薬とほぼ同一と言っても差し支えないし、実際に日本では麻薬取締法の対象になる物が多い。

 麻薬や覚醒剤などはたとえ医療目的でも俺は作りたくない。

 治癒魔術があるから麻酔なんかいらん。

 どうしても必要ならバルドゥックで痛み止めは売ってるしな。


 尤も、自白剤だなんて御大層な名前で呼ばれているが脳に正常な判断が出来ないようにすればいいだけなので別に酒でもいいのだ。

 でも酒で酔い潰して喋らせるというのは実は非常に困難である。用法・用量には大きな個人差があるし、聞きたいことを喋らないことも多いから、自白剤と呼ばれる薬品や酒なんか実はあんまり役に立たない。

 やるべき方法を全部試した上で、時間的な余裕もないときなんかの際にダメ元で試すこともある、という程度のものだ。


 なお、白痴化(フィーブルマインド)の魔術も使って情報を取れないか試したのだが、会話すら碌に成り立たなくなったので、こちらにはあまり意味は無かった。やはり戦闘中に相手のリーダーなどに接触して使う以上の使い道は殆ど無……くはないか。まぁいいや。


 今日はもう遅いので天守に戻って寝よう。




・・・・・・・・・




『……その服、まだ着てたのか?』

『えへへ。似合う?』


 ん?


『まぁな』

『ふふ。……主命により、お命頂戴仕る!』


 よく聞こえないが、日本語?


『おお、シラヌイ! 仮面はないけど、見間違えるくらいそっくりだな!』

『でしょでしょ!』


 窓の隙間から明かりは漏れていたが、何時間も経っているのでいい加減寝てしまったかもしれないと音を立てないようにそっと歩いたのがいけなかったのか。

 それとも贅沢にも廊下や階段まですべて絨毯敷にしてしまったのが足音を消し去ってしまったのか。

 いや、そもそもそっと天守の扉を開けた時に、二階の居間から誰かの話し声が聞こえてきたのでおかしいなと思って瞬間的に戦闘モードに移って様子を窺ってしまったのがいけなかったのだろう。


『ふふふ。じゃああれだな……そりゃ!』

『あん!』


 人が倒れるような音がした。


『機動くノ一きっての凄腕、シラヌイ。いや、シズカ姫といえどもこうなっては哀れなものよな……!』

『よ、四十三話のシーンね……! こ、こんな罠に……不覚! だが、機動くノ一を甘く見るなよ?』

『むうん! そりゃぁ!』


 相当に熱が入っていると見える。


『ぐはっ! コクライ、貴様……ここで私が斃れても仲間が必ず貴様を……!』

『仲間とはこやつらの事か……?』


 足音なんかもう気にしていない。

 階段を登る。


『サザナミ! ヌエ! そ、それにカゲロウまで……くっ! ひ、人質とは卑怯な! 恥を知れ!』

『恥を知れ、か。耳に心地よい響きじゃのう……あ、違った。耳に心地よく響くのう……だ』


 二階まで上がってきた。

 今、俺の顔からは生気が抜けて、完全無欠な無表情になっていると思う。


『ふん。我ら鬼刃衆が今まで受けてきた屈辱、今こそ晴らさん! そりゃ!』

『くうっ! こ、殺せ!』

『そう簡単に楽にしてやるものか……そりゃ!』

『な、何をす……嫌っ!』


 っつーか、さっきから『そりゃ』だけで致命的な何かをしているのか……。


『ふふふ。いつまで気丈に振る舞っていられるかな……? 人質ともどもゆっくりとなぶり殺して……』


 すっと居間の扉を開けると床に大の字になって体をくねらせているミヅチと目が合った。

 勿論、居間に居るのはこいつ一人だけだ。


 見つめ合って一〇秒後。


『ヒユウの出番はもう少し先なんだけど?』


 沈黙に耐えられなくなったのか、変態は真っ赤になって俺から目を逸らしながら口を開いた。

 俺はコクライって悪役だったと思うんだが?


『……こういうのキライ?』


 どう答えたものか。


『好きではないな』


 俺にそんな趣味はない。

 ないが……股間の前の布がめくれているじゃないですか。


 ハイレグみたいな深い角度で切れ上がった下着みたいなのが丸見えだ。

 痴女かよ。




・・・・・・・・・



 夜明け。

 多少寝不足気味のまま行政府に向かう。

 勿論、変なイメージプレイには付き合わなかった。

 突き合わなかっただけで一方的に突きはしたけど。


 道すがらミヅチに昨晩得た情報を伝え、ザイドリッツ夫婦をどうしたらいいか意見を聞いてみた。


「銃とか火薬について知られなきゃ監視だけ続けて放っておいてもいいんじゃない? 他には知られて困ることなんかないでしょ?」


 昨晩捕えた二人の連絡員(つなぎ)は「別の世界から生まれ変わったと公言している俺の他にも同様の者がいそうだから、なんとかして元の殺戮者(スローターズ)に所属していた奴らのステータスを確かめて生年月日を確認しろ」という指令を伝えに来ただけらしい。

 他にも細かな指示もあったがその全てが税収や騎士団のメンバーにどの程度の変化があったのかなど、経済や直接的な軍事力に関わる内容について、王国中央が握っている情報から変遷の有りそうな部分についての再確認の指示だった。

 そういった情報は領内に駐屯している第二騎士団なんかでもかなりおおっぴらに調査しているし、俺も都度報告を怠ってはいない。

 報告の義務はないが、自主的に報告している感じだね。


 また、連絡員(つなぎ)の二人がザイドリッツから得た情報も大したものではない。

 検地を始めたことと、大規模な街道整備(馬車鉄道の工事)を始めたこと、バークッドから連れてきた従士であるリョーグ家や俺の直轄する農地の端になんだか妙な植物の種を植え、種が芽を出し始めた先月くらいから定期的に俺が魔法を掛けているみたいだという報告をしていた事までがわかった。


 なお、二人の連絡員(つなぎ)が持つ転生者に関する知識は本当に大したものでは無いみたいだった。


「転生者は固有技能という特別な技能を持っているが碌に役に立たないものも多い」

「極稀に個人としては異常な強さを持つ奴もいるが、大半は普通の人とあまり変わりはない」

「王家の始祖と言われているジョージ・ロンベルトも転生者だった」

「何百年か前の騎士団長には異常な程の武勇を持つ者が居たが、ある日特命だかなんだかでどこかに行ったっきり姿を消してしまった。その者を転生者だとアタリを付けているのは当時の国王と(これ以上は喋らなかった)」

「転生者は食事の道具として箸を使うのを好むようだ。またミソ、ヒシオといった魔法のような調味料に異常な執着心を見せる他、コメという穀物に執着する者も多い」


 という程度でその他、百年程前にも別の世からの生まれ変わりを自称する者も居たという事が判ったくらいだ。


 数十年から百年おきくらいに転生者が現れるという事自体はごく一部で知られているっぽい。


 ここまでの情報でジョージ・ロンベルトの直系の子孫である国王が転生者の存在を知っている事についてはあまり驚きはなかった。

 先祖代々での言い伝えなんかもあるだろうしね。


 俺もミヅチもこれらの情報から「転生者は先の世で判明するような有用な知識を持っている」とまでは思われてはいなさそうな感じを受けたが……俺もミヅチも危機感を覚えた。しかし、これについては何をしようもないし、どうしようもないことだ。


 が、どうして俺が転生者であると確信を得たのだろうか?

 転生者だと公言していたから、転生者の存在を知っていたのであれば目星を付けられる事まではわかるし、納得も行く。

 でも、確信を得たばかりか、殺戮者(スローターズ)にも転生者が居るなんてこと、どうやってアタリをつけたのだろうか?


 これらの疑問については週末に行う拷問で吐かせるしか無い。


 

恐らくですが3月一杯までは毎週末更新、四月からは週二回更新に戻せる……と思います。

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