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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百二十二話 鑑定2

7447年4月12日


 その後、落ち込んだロリックを慰めるのに結構手間取った。

 鑑定の魔術の取り扱いについても話し合ったが、ミヅチの指摘した通り、転生者の判別の最後のダメ押しが主な使い道になるだろうと結論づけられた。それ以外は現在の殺戮者スローターズに所属しているメンバーの実力参考値の調査に使う程度で、これも頻繁な使用が必要になる訳ではない。


 その他、俺とミヅチが予め想定していた使用法としては、武器を始めとする魔法の品(マジック・アイテム)の鑑定や各種武器や防具などへの鑑定だ。平易な言い方をすると性能調査についての使用が考えられていた。だが、今回の話ではロリックもゼノムも人物を鑑定し、レベルが判ることに気を取られていたようで、人物以外の品物を鑑定する方にはまだ頭が回っていないみたいね。


 HPやMP、能力値などについて非公開にしているので、耐久値や性能欄については言及するつもりはない。解っていない事の方がまだまだ多いしね。しかし、作成日はともかくとして【効果】欄に言及出来るのは大きいんだけどな。


 ところで、ロリックとゼノムの二人は揃って、現時点で俺が鑑定の魔術を習得したことについて公開するのは避けるべきだとの意見だった。


「言うにしても転生者だけにした方が良いでしょうね」

「俺もロリックの意見に賛成だ」


「私は皆に言った方が良いと思うんだけど……理由を聞かせて貰える?」


 ミヅチが尋ねる。敢えて反対意見を言って考えを引き出している。


「ふん、それについては俺から言った方が良いだろう」

「そうですね。ゼノムさん、お願いします」

「以前、ラルファから聞いているから俺はよく知っているし、今さら何とも思わん事だが……」


 ゼノムが言うには転生者ではない、生粋のオースの人には肉体レベルという概念はなかなか受け入れられ難いだろうという事。それに、先ほどのロリックを例に取って言う。殺戮者スローターズ内でも肉体レベルの差について迷宮を先行している元の殺戮者スローターズと、虐殺者ブッチャーズ根絶者エクスターミネーターズとの間で開きが出る。今更不公平だと不平や不満を言う奴はいないだろうが、メンバーの深層心理的な焦りを誘い、思わぬ危険に繋がりかねないというのが理由だった。


「焦って暴走するのを抑えるためにリーダーを派遣しているのよ?」


 ミヅチが言うが、全くその通り。

 その程度きちんと抑えてくれ。

 それ以前の話として、皆も最初はロリックの様にショックは受けるだろうが、少し時間を置けばこの程度の事で焦らないだろうとの確信も出来てきたから披露したんだがなぁ。

 彼らだって一流のベテラン冒険者だぞ?

 迷宮内で焦っても何一つ良い事なんかないのは解り切ってる筈だ。


「そりゃトリスやベル、ズールーやマルソーなら抑えるだろうな……だが……」

「ラルさんは……」


 ラルファか……。

 あいつなら逆に皆を煽って経験値を稼いでレベルアップしようとか言い出し……いや、それはないな。奴も経験値やレベルアップについては何年も前から知ってる。今迄数字として判ってはいなかっただけの話で、その知識は彼女にもあったんだ。


 俺がそれを指摘するとゼノムもロリックも疑わしそうな顔で俺を見た。


「今迄数値として把握出来なかったのが出来るようになったんだ。魔法の技能と一緒でそれを上昇させるために躍起になる……」


「大丈夫だよ。二人共少しはラルファのことを信用してやれ……ってのも妙な表現だけどな。魔法にしたってそれなりに修行はしてるが、あいつは自分の技能レベルを上げるためだけに一生懸命になってる訳じゃないぞ。それによって全員の安全性が高まるから一生懸命なだけだ」


 ゼノムも育ての親なんだからあんま酷いこと言うなよ……。


「あいつの事は俺が一番良く解ってる。その上で言うが、それはない。単にアルに言われたからやってるのと、新しい魔術を使いたいからに過ぎん」


 ゼノムは肩を竦めながら断言する。

 一番良く解ってると言い張るゼノムに言われちゃ返す言葉もないよ。


「ゼノムさん。最近ラルときちんと話をしていますか? 彼女はあれで結構考えていますよ」


 ミヅチが援護射撃をしてくれた。

 俺もミヅチの意見には賛成だ。あいつはあれで結構考えてると思う。

 しかし、ミヅチがラルファを擁護するとはな……。


「そうは言うがな、ミヅチ。ラルは昔から考え無しな所がある。もう十九、いや本当は四十近いのか? 俺としてはそこが心配なんだ……」


 親であるゼノムにしてみりゃいつまでも子供のままなんだろうな。

 まぁいい。


「わかった。じゃあトリスとベル、それから念のためズールーとエンゲラにも話そうか。彼らの意見も聞いた上でもう一度考えよう。ボイル亭に行くか……」


 そう言って腰を上げた。




・・・・・・・・・




 シューニーでズールーとエンゲラを拾い、ボイル亭に戻るとトリスとベルも交えて話し合った。話を聞いて四人ともロリック同様に自分の肉体レベルを知りたがったが、頑張ってもあと一回しか使えないし、今日は休憩しないと魔力的に厳しいと言って諦めさせた。


「明日以降……そうですね、七層か八層以降で休むとき、魔力が余ってたらお願いします」


 順番に言うつもりだからそう焦んなくてもいいじゃんか。

 そう言おうとしたら同じ事をゼノムが言ってくれた。

 しかし、ゼノムはもう自分のレベルが判明しているから、悠長にそんな事を言えるのだと反論されていた。

 そんなに急いで知る必要もない情報だと思うんだけどな。

 知ったところで何かが変わる訳でもない。


 あいつより○くらい上とか下とか判ったから何だというのか?

 まぁ、レベルとか能力値とかあんまり当てにならないってのは俺と俺から話を聞いているミヅチしか知らないし、学生が周囲の通知表の中身を知りたがる心境と一緒なのかも知れん。


 でもさ、全国模試の順位が仮に十万人中五万位だとして、本当はプラマイ四万位くらい、という程度の誤差はあると思うんだ。

 流石にそりゃ言い過ぎか。

 だが、このケースならばン万単位でのブレがあるとは思うよ。


 こう言っちゃなんだが、俺は【天稟の才】があるから三百三十万以上の経験値を持っている。

 しかし、三分の一にしたらロリックはともかく、ゼノムやミヅチよりもレベルが低くなるぞ。

 直接倒したモンスターの数で比べたら俺の方が少ないだろうな。

 ここんとこ、直接モンスターを倒す機会が減ってるしなぁ。


 ま、そんな御託はともかくとして、結論としてはここでも二つに分かれた。


 トリスは「今迄散々辛い思いをして経験値を稼がせていた結果なのですから」と、皆に言った方が良いと主張し、ベルは今言う必要は無いとの意見だった。ズールーとエンゲラは「ご主人様のお心のままに」という、相変わらず自己主張の欠片もない意見とすら言えないものだった。それを指摘すると「我らの考えを述べたところでご参考になるとは思えません」とか言いやんの。


 それでも良いから聞かせろと言うと、ズールーは「では、誠に僭越ながら……」と前置きをしてやっと喋り始めた。


「ご主人様の仰る“肉体レベル”と言うのが魔法のレベルと同様のものであれば高ければ高い程ご主人様のお役に立てるでしょう。以前お聞きしておりますので似たような物だとは思いますし、あまり自信は御座いませんがレベルアップについての心当たりも御座います。……それが数字として魔法同様に判るというのは、良いことではあるでしょうが……」


 そこまで言うと言葉に詰まったようでしばし沈黙した。それを引き継ぐように今度はエンゲラが少し遠慮がちに口を開く。


「良いことばかりではありますまい。例えば、ヘンリーとメックは騎士の出身です。それに相応しく彼らもかなり上手に戦えます。口にこそ出しはしませんがそれなりの誇りも持っているようです。ですが、恐らくではありますが、以前より迷宮で過ごしていた時間の長い分、ズールー様や私の方が肉体レベルは高くなっていることもあるかと思います」


 つまり、言うなってことかね?


「確かにその考えは妥当なものね。マルソーは優しいのね」


 ミヅチが言う。


「いえ、奥様、そんな……」


 エンゲラは少し照れて恥ずかしくなったようだ。


「でも、マルソー、本当はこう言いたいんでしょ? 幾ら一層や二層、最近では六層七層にも行っているからといって、カームさん達のレベルはロリックと私みたいにそれなりに開きがあるだろうって」


「は、まぁ……」


 エンゲラにしてみりゃ入れ替え戦で挑戦を受ける側になるんだからレベル差について開きがある、と予めアピール出来た方が有利だと思うんだけどね。でも、エンゲラやズールーはそんなこと考えないだろう。レベルが高かろうが低かろうが俺の戦力となり、俺の役に立てる人材が殺戮者スローターズに所属すべきだと考えている。それが自分であれば嬉しいだけのことで、自分より実力が勝るのであれば入れ替えは仕方がないと思っているのだ。本当に奴隷の鑑だ。


「でも、今までの努力の結果ですし、ちゃんと伝えた方がいいと思うんですが……」


 今までの話を聞いていたトリスは再び自説を主張する。

 時間をおき、冷静に考えられるようになれば発奮材料になるとも言う。

 その考えも頷ける。

 俺もその気持ちが強かった。

 それだけじゃないけどさ。


 でも俺の考えを言っちゃうとそれで決まっちゃいそうだしな。


 しかし、皆譲らないねぇ。

 自己主張があることは悪いことではないがね。


 険悪な雰囲気になりそうも無いことは素直に称賛出来るポイントだろう。


 でも、いい加減誰か気付いてくれ。

 ミヅチに目配せするしか無いか……。


「あっ! そうだ!」


 ロリックが少し大きな声を上げて注目を集めた。


「肉体レベルについてはちょっと置いておきましょう。知っても何も変わりませんしね。今後の心構えだけの問題だとも言えます。アルさん、あと一回、魔法が使えると言ってましたよね? それ、物に使ったらどうなるんです?」


 ロリックの言葉を聞いて全員が俺に注目した。


 俺はやっと気付いてくれたか、と思って少し安心した。


 今回、肉体レベルはおまけだ。

 固有技能が確認出来る事も、魔法のレベルが確認出来る事も、勿論非常に重要だがおまけだ。


「勿論、いろいろ判るぞ。まだもう一回は使えるから試してみよう。トリス、鎖帷子チェインメイルを持って来てくれ」


 トリスは慌てて部屋に鎧を取りに行った。その間に俺は、既にミヅチの剣を鑑定して四つもの特殊効果が判明していることを伝えた。


 戻ってきたトリスにも説明しながら鎖帷子チェインメイルに鑑定の魔術を使う振りをして解説する。ミヅチのブレード・オブ・デュロウより更に多く、六つもの特殊効果があることに全員仰天していた。


「こんな事まで……知ってたなら最初から言って下さいよ」


 トリスが不満を口にするがベルが窘めた。


「すぐに気が付かない私達が悪いわ。ロリックに言われるまで思い当たらないなんて……。いい? 鑑定の魔法は有効だわ。でも、そう多くは使えない。有効な使い方についてすぐに気付くべきよ。人を鑑定して肉体レベルが判るとか、固有技能の有無を確認出来るとか、確かに重要だけど、私達はもっと大切なことに瞬時に気付かなくてはいけない」


「……確かにそうだ。すみません、アルさん。しょうもない不満を口にしてしまいました。これってシミュレーションですよね? 得た情報を自分で分析して瞬時に最良の方法を選択するための……くそ、油断出来ねぇな」


「ま、そこまで大げさなもんじゃないが。でも、後で聞いたトリスやベルはともかく、ロリックやゼノムにはもう少し早く気付いて欲しかったな」


 苦笑いを浮かべながら言った。


「……そうだな。言われてみると確かに。レベルやら技能やらが詳しく判ることに浮かれちまってた。俺の中でアルに甘えがあったんだろう」


 ゼノムは腕を組んでトリスの鎧を見ながら言った。そして、


「俺が言うのも変だが皆もアルに甘えがある。頼りにしすぎだ」


 と言って締めてくれた。


 まぁ、そう言ってくれて助かるよ。

 俺としてもこの先そう簡単に死ぬつもりなんかないが、万が一もある。

 今だって虐殺者や根絶者は俺無しで迷宮に挑んでいる事の方が多い。

 俺が死んではいそれまでよ、だったら少し悲しいだろ。


 俺が死ぬとか縁起の悪いことはともかく、皆には得た情報を多方面から分析し活用する癖をつけて欲しい。

 あと、ゼノムの言う通りまだまだ甘えがある。

 それなりに自信も付いて来たのはいいが、結局後ろに俺が居るという意識が見え隠れしている。


「で、どうする? 皆には言うか? それとも暫くは黙ってるか?」


 結局皆にも言うことになった。

 但し、それは迷宮を先行する殺戮者スローターズに所属するメンバーだけだ。

 入れ替え戦の結果誰かが入るのであれば当然言うさ。


 ところで、殺戮者スローターズと一口に言っても二通りの意味があるので面倒くさいなと言ったら全員が首肯してくれた。迷宮を先行する旧殺戮者(スローターズ)に別の呼び名を考えたい。今晩、食事の時にでも全員に伝え、一晩考えて貰う。明日の朝、迷宮に行く時に全員で話し合って決めよう、と言う事になった。


 正直言って最初から殺戮者スローターズなんて物騒な名前は好きじゃない。今ではもう慣れちゃったし、既に通りも良くなってるから全く意識しないで使ってるけどさ。




・・・・・・・・・




7447年4月13日


 名前の件だが、俺の案は大昔に緑竜退治をしてのけた伝説の冒険者グループに肖って「蒼炎(ブルー・フレイム)」だ。

 そしたら、「センスわり」とかラルファが言いやんの。

 だって、緑色団ベルデグリ・ブラザーフッドとか黒黄玉ブラック・トパーズとか色入ってんじゃん。

 蒼炎(ブルー・フレイム)だって見事に緑竜を撃破してんだぞ。

 でも、結局全員一致で却下された。


 じゃあお前はどうなんだと聞いてみたら「胡蝶蘭」だって。

 花の名前とかどっかの二流パーティーみたいでそっちのがセンス悪いわ。

 胡蝶蘭は豪華だし綺麗だから俺も好きだけどよ。


 ゼノムは「百年の夢」という案を出してきて、俺を始め大部分のメンバーを感心させた。

 しかし、バストラルに「それ、この前買ったプレミア焼酎の名前ですよね?」と突っ込まれて得意絶頂だった顔が真っ赤になっていた。


 そう言うバストラルはズールーとエンゲラと一緒になって「殺害者スレイヤーズ」という、以前俺がもうすぐ(スーナー)の代わりにと考えた案と全く同じ物を推挙してきた。

 結構賛同者も多かったが、やっぱり物騒な名前だし俺の好みではない。

 却下だ、却下。


 グィネは「白雪スノー・ホワイト」という案を出したが可愛すぎるので却下。

 ギベルティは「グリード・アーミー」と言う案を出し、ズールーとエンゲラに絶賛されていたが、それ以外の皆には不評過ぎた。


 ミヅチが一番多く案を出していた。


 「殲滅者アニヒレイターズ

 「漆黒の雷ブラック・ライトニング


 ここらあたりは惜しい感じだ。


 「黄金の夜明け(ゴールデン・ドーン)

 「灼眼の勇者(フレアブレイバー)


 このあたりはまだ理解出来る。


 「一騎当千(サムライマスター)」

 「正義力せいぎりょくの頂点(グランドスラム)」


 だんだんと意味が解らなくなって来て、それに伴ってミヅチがいろいろ興奮してきたので纏めて却下した。一騎当千と書いてサムライマスターと読めとか、同様にグランドスラムは完全制覇とかそういう意味だったはずだが、正義力せいぎりょくとかまじで何を言っているのか解らなかった。


 そんな中、「救済者セイバーズ」という案が出た。

 因みに、この案を出したのはトリスとベルだ。


 二人共俺の好みそうな名前を考えたのだろうか?

 迷宮内で誰かを助ける事が多いからそう名付けたそうだ。


 救済者セイバーズ……。

 うむ。


 救済者セイバーズか。

 俺が率いるにぴったりだとは思わんかね?  


 結局、旧殺戮者(スローターズ)の新たな名前は「救済者セイバーズ」に決まった。




・・・・・・・・・




7447年4月14日


「ねぇ、もうだめなの? 絶対? 私は無理?」


 ラルファは期待を込めた目付きで俺を見た。ここは八層の転移水晶の間だ。

 鑑定のために俺の魔力を節約して欲しいと言い張り、皆はいつも以上に慎重且つ大胆に戦っていた。

 トリスを始め、ラルファもグィネも魔力切れギリギリまで攻撃魔術を使ってモンスターを仕留めていた。


「今日はもう終わり。明日な」


 今回はベルとエンゲラの二人が出向しているので彼女たちについては昨日の朝、パーティー名を救済者セイバーズに決める時に鑑定結果を伝えていた。品物も鑑定出来るとは言え、やっぱり肉体レベルは気になっていたようだからね。


 そして、八層の転移水晶の間で休息を取る段になって皆は余った魔力で全員鑑定しろと言って来たのだ。今日の鑑定はトリス、グィネ、バストラルの三人に対して行った。トリスとグィネのレベルは二十でバストラルは十八だ。


 なお、鑑定の順番は籤引きで決めた。


「ちえ~、仕方ないか……でもベルが二十でマルソーが二十一なんだよね? で、お父さんが二十三でミヅチが二十二なんでしょ? じゃあ私も二十二くらい期待してもいいっしょ?」


 ……お前はベルとあんまり変わりねぇよ。二十だよ。

 最初から経験値に大差のあるゼノムはもとより、昔から休日まで迷宮で頑張ってるミヅチや俺の奴隷にも届く訳ねぇだろうが。


 当然、今回の迷宮行では全員のレベルと魔法の品について鑑定を行う(事にした)。

 無理なのは今回同行しないベルの頑丈な剣ショートソード・オブ・スターディくらいのもんだ。


 

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