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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百九十話 面倒事3

7446年9月2日

 この野郎(女だけど)、抜け抜けとよくもまぁ……。

【レファイス家:ロンベルト王国男爵。叙任日は7314年5月24日】
【勃興:三代目ウィリアム・ロンベルトが独立して興す】
【現在の家督者はヴィゾンス・レファイスで六代目】

 ふん。

 貴族なんかと姻戚関係を結ぶこと自体は否定しない。ある程度有効だしな。だが、ロンベルトの国王に連なるのだけは駄目だ。それじゃ本当に単なる属国になっちまうし、ヘタしたら血縁を背景に色々と細かいところまで口を出されることまで考えられる。

 いや、別に属国が嫌なんじゃない。そりゃ嫌だけどさ。でも、このご時世で完全に独立を保つ国を興すなんてのもはっきり言って無理だ。

 ダート平原の一部を領地に出来るのであれば食料(主食の小麦と肉類だけだろうけど)の自給自足はまず大丈夫だと思う。ある程度開墾出来たらだけど。軍隊についても何とか出来る自信はある。俺が居て、銃やら火薬やら作れば外征はともかく、防衛についてはおそらく問題ない。数十丁の鉄砲と指向性散弾地雷や指向性対人地雷クレイモアモドキを造る時間(予定に過ぎないが、ある程度の数は予め用意しておくつもりだ)さえあれば例え姉ちゃんが混じった第一騎士団に率いられた数千人の軍隊に五回や十回攻められたところで、その全てに痛撃を与えて撤退に追い込むくらい可能だろう。後片付けが大変だろうけど。

 問題は少数のコマンド部隊のような超精鋭に秘密裏に侵入され、ゲリラ戦のような散発的な戦闘を行なわれたり、非戦闘員を対象にしたテロリズムに走られた時くらいだろうが、そんなのロンベルト王国だろうがグラナン皇国だろうがどこでも困るし、一緒だ。

 それよりも問題は食料や軍隊以外の各種製品などについてだろう。完全ではないにしても全て領土内で生産可能であればなんとでもする。鼻血流そうがなんだろうが製造機械だって造ればいい。しかし、鉱物資源や植物資源についてが問題だ。どうしたって輸入しなければならない。

 ダート平原のあたりは山が少ないので、そういったものは殆ど輸入に頼る必要があるだろう。確かに山地を持つ領土もあるが、そっちはデーバス王国との国境あたりの森が少なく、戦闘も多い。一長一短なんだよな。

 そういったことから属国については、特に最初の援助が必要な時期、仕方のない事だ。だが、俺の希望としては周辺に領地を持つ貴族との姻戚にしたい。可能であれば領土を接している隣だ。援助を受けるにも隣なら行き来がし易い。ついでにいざという時征服もし易い。いや、しねぇと思うけど。うん。多分。

 とにかく、血縁を盾に何か無茶な要求をされそうにない所だ。この場合、俺の国に対する要求とは金や資源の供出ではなく、軍事力の提供になるだろうと予想している。俺個人を取ってみても大きな戦力だろうし、銃については必死になって隠したところで一度でもある程度の規模で実戦投入すれば隠し切れる物ではない。その時までに軍事力提供以外の別の道を見つける必要がある。ダート平原なら上手く開墾出来、防衛出来ればいずれ食料の供出などで代わりに出来る可能性もある。こっちのがいい。

 姉ちゃんを人質に何か要求されることも考えられるが、姉ちゃんが王国第一騎士団に居る以上、これは覚悟の上だ。兄貴や両親はウェブドス侯爵の領民なので俺がウェブドス侯爵との関係を悪化させない限り例え国王だろうと無茶は出来ない。正確には侯爵に要求することは可能だが侯爵がそれを受けるとは思えない。

 そういった意味ではミヅチのライル王国なんて結構条件が良い。適度に離れ、完全に独立を保った小国。多少の貿易は行っているが人口が非常に少なく、生活必需品のうちかなりの部分を輸入に頼っている。輸出しているものは秘薬類やその原料になるキノコ類が主で、副次的には魔石も売っている。あとは……戦力とも呼べないようなそれこそコマンド部隊の様な極少人数の暗殺者。

 ミヅチのおかげもあるが、王都にいる治癒師バイヅォンス・トゥケリンとのパイプも一応はあるし、彼らの国の産業廃棄物も引き取って利用させて貰っている。稼働間もないソーセージ工場では各味を二本づつ毎日彼の治療院へ付け届けさせている。彼はバルドゥッキーがお気に入りであり、非常に喜ばれているそうだ。彼を通じてバルドゥッキーや小麦などの食料品をライル王国に販売してもいいと思っている。

 ついでに言うとミヅチを一度ライル王国に戻せば、簡単に同盟関係が結べそうな所なんか最高だ。尤も、この場合俺に対する暗殺を防ぐということと、各種秘薬類の入手がし易くなるという以外、近々にはあんまりメリットは無いけど。

 だが、将来的に領土の拡大を行う際には強力な援軍を手に入れられる可能性がある。なにしろミヅチ並の魔力を持った百人単位の部隊を味方に出来るし、場合によってはそのシステム化された教育や養育法の入手も可能かも知れないのだ。

 ライル王国はともかく、このヨリーレお嬢様はほぼ確実にあの国王おっさんの先遣部隊だ。意図してこうするよう命じたのか、こうなるように誘導され、自分の考えであるかのように思い込まされたのかは知らないがね。ならば俺の目的に適った対応はひとつ。目的は勿論、彼女だけでも今後に引きずらないようにすること。別の奴が送られてくるのはしょうがない。それから、“気が付いているぞ、あまり舐めた真似をしないでくれ”というメッセージを理解させることだ。

 勿論、舐めた真似をせず、対等な同盟関係を望むのであれば諸手を上げて歓迎する。そんなの無理だろうけど。

「なるほど。貴女は私の所に来る気なのですか? 先ほど、貴女を娶っておけば将来有利だと仰っておられましたが……何を担保にそう仰られるのです?」

 急に横柄な態度に変わった俺を見ても眉一つ動かさないのは大したもんだ。

「先程申し上げましたでしょう? 私は国王陛下の胤によって生まれました」

「では、陛下の血縁が重要であり、貴女ご自身には世継ぎをもうける以外に価値は無いと? ああ、まだ従士でしたね。それも第三騎士団の」

 思い切り馬鹿にしたような顔で言った。お前なんか血縁以外、兵隊としても、部隊指揮官としても(少なくとも今は)役立たずだ、それに、せいぜいが子供を産む道具だと言ってみた。

「他にどんな価値をお望みですか?」

 あら、これは意外と……思い切りが良いね。自分の立場を解ってる証拠かね?

「それが解らなければ、私の伴侶足り得ません」

「勿論解っておりますわ。閣下の代わりに、閣下が手の届かない部分で領内の安堵を図ることですわ」

 簡単に言ってくれるね。確かにそれが出来りゃ配偶者としては高得点だ。だけど、するっとこういう答えを返せるというのは馬鹿じゃないんだろうな。でも、この答えじゃダメだろう。血縁を押し出すなら徹底的にそのメリットを積み上げるべきだ。そう、俺に何を言われてもだ。逆に血縁を盾にロンベルト王国に希望を通させるくらい言ってくれれば、例え大言壮語だろうと見直した。

 尤も、正式な子供ではないのだからそんな事無理だろうけどさ。ガッツを見せるべきだろ。この程度の返事だと具体性に欠けるし単に小利口な感じを俺に与えるだけだよね。「がんばります」と言っているのと何も変わらない。

「どう証明出来ます?」

「それはこれからでないと証明出来ませんわ」

 そりゃそうだろうね。実績ないんだからさ。ま、ここでも具体的な事が出てこない以上、無理でしょ。「田舎者の冒険者、グリード准爵閣下は租税や人事、裁判は不得手でしょうからそこを補佐します」とか「良い徴税官や代官の候補に伝手がありますの」くらい言わないとさ。あんた、何のために第三騎士団に居るんだよ? 騎士団はそういう人材を育ててるんだろ?

「何の実績も無い貴女を血縁だけで迎え入れる理由にはなりませんね。私のところにもそれなりの人材は居ると思っていますので」

 ついでにこれも言っとこうかな。

「ところで、御髪おぐしの色が以前と異なるのは何故です?」

 きれいな青色だけど、あんまり似合っているとは言い難い。趣味悪いよ。

「あら? お好みではなくて? 青か緑がお好みだとお聞きしたので染めたのですが……」

 え? そんなこと……。

 一目見た瞬間に綺麗だな、可愛いな、と外見だけで思ったのはベルとシャーニ義姉さんだ。勿論、エルフのミヅチも綺麗だし、ラルファだってそれなりに可愛い顔立ちだ。だが、ミヅチはエルフの血を引いている以上、普人族と比較してだと綺麗だけど単にエルフという枠組みで見ればもっと綺麗な人も多い。ラルファも日本人として見れば可愛い部類だけど、なんか小便臭い。グィネはドワーフとして見た場合、圧倒的に美人だけど、好みからはかけ離れている。

 俺の女性を見る目つきでも観察していれば濃い青に染めたベルや薄緑色の髪のシャーニ義姉さんを見る目が違うのかも知れない。勿論自覚はない。

 だが、赤とか黒とか金とか、場合によっては薄い赤、白なんかは地球にもあった髪の色だ。青や緑、ピンクなんかは地球にない髪の色で、最初はかなり驚きの対象になった。それを把握している、いや、していた、と言うことだろうか? 考え過ぎだろうけど。

「どうも違うようですわね」

 俺が眉根を寄せて不審な表情を浮かべたからだろう。少し落胆した声で続けられた。

「……染めていらっしゃったかどうかまでは存じませんが、前の髪の方がお似合いですよ」

「……心しておきますわ」

「ま、髪の話は置いておいて、私の伴侶は自分で選ぶつもりです。能力や外見も大切ですが、感性や価値観を共有出来ないと長い人生お互いに辛いでしょうからね」

 非常に在り来りなことではあるが、大切なことでもあるだろう。姻戚を作るような国王だか貴族だかの娘や親戚はこのヨリーレ一人じゃないだろうし、それなら俺だって選びたいわ。

「それに、こう言ってはなんですがレファイス准爵閣下は未だ従士の身でしょう? 大切な騎士団の職務もおありになるはずです」

「グリード様に娶って頂けるのでしたら明日にでも辞職いたしますわ」

 そらそうだろうけどもさ。ま、第三騎士団の従士なんて千人くらいいそうだから辞めても代わりは幾らでも居るんだろうね。だけど、一人前の正騎士であるならともかく、半人前の従士の段階でそういうのはあんまり好かんね、僕ぁ。クローやマリーには少し好感を持っているのだ。

 その時、部屋がノックされた。億劫げに居住いを正す俺を待ったヨリーレお嬢様の許可を得て部屋に顔を出したのはランだ。出前ケータリングが到着したのだ。俺が部屋に入るまでに一悶着あったからか、既に用意を整え終わり、運びこむだけになっているようだ。俺がソファに座ってから十分と経っていないだろう。

「さて、今日はここまでにしましょう。ラン、ジェームスを呼んで下さい」

 ランにそう言い付けると同時に生臭い話は終わりだと宣言された。俺もギベルティを部屋に通すように頼んだ。勿論口拭き係だ。その後はそこそこ上等な出前を食べながら(ああ、口は自分で拭いたさ。ギベルティは俺の後ろに立ったまま耐えていた。悪いな)、当り障りのない冒険者としての活躍を聞かれたりしていた。

 食事も終わり、お茶も飲んだあと、席を立つ前に言っておいた。

「本日はお招き頂き光栄です。また、大変美味しい食事でした。色よいお返事が出来なかったことについてお詫びを申し上げますが、こればかりは色々な事情も絡みます。致し方のないことであるとお諦め下さい」

 帰りにギベルティにはちょっといい店で飯を食わせてやった。



・・・・・・・・・



「……だとさ」

 ミヅチを始めゼノムやラルファ、ベル、トリス、グィネ、バストラル、それにロリックを入れて今日の報告をした。誰も予測していなかった内容だったので非常に驚かれた。

「っつー訳で紐付きだな、ありゃ。しかも単なる庶子。金を引っ張れる訳でもなさそうだし、あんなん貰ってもよほど優秀じゃなきゃあんまりなぁ……おまけにツラもさ、『バタ臭ぇ』の。それなりに綺麗だったけど、俺の好みじゃないなぁ」

 お茶を飲んで言い捨てた。

「……断ったんだ」

 どこかホッとしたようにミヅチが言うが、いずれどこかで紐付きの姻戚関係を結ぶ必要にかられる可能性が高いことは彼女も納得はしている。ま、ウェブドス侯爵あたりなら経済的にもそれなりに余裕が有るようだし言う事はないが、既に直系の娘を兄貴が娶っている。難しいだろうな。でも侯爵の長男、騎士団長のセンドーヘル・ウェブドス男爵が侯爵の後を継ぐ頃に俺が領主になっているなら娘の一人でも俺の嫁にやろうと考えるかも知れない。勿論タイミングやなんやらもあるけどさ。シャーニ義姉さんの妹ってことになるな。

 天領の北東に広大な領地を有するベルタース公爵でも良い。またはロリックの伝手を辿れるならファルエルガーズ伯爵という手もある。天領の東、ファルエルガーズ伯爵領の北に領土を持つザーム公爵もいいよな。国王じゃなくて適度に離れているなら金持ち以外の選択肢はないよな。逆に領土を接しているとか非常に近いならちょっと貧乏そうなところがいいだろう。ヨーライズ子爵とかさ。上手くやればこちらの言うことを聞かせられる可能性も残る。

「だけど、言葉だけ聞くとさ、アルって人非人よね」

 おかしそうにラルファが言った。またそれか。

「なんでだ?」

 ゼノムがそれに答える。

「だってさ、結婚相手にお金の事を絡めて考えるなんて、なんかね」

「俺達はそうじゃない、とでも言うつもりか? アルは国を興そうと言うんだ。損得以外に何が重要なんだ? 俺ももしお前が結婚するなら金持ち相手がいい。貧乏な奴と結婚しても碌な事にはならん」

「えー、気持ちはぁ? ミヅチはどうすんのよ?」

「気持ちなど二の次だ。それにアルだってミヅチの事は考えているだろう。勿論ミヅチもな。お前が心配することじゃない。大体お前はファイアフリード家を継ぐしかないんだ。お前が結婚する頃にはお前も離婚できない立場になっている可能性もあるんだぞ。それを考えてくれ。実家に金を流すだけの旦那なんぞクソの役にも立たんだろ」

 親子の会話らしからぬ内容がそこまで進んだ時、ベルが割って入る。

「貴族でない普通の人の場合はラルの言う通りでも良いと思うわ。でも、そんな子供みたいな事言ってられないでしょ?」

 なんだろうね。この割り切りもベルらしいっちゃベルらしいけど。

「ラルの言いたいことや気持ちは解るけどね。私も。でも姻戚関係を結ばないのであれば援助に対する見返りは莫大な利息が付くだろうね」

 グィネが評した。

「そうだ。たとえ姻戚関係があったとしても無利子や無償で援助してくれる訳じゃない。例えば、うちの実家を取ったって大昔のローダイル侯爵に対する融資の問題でつい最近まで揉めてた。当時鉱山の採掘事業を開始するということで百億Zを超える融資をしたらしんだが、なかなか返してくれなくてね。結局一部の鉱山の採掘権や領土の割譲で済ましたんだけどさ」

 ロリックも腕を組んで頷きながら言う。あ、それ聞いたことあるな。採掘権や領土の評価について国王が調整したんだろ? (ゼニー)の価値が当時とは異なるから調整は大変だったらしい。

「勿論これは失敗例だ。成功例も多いよ。ビーソン子爵とかスロイアル伯爵とか、融資が上手く回って彼らも感謝してくれているし、ウチも儲かってる。全部姻戚関係がある。姻戚がないとやっぱり利子は少し高くなるね。でも、アルさん。逆に多少多めに利子を払ってもそっちの方が良いかも知れません。借りたものをきちんと返してしまえばそれ以上関係は無いのですから」

 だよね。それが理想だけどさ。援助を受けるならきっとかなりの金額だろうし、利子の多寡はバカにならない差額になるんだよね。嫁さん一人、養子一人引き受けるだけで利子を一割二割、割り引いてくれるなら安いもんだ、とも言える。きっと利子だけで億単位だろうしな。

 因みに、以前ロリックとは彼の実家に融資の相談をしたと仮定してどうなるか話をしたことがある。しかし、ロリックは「その時アルさんがにっちもさっちも行かなくなってどうしても纏まったお金が必要な事態にでもならない限りはあまりお勧め出来ません。ウチのご先祖が複利を発明したらしいですから」と言って「金持ちですが、あんまり評判は良く無いんですよね」と複雑な顔をしていた。

 まぁ一時的に金欠になる可能性は否めないが、それなりに儲けを作れそうな産業の構想も常から皆と話しているし、実はあんまりお金の心配はしていない。

 それよりも俺の心に引っかかっているのは「私を娶っておけば将来、領土を賜る時、有利ですよ」という部分だ。勿論、リップ・サービスである可能性は高いし、それ以外の可能性は極小なんだけど。

 ヨリーレが国王にとって超お気に入りの庶子かも知れないじゃんか。
 要調査だね。
 きっとすぐに判るだろうけど。

 
来月は出張が多く、更新ペースが乱れるかもしれません。
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