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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百二十話 不仲説

7445年4月29日


「誰が金魚の糞だって!? ラルの方こそ金魚の糞じゃない!?」

「はぁ!? よく言うわ、このぽっと出が! 後からのこのこ出て来てでかい面して居座ってんじゃないわよっ!」


 ミヅチとラルファがでかい声で怒鳴り合っている。


「ちょっと、二人共、止めさないよ!」


 ベルが窘めるがどこ吹く風だ。


「ぽっと出!? ぽっと出って言ったの? 誰がぽっと出かっ! 『金髪ヤンキー』の癖して! このズベ公!」

「はっ、髪染める金もないの? 貧乏人! 女の腐ったような色の癖に!」


 二人がお互いを睨みつけている。


「おい! いい加減にせんか!」


 ゼノムが怒鳴る。が、何の効果もなかった。


「く、く、く、腐っとらせんわ!」

「いーえ、腐ってますぅ。ゾンビ女!」


 ゾンビ女とはこれいかに。

 ラルファは遠回しに俺のこともディスってるのか?


「おい、マルソー、止めるぞ!」

「はい、ズールー様!」


 ズールーとエンゲラがそれぞれミヅチとラルファを後ろから羽交い締めにでもしようとしているのか慌てて席を立つ。


「ぞ、ゾンビ! それを言うか、このクソガキ……。あんたこそ碌に戦力になってない癖に悪口だけは一人前か! この」

「ろ、碌に戦力になってない……? どの口が言うのよ!」


 ミヅチも大人気ねーな。そこまで言わんでもいいだろうに。

 だが、ゾンビ女と言われて相当腹も立っているのだろう。


「ラル、あんた言い過ぎよ!」

「ミヅチさんも、少しは言葉を謹んでください!」


 グィネとトリスも大声で制止している。


「だいたいあんた、いつも酸っぱい匂いさせて、ゲロ臭いんだよ!」

「な!? 吐いてねーし、ゲロとか吐いてねーし!」


 ラルファが涙目になりかけている。

 いや、お前、酔っ払ってよく吐いてるじゃん……。


「あ、あの、お、お二人共、や、やめてください! やめてくださーい!」


 バストラルがおろおろしている。

 こいつだけ棒読みのような声だった。使えねぇな。


 ギベルティはやれやれ、と言った体で黙々と食事をしていた。

 まぁこの二人が暴れているならギベルティに止められる訳が無い。


「ミヅチ様! もういい加減に」

「ラル! ミヅチ様への暴言は許さないわよ」


 ズールーとエンゲラが二人を後ろから羽交い締めにした。


 俺はと言えば、やっとテーブルの間をすり抜けて二人の間に割り込めたところだ。

 二人共歯を剥き出して威嚇しあっている。猿かよ。


「止めんか!」


 一喝してミヅチとラルファの頭にゴンゴンと拳骨を落とした。


「だって、この子が!」

「だって、この人が!」


 うるせーよ。


「うるさいんだよ。他の客に迷惑だろうが! どうしてもやりたきゃ外に行け、外に!」


 俺に言われて大人しくなった二人はその後も出来るだけ離れて座っていた。

 日光《サン・レイ》の四人には弱々しい笑みを浮かべながら頭を下げ、この日は食事を終えると長居せずに店を出て行った。




・・・・・・・・・




7445年4月30日


 朝飯は皆とは一緒ではなく一人で食い、その足で干物を買うとさっさと町外れの鄙びた宿に馬を預け、迷宮に足を踏み入れた。


 ゆっくりと時間を掛けて二層を突破する間、出会ったモンスターに魔法を掛けて効果を確認したりしていた。

 三層に降りてすぐに君が代を歌いながら二層の妖精郷へ繋がる場所に転移して、扉が開く時間までまどろんで過ごした。

 弁当を買うの忘れたので腹が減った。


 火魔法で火を出して干物を焼こうかとも思ったが、ガスコンロのように小さく、一定量の火を出し続けるにはフレイムスロウワーの魔術を使い続ければ問題ないが、五徳がない。

 ナイフに刺して焼こうにもナイフは一本しかないから……千本があるじゃんか。

 こいつを金串のようにすればOKだな。

 まぁ一匹食えば腹は我慢出来る。


 真夜中、日付が変わる少し前に水を出して顔を洗い、日付が変わると同時に扉に手を押し当てて妖精郷に踏み込んだ。

 いつも通り中心部の池に浮かぶ島に渡り、木の洞からコンロの魔道具を引っ張りだしながらカールとミラ師匠を呼んだ。


「ぷっ、あははは、今日は一人かい? ミヅチには振られたのか、気の毒に」

「これ、カール、人の傷口に塩を擦り込むような事を言うんじゃないよ。アル、男は顔じゃないさね。気を落としなさんな。なぁに、普人族《ヒューム》と闇精人族《デュロウ》なんて所詮は別の種族、子供だってそうそう出来ないからね」


「振られてねぇよ! 今回は用事があって来られないだけだ。失礼なこと言うな。干物やんねぇぞ」


「ありゃ、そうかい? こりゃ失礼、でも、アルだって悪いんだぞ。何も言わないで一人で来るからさ。勘違いするのも仕方ないだろう?」


 どうやって事前に連絡しろっちゅーねん。


「それからミラ師匠も男は顔じゃないって、確かにそうですがね……そりゃそんなに良かないですが、そこまで言われるほどでも無いかと思ってるんですが……」


「そ、それより、まず魚を焼いてくれんかの?」


 師匠はフォロー無しかよ……。


「ああ、今焼きますよ……っと、最初はどれがいい?」


「やっぱり最初はメイネイジかな?」

「そうさな。ぴる、ぴるるるっ」


 ミラ師匠は他の妖精たちにも声を掛けたようだ。

 すぐに沢山の妖精が集まってきて周りを囲んだ。

 しばらくして干物を食べ終わった師匠に声を掛ける。


「ミラ師匠、今回は解呪《リムーブ・カース》の魔術をお教え頂きたいと存じております。この魔法はご存知でしょうか?」


 忘れないうちに言っとかなきゃな。


「ん、解呪《リムーブ・カース》か、当然知っとるよ。アルは呪われたのかいね?」


 おお、やはり師匠はご存知であったか。

 どうやら恥をかかなくて済みそうだ。良かった……。


「いえ、私ではありません。勿論ミヅチでもありません。全く別の人が呪われた剣を手にしてその剣に魅了されてしまったのです」


「ほーん、そうかね。でも、解呪《リムーブ・カース》の魔術は実際に呪われた相手を呪いから解き放つ全てを見ていないと覚えられんと思うがの……それだって相当難しい事だと思うがの」


 何ですと? ってことは、呪いの品(カースド・アイテム)が必要になるということか? こりゃまずいな……。


「まぁ、そういうやつなら丁度良いのがある。ちょっと待っとれ」


 ミラ師匠はそう言うとすぐに樹の上の方へ向かって飛び去って行った。

 ほっ……良かった。……のか?

 なんだか嫌な感じがする。


「ああ、ミラはあれ持ってくるのかな? それともあれかな?」


 カールが何やら言っているが、彼の言葉は俺の耳の左から入り右から抜けていった。

 嫌な予感しかしねぇ。

 すぐにミラは何か輪っかのようなものを手に持って戻ってきた。

 輪っかの直径は二㎝弱、宝石のない指輪のように見える。


【毒の指輪《リング・オブ・ポイズン》】

【ミスリル銀】

【状態:良好】

【生成日:16/10/6715】

【価値:1】

【耐久値:35】

【効果:遅効性致死毒】


 やっぱり……。嫌な予感が当たりそうだ。


「これは呪いの品(カースド・アイテム)だよ。私ら妖精族には腕輪だがね。アル、あんたはこの指輪を指に嵌めるんだ」


 あの……致死毒とか出てるんですが、それは……?


「ああ、あんたも【鑑定】を持ってるんだね。心配ないすけ、死ぬ前にちゃんと外してやるさね」


【効果:遅効性致死毒;指輪を嵌めた者は例外なく呪いにより毒に侵される。毒は体力を奪うタイプの毒で、一分間に1HPずつHPを奪ってゆく。当然HPがゼロになれば体力低下により昏倒し、それ以上放置されると死に至る。治癒などの魔術によって失ったHPを回復させることは可能である。また毒中和や解毒の魔術によって一時的に毒を中和したり、抜いたりすることは可能だが、この指輪を嵌めた指を切断するなど、何らかの方法により指輪を外さない限りすぐに新しい毒に侵される。毒は指輪を外せばそれ以上効果を発揮しない】


 即死ではないことは名前から想像していたが、なんと嫌らしい品であることか!

 俺の手のひらの上に載った指輪を見ながらごくりとつばを飲み込んだ。


「ほれ、さっさと嵌めんかね」


 ミラ師匠が急《せ》かしてくる。

 俺は勇気を出して呪いの指輪を嵌めるしかないのだろうか?

 魅了する剣とかの方にして貰えないのだろうか?


「なんだい、それは嫌なんかね? 別のやつがいいかね? でも別のやつはちょっと解呪《リムーブ・カース》の魔術を学ぶには向かんのよ。感覚を一つ失ったりするからの。そいつで我慢しない」


 仕方ない。

 今の俺のHPは二〇〇以上ある。

 三時間以内なら何とかなる……おっと、確認だけはしておこう。


「判りました。ところで師匠、師匠は解呪《リムーブ・カース》の魔術はどのくらいの時間で使えるのでしょう?」


 俺の発言を聞いたミラ師匠は片眉を上げながら言う。


「なに? 私の腕を疑っとるんかね? 安心しな。すぐに外せるから。昔はカールが悪さをした時なんかにこいつを腕に嵌めてお仕置きしたもんさね」


 それを聞いて安心した。

 カールのHPは二〇ちょいしかない。


 指輪をつまみ上げ、左手の薬指に嵌め込んだ。

 右手を指輪から離し、数十秒後、指輪から小さな触手のようなものがうぞうぞと沢山蠢き出てきて俺の薬指に潜り込み、指輪が締まった。

 痛くはなかったが、な、なんじゃこりゃ!?


「ほれ、動くない。今から解呪《リムーブ・カース》の魔術を掛ける。その感覚をよく覚えない」


 ミラ師匠は俺の指に嵌った指輪に両手を当てて精神集中を始めたようだ。

 彼女の両手の平から青い魔術光が漏れ光る。

 一分程もそれが続くと、俺の指に潜り込んでいた触手が指輪の中に引っ込んでいった。

 慌てて指輪を外した。


「指輪の魔力に自分の魔力の流れを合わせるのがコツさね。一度合わせた後、それを逆に辿り指輪の中で絡まっている呪いの魔力を、結ばれた糸を解くようにしてやればええ。コツを掴むまで何度も練習した方がええよ」


「はい……」


「全部の魔法のレベルが六あれば使えるはずさね。だからアルにもきっと出来る。まぁ、万が一、手こずるようなら途中で回復してやるから安心せいな」


 よし、やってみるか。また指輪を指に嵌め、触手が出てくるのを待つ。触手が俺の指に潜り込んだ。さて……指輪の嵌った左手の甲に右手を重ね、精神集中を開始する。


 最初の解呪《リムーブ・カース》の魔術は効果を発揮するまでに二時間程も掛かった。

 それから何度も練習していた(勿論、都度回復は行った)が、カールもミラ師匠も他の妖精も午前一時頃には皆、樹の洞に帰って寝てしまった。

 俺は一人指に食い込んだ呪いの指輪と格闘する。


 朝方、いい加減腹も減ったので起きてきたミラ師匠たちと干物を一緒になって食い、食事が終わるとまた呪いの指輪と格闘した。

 非常にコツが難しく、夜半頃になってようやっと一時間程で発動できるようになった。

 結局今回も夜半まで妖精郷に滞在していた。


「カール、ミラ師匠、今回も有難うございます。ところで、次回は可能ならもっと多くの人を連れて来ようかと思っているのですが、お許し頂けますか? 当然人数も増えますから持ってこれる魚の量も多くなります」


 カールとミラ師匠は顔を見合わせると破顔した。

 カールは飛び上がってくるくる回りながら喜びを表現し、ミラ師匠もにこにこと笑っていた。


「ここで暴れたりせなんだら別にええよ。仲間に危害を加えないなら来るのは勝手さね」


「勿論、皆さんに危害を加える様な事はさせません。彼らにも魔術を教えてやって欲しいですし、それに、少しばかり滞在させて貰うかも知れません。新しい武具を試したりさせて貰いたいのです」


「ああ、それなら別にええよ」


「有難うございます。それと、もう一つ。私の固有技能については黙っていて下さいませんか」


 これ、重要なポイントね。忘れちゃいけない。


「……私ぁええがの。こいつ(カール)は覚えていられるかどうか……」


 げ。


「あははは、アルは相変わらず馬鹿だね。俺が覚えてる訳ないじゃないか。ああ、馬鹿だからミヅチに振られたんだっけ?」


 記憶力の無さを誇って胸を反らす羽虫が俺の目の前にいた。

 だから振られてねぇっちゅーねん!

 カールは頭に障碍でもあるのだろうか?


 それはそうと、可能なら一丁くらい銃を試作して持ち込んでベルにでも練習させようと思った俺が甘かったか……。

 勿論俺も練習する必要があるだろう。

 妖精郷の直径は一㎞程もあるから音は漏れないだろうし、練習場に最適だと思っていたんだけどな。


 まぁ、広くて明るい七層で練習してもいいが、何㎏もあるだろうし、弾薬まで含めたら相当な重量になるだろう。

 持っていくのが骨だしね。

 ここで済ませられれば助かると思っていただけだ。


 まぁ、それならズールーとエンゲラ、ギベルティの奴隷を連れて来ればいいかな? 

 ミヅチも入れれば五人だから相当な魚をお礼に持って来れるだろう。

 いや、やっぱ止め。

 カールの脳味噌の出来を忘れてた。

 俺も人のことは言えんな。


 改めて丁寧に礼を言い、妖精郷を後にした。迷宮を出る頃にはすっかり夜も更けており、時計の魔道具を確認すると今は午前三時を少し回ったくらいだ。

 被っていたフードをずらして迷宮の入り口で税吏を警護していたチャーチさんに会釈をしながら「魔術の練習は辛いです」と泣き言を言ってフードを被り直すと馬を預けてある鄙《ひな》びた宿へと向かった。




・・・・・・・・・




7445年5月2日


 馬の上で断続的な居眠りを繰り返しながら王都の商会へと向かい、夜明け過ぎに到着した。


 飯屋は勿論だが、気の早い商店にはもう店を開けているものもちらほらとある。


 肥桶を天秤棒で担いでいる、素早く食事を済ませた肥屋が草色に染められた上着を着て街中に走りだす。

 王都には二十程肥屋を生業とする商会があり、郊外で肥料を生産している。

 それを王都周辺の村々に販売しているのだ。


 川沿いに家がある者は川に便を流しているのも居るらしいが、溜めておけば幾許《いくばく》かの金(六人家族で週に五〇Z(大賤貨五枚)くらいにはなるらしい)になるのでそんなのは金持ちだけだろうよ。


 この時間、まだヨトゥーレン母子は出勤前だろう。

 店の前の馬止杭に馬を繋いでいると、丁度ダイアンが扉を開けて出てきた。

 朝食を買いに行く処だったのだろう。鍋と深皿を持っていた。


 前にも言ったことがあるがオースでは都会の人々は基本的に食事は外食が多い。

 店に行って食べるか、店で作られたものを買って持って帰るかくらいしか違いはない。

 薪になるような燃料は金が掛かるし、魔石もコンロで消費するにはそれなりに高価だ。

 必然的に飯屋は地域の胃袋を握っている。


 家で食事を作れるような人はある程度以上の収入のある人が殆どだ。

 飯屋向けの食料品店や数少ない自炊する人たち向けの食材を扱う商店もあるから作ろうと思えば自宅でも炊事は可能だが、そもそも煮炊きするような設備を備えていない家の方が圧倒的に多い。

 都市部を離れた田舎になると燃料には困らないので自宅で炊事をする人の割合が殆どになる。


「あら、アル様」


 少し驚いた顔でダイアンが俺に声を掛けた。


「おう、ダイアン。飯買いに行くのか? 俺の分も頼む」


 俺も気軽に声を返し、財布から大銅貨を取り出して二枚をダイアンに渡した。

 二〇〇〇Zもあればリョーグ家四人と俺が食う量くらいは充分に買えるだろう。

 具の少ないシチューなら鍋一杯で四〇〇Zとか五〇〇Zだし。

 後は適当にパンでも買えばいい。


「畏まりました。シチューにするつもりだったのですが、それで宜しいですか?」


「ああ、勿論だ。もう皆起きてるか? 店に入ってもいいか?」


「ええ、勿論です。皆も既に起きております」


 店に入ると既にロズラル、ウェンディー、ルークも起きて作業小屋に行く準備を始めていた。

 挨拶を交わし、特別な用がないならロズラルだけは今日一日店に居て俺とまだ何ヶ月もないであろう商品補充までの乗り切り方を相談することを申し付けた。


 一〇分もしてダイアンがアツアツのシチューの入った鍋と目玉焼きを五個入れた深皿、太ったバゲットのようなパンを抱えて戻ってきた。

 全員で朝食を摂り、食後のお茶を飲んでいる時にヨトゥーレン母子が出勤してきた。


「あ、かいちょー、おはよござます」


 カムナルが舌っ足らずな声で俺に挨拶しながら駆け寄ってきた。


「おう、カンナ、元気だったか?」


 もうすぐ五つになるカムナルを抱き上げて振り回してやる。


「もう、カンナ、足を拭きなさい。会長に汚れがつくでしょ!」


 アンナが注意した。

 流石お姉ちゃんだな。

 でも、別にそのくらいいいさ。


「ほら、足出して……ごめんなさい、かいちょー」


 ハンナも甲斐甲斐しくカムナルの世話を焼いている。


「ああ、大丈夫大丈夫、いいさ」


 カムナルだけゴムサンダル無いのか。


「ウェンディ、カンナのサンダルも作ってやれ。少し大きめにな」


「そ、そんな、結構ですよ」


 レイラが慌てて言うが、ゴムを扱うグリード商会の身内が、子供とはいえ裸足はいかんよ。

 カムナルは男の子だし、いずれは優秀な手代になって貰わねばならんのだ。

 勿論、アンナもハンナもな。


「ええ、畏まりました」


 ウェンディもにこにこと返事を返してきた。


「じゃあ、我々は行きましょうか」


 ルークがウェンディとダイアンに声を掛け彼ら三人は作業小屋に向かって歩き出した。


 王都には二晩泊まり、ロズラルたちと細々とした打ち合わせをした。

 コンドームを買いに来た客は口々に新型の入荷はいつになるか訊ねていた。

 皆、身なりの良い客ばかりだった。レイラ……やるなぁ。




・・・・・・・・・




7445年5月4日


 ボイル亭に到着し、馬を預けると宿には誰も居なかった。

 もう昼食に出てしまったのだろうか?

 仕方ないので俺も飯でも食いに行こうと宿を出て、特に待ち合わせも決めていなかったので適当に店に入ることにしてバルドゥックの街を歩いていた。


 すると、前から知った顔が歩いてきた。


 黒黄玉《ブラック・トパーズ》のカーク・ダンケルだ。

 向こうも俺に気付いたようで、小走りに駆け寄ってくる。


「やぁ、ダンケルさん」


「ああ、グリードさん、丁度良いところに……王都に行かれていたとか?」


 なんだよ、逃げやしないよ。


「ええ、商会の方に用がありましてね。たった今戻った所です。ああ、そうだ。必要な物は揃いました。もしご都合が宜しければ今晩にでもどうです?」


「おお、助かります。場所は……」


 ダンケルはあからさまにほっとした表情で言った。


「そちらの宿に行きますよ。バルケミーさんは縛り上げて押さえつける必要がありますので」


「解りました。では今晩何時頃でしょうか? 用意して待ってます。バルケミーの宿はミッスリーです。ご存じですか?」


「ええ、二番通りの中程の宿ですよね。夕食前に済ましたいと思いますので五時過ぎには行きますよ」


「おお、助かります。これで明日から迷宮に行けそうです。ウチのアンダーセンも喜ぶでしょう」


 失敗する事は考えてないのかね? 別にいいけどさ。


「いえ、アンダーセンさんにも宜しく。では、失礼します」


「あ、そうだ、グリードさん。お礼の足しになるかどうか、微妙なところですが、殺戮者《スローターズ》にいる普人族《ヒューム》と闇精人族《ダークエルフ》が不仲だそうですよ。余計なお世話かもしれませんが、一応お耳に入れておいた方が宜しいかと思いましてね」


 ほほう。


「ええっ!? 本当ですか!? 何やってんだよあいつら……」


 びっくりした声をあげた。


「いえ、まぁ噂なので……私も直接確認した訳じゃ無いので……」


 気の毒そうな声音で言われた。


「すみません、ちょっと失礼します」


 ボイル亭に向かって戻るように駈け出した。


 面倒臭えなぁ……。


 途中で道曲がって適当な店で何でもいいから食おう。

 何となくサンドイッチが食べたかったが、蕎麦掻きでもいいか。


 

「解呪(リムーブ・カース)」アブジュレーション・エンチャントメント・チャーム

(地魔法Lv6、水魔法Lv6、火魔法Lv6、風魔法Lv6、無魔法Lv6、消費MP30)

術者が望む対象の「呪い」を一つ解除する。対象が生物の場合、解呪されると「呪い」が解除されるだけだが、対象が無生物の場合、対象を完膚なきまでに破壊する(アーティファクトやレリックなど例外有り)。解呪には呪われた対象若しくは呪っている対象に接触する必要がある。また、呪いの強度により、上記以上の魔力を必要とする場合もある。逆魔法の「呪い(ビストゥ・カース)」は術者のレベルと同じ時間だけ対象(生物に限る)に呪いを掛けられる。呪いによって対象の能力値を術者のレベルと同数だけ減少させることが出来る。能力値は最低でもゼロ以下にはならない。筋力・俊敏・器用・耐久の順に能力値は減少する。こちらも魔力を余計に注ぎ込むことで影響を与える能力値の数を増やすことも出来る。但し、「呪い(ビストゥ・カース)」の魔術は効果を発揮するまでに最低でも対象のHP(無生物の場合は耐久値)×六〇秒間の精神集中のための時間(魔術に対する熟練度が上がっても精神集中のための時間はこれ以下にはならない)を必要とする。


自宅には日曜日(8月17日)に帰ります。次回更新は8月19日(火)になります。以降平常運転できるといいなぁ、と思ってます。


また、頂いたご感想は全て拝読させていただいております。

大変失礼ですがお返事は活動報告の方でさせていただいています。

たまに活動報告の方にも目を通していただけると幸いです。

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