第百四話 やる気
7444年12月19日
今日から本当に十人体制で七層へ挑む。
シャワーを浴び、朝飯を食いながら今の戦力を少し整理してみた。
一人目、俺。
前衛後衛どちらもこなせる。殺戮者の要と言っていいだろう。
自己評価なので甘いかもしれないが、俺が抜けると他のトップチームよりちょいマシかどっこいくらいになると思う。
ミヅチまで抜けると多分トップチームには敵わない。
正確に他のトップチームの実力を知らないので当てずっぽうだけど。
二人目、ゼノム。
魔法も飛び道具も使えないので前衛専門だ。だが、その実力は高く、俺を除けば前衛では一番安心出来る。
相手の隙を見つけて少しづつダメージを与えながら粘り強く戦うのが得意。
三人目、ミヅチ。
俺と同様、前衛後衛どちらもこなせる。まぁ俺の劣化版だな。でも総合力では間違いなく俺の次だろう。
ミサイルの魔術に慣れたらミヅチ一人でトップチームとタメを張れると思う。
それまではやけに直接攻撃力の高い魔力タンク。と言っても攻撃魔術を連発出来るのはでかい。
四人目、ラルファ。
一応魔法も使えるが性格的に前衛だろう。
前衛での白兵戦の実力は殺戮者で四番手だが、その固有技能も相まって相手に隙を作り出しさえすれば大振りの一撃を決めて一発で状況をひっくり返せるほど大きな爆発力を秘めている。
五人目、ベル。
弓と魔法が得意なため後衛だ。一応前衛に置いてもそれなりに動ける。
超一流の魔術師よりも魔力が高いので魔術も併せた総合力ではゼノムをすら凌ぐと言っても過言ではない。
俺とミヅチが抜けた場合、ベルの使い方が重要だ。
六人目、トリス。
盾を使い始めてから前衛に出ることが多くなった。魔法も使えるので勿論後衛も可能だがその場合、MPの関係で一般的な冒険者魔術師程度だろう。
もう少し魔法の特殊技能のレベルが上がってくればその真面目な性格も相まってかなり伸びるものと思われる。
七人目、グィネ。
後衛。と言うより、前衛と後衛の中間。前衛が作り出した隙を突いて的確に攻撃が出来るようになりつつある。
戦闘力とは関係ないが、その固有技能により迷宮では一番大事かも。
戦場を迂回し、こちらの後衛に迫る敵を見分けて牽制したりなど全体の状況を読めるようになって欲しい。そうすれば一皮剥けるだろう。
八人目、ズールー。
前衛。白兵戦の実力はトリスとどっこい。盾を持ったことにより防御力UP。
忠誠心が高いのでかわいかったが、最近は……これはどうでもいいか。
九人目、エンゲラ。
前衛。白兵戦の実力はベル、グィネよりは上と言えるが、トリス、ズールーには一歩及ばない。盾を持ったことにより防御力UP。
でも盾の存在を忘れていることも多いようだ。
ここにバストラルが加わるのか……。
槍を使わせていることからポジション的にはグィネと同様の中衛(?)になるのだろうが、まだ当分の間はお味噌だよな。
戦力として考えた場合、ギベルティの方がまだマシかもしれない。
が、レベルは一層から六層を踏破する間に一つ上がり、四になっている。
たった三日で経験値が三〇〇〇も増えた。
今日、七層からは一日あたり一四〇〇~一五〇〇を目標に稼がせれば七日間で更にレベルを一つ上げられるだろう。
キャベツベースのサラダをむしゃむしゃ食いながら、青い顔をして食欲の無さそうなバストラルの様子を見る。
昨晩このキャンプに連れて来た途端、緊張が切れたのと昨日までの三日間で積もった疲労からへたりこんだ彼の様子を思い出した。
俺の心配を汲み取ったのだろうか、ゼノムとミヅチがバストラルに声を掛けた。
「サージ、しっかり食っておけ。今日からが本番だぞ」
「そうですよサージさん。ちゃんと食べておかないといざという時動けませんよ」
「あ? え? ええ、そうですね……しかし、なんでだろ? こんなに美味しいのに食欲が湧かないんすよ……気持ちは高ぶってるんですよ? 何しろ、あれだけ沢山の魔石を得たのですからね」
ここまで来るのに大体合計の価値で二十万ちょい。魔道具屋に売れば百五十万Z(銀貨百五十枚)近い量の魔石を得ていた。こいつの取り分で銀貨一枚半だ。
「今日からは今までなんかよりもっと価値のある魔石がゴロゴロ手に入りますからね。へばっている場合じゃないですよ。さぁ、沢山食べて、体力をつけてください」
そう言いながらミヅチはバストラルの器にオートミールを継ぎ足してやっていた。
力ない笑みを浮かべ、それでもバストラルはオートミールにぎこちなくスプーンを入れる。
昔、自衛隊にいた頃、防衛大学校を卒業し、幹部候補生として久留米に行ったとき、防大出身者(B幹)、部内出身者(I幹)に混じった一般大学出身の候補生(U幹)連中が武装障害走や八〇㎞行軍で死にそうになっていたのを思い出す。
それなりに体力練成を受けていた自衛隊員でもきつかったが、彼らはもっと大変だったろう。
そういう俺だって3尉に任官し、駐屯地に配属されたあと、部下にいた北方遊撃「r」徽章持ちの江原2曹の体力には化物だと思って開いた口が塞がらなかった。
あ、江原とか久しぶりに思い出したな。
あの時のU幹や俺のような気持ちになっているんだろうな。
俺も退職してなきゃ翌年には富士の幹部「r」課程に推薦が決まって……逝かされてたはずだ。
「バストラル。しんどいのは最初の二~三ヶ月だけだ。無理にでも詰め込んどけ」
迷宮の冒険者は精神力と体力が勝負なのだ。
何しろ今回の迷宮行だって、初日に一層から三層までおよそ二五~三〇㎞くらい歩いたのだ。
加えて一度の時間は一分もないだろうが、各所で戦闘もしている。
同じ三〇㎞でも街道の隊商護衛とは訳が違う。
翌日は歩く距離自体は短くなったものの、アンデッドモンスターの巣を通り抜けたし、昨日は転移の罠やでっかい猪に怯えながら七~八㎞を歩いたのだ。
今まで畑仕事しかしてこなかっただろうバストラルには体力的にはともかく、精神的にかなりきつかったのではないかと思う。
その為に今回の食事はオートミールや卵類など消化吸収が良さそうで、尚且つ栄養になりそうなものを中心にしている。
肉類などもそれなりに持って来てはいるが、肉類の量自体はいつもの迷宮行での量とさほど変わり無い。一食あたりの肉の量自体は減っている。
「大丈夫です。こんな旨いもの、残せるわけないですよ!」
言葉とは裏腹に、バストラルは硬い笑みを浮かべて機械的に卵のオートミールを口に運んでいた。
・・・・・・・・・
……ここらで昼飯にするか。
そう思って七層の林の中で休息を指示した。
今日の昼飯は鳥そぼろ入り蕎麦掻きだ。鶏そぼろと言っても細かく刻んだだけの鶏肉なんだけどさ。
塩胡椒で濃く味付けした適量の鶏そぼろを熱湯と共に蕎麦粉に入れてちょいと練る。
香り付けに少しオリーブオイルを垂らしてやれば立派な食事として通用する。
これにビタミン類の補給としてみかんを一つ。
果物は結構高級品なので味わって食ってくれ。
普段滅多に甘いものなど口にしない俺たちは日本では酸っぱくて売り物にならないようなみかんでもすごく甘く感じられる。
すると、自然とみんなの顔も疲れを忘れて綻んで来るって寸法だ。
「サージさん、この前から言ってますが槍を突き込んだら捻らなきゃダメですよ。オーガは体が丈夫ですからね。単に突いてもあんまり弱らないんです。こう、突き込んだら一回捻る。そうすると突き込んだ傷口が広がってたくさん血が出ますよ」
グィネが槍を突き込んで捻るようなポーズをしながらバストラルに講義をしていた。
うう……成長してるんだなぁ……おっちゃんは嬉しいよ。物騒な成長だが。
「やったんすけどね……オーガの筋肉が硬くてとても捻れなかったです……」
「だから筋肉の分かれ目を狙って突くんだよ。本気で筋肉を締められたら抜けないからな」
トリスが横から口を出していた。
確かに、腕だの腿だの腹だのを突いてもやりすぎると簡単には抜けない。
ドワーフでレベルもかなり高くなっているグィネの握力だから出来る気もする。
最近グィネの二の腕は凄い事になって来てるし。
「まぁ、最初から上手くは出来ないでしょ。ゆっくり慣れていけばいいと思うよ」
みかんの皮を剥きながらラルファが常識的な事を言った。
そうだな。その通りだ。
「しかし、皆さん凄いですね……女性も多いのに……少し自分が情けなく思えてきます」
「あら? ありがとう。でも本当に私たちは大したことないわ。凄いのはアルさんです」
ベル……そう言ってくれるのは嬉しいが、あんまり褒めると調子に乗っちゃうからよしてくれ。
それに、皆も結構凄くなってるのは本当だと思うぞ。
今日は良いペースだったから、午前中オーガと三回戦って合計八匹倒したけど、俺が手を出したのは四匹いた時だけだ。
こちらが先に気付けたから遠くから動く前に一匹、近づいて来る間にもう一匹殺しただけだ。
オーガ二匹づつが相手ならもう危なげなく戦えるようになってるじゃんか。
「サージさん、そう気に病まなくてもいいですよ。朝この人が言った通り、貴方だってすぐに皆と同じように出来るようになると思いますよ。焦らずに少しずつ慣れていきましょう」
ミヅチはそう言うとみかんの房を一つ口に放り込んだ。
種を噛み潰すごりっという音がした。苦かったのだろう。情けない顔をして手で口を隠しながら吐き出したようだ。
・・・・・・・・・
午後は七匹のオーガを倒し、今日は終わりだ。
十五個の魔石を前に笑いが止まらない。
【鑑定】の価値の合計は一八二一四五〇。売れば一二五〇万Z以上になる。
だいたいオーガ一匹くらい、価値にして一〇~一三万前後、魔道具屋で一般に販売される末端価格一〇〇万Z前後の魔石が一番需要が高いのだ。
四〇Wの蛍光灯くらいの明かりの魔道具に入れれば無駄遣いしない一般家庭では三〇年くらい持つだろうが、夜間も営業している酒場なら照明一個で一年とかからずこのくらい使ってしまうのだから。
コンロなんかもっと食うしな。
それらと比べて時間あたりの消費量は低くても丸一日点けっ放しの冷蔵庫なんかすごい勢いで消費するだろう。
だから本当の高級店以外では明かりの魔道具なんか一つが普通で、二個あれば中級の店だ。
あのエメラルド公爵クラブ迎賓館ですら、待合室はともかく、娼婦と遊ぶ個室ではランプを使っている。
氷室を使う冷蔵庫は一般的なので氷屋における氷の需要も高い。
水魔法と火魔法を高レベルで使える魔術師はアルバイト代わりに氷屋に氷を売って生活費の足し(一tあたり一〇〇〇Zくらいで売れるそうだ)にすることもある。
実用レベルで売るにはMPを八も使う上に元素魔法だけなので経験値は小数点以下何桁というレベルでしか入らない(魔法の特殊技能はレベルが上がるほど単に元素魔法を使うだけだと経験値は入りにくくなっていくのだ)からあまり割のいいアルバイトとは言えない。
引退した元冒険者が一人あたり毎日数t売っているくらいだ。
冷蔵庫の密閉技術なんかも稚拙極まりないので普通の2ドア冷蔵庫(上部の小さい扉の中に冷却用の氷を入れる)で四〇~五〇㎏くらいの布に包んだ氷を使うが、夏だと二~三日、冬でも二週間くらいで溶ける。
冷蔵温度も一〇℃前後といったところなので、その性能は魔道具の冷蔵庫とは比べるべくもない。
こういう事情もあり、バルドゥックは王都の隣にあるだけに、魔石の需要が高いのは有り難い事だった。
ウェブドス侯爵領の首都、キールなんかだと田舎過ぎてこうは行かなかったろう。
だから貴族や金持ち、飲み屋などが多い場所じゃないと沢山は売れないんだ。
俺たちも王都の店の営業時間の延長に貢献していると言う訳だ。
また、最近知ったのだが、契約の時に使う魔石の粉。あれをたくさん用意する。
普通の堆肥で作った肥料に微量に混ぜると作物の生育、と言うか、作付面積あたりの収穫量もある程度増加するらしい。割合は0.001%くらい。
一tの堆肥を作るなら普通の肥料に一〇〇gくらい(手間を別にすればゴブリンの魔石なら五〇個、末端価格七~八万Zくらいの量で作れる)混ぜるって感じだな。
この肥料を畝を作るときに一〇倍希釈くらいで使い、麦の苗が一五㎝位の時に二〇~三〇倍希釈したものを苗に当たらないように畝の間に撒く。
肥料の使い方自体は普通の農業と全く一緒だ。
こうすると収穫量は5%近くも上昇するそうだ。
一tの堆肥で一・五haくらいの畑に使えるからこれはでかいよな。
昨年これを知った時にはあと一〇日くらいで兄貴も来ると言うのに、興奮して実家に手紙を書いちまったくらいだ。
国の領土省主導の一〇〇年越し、最新の研究成果らしい。
トリスも俺と同様に喜んで実家に手紙を書いていたが、ベルはフーンと一言言ったっきり、興味なさそうで俺もトリスもその態度には鼻白んだものだ。
皆で夕食を摂り、食料が限られているためおかわりをギベルティに却下されたラルファがふてくされているのを見ながら、ミヅチと今回も稼げそうだと話し合っていた。
その後はシャワーを浴びたりお茶を飲んだりして少しゆっくりと寛ぎ、明日に備えて早々に休んだ。
・・・・・・・・・
『……まだ震えが止まらない……こ、怖いんだ……』
『最初だから仕方ないかもね……私も最初は怖かったし……』
夜中、ぼそぼそ言う話し声に目を覚ました。
小便でもしてこようか?
毛布にくるまりながら暖かい毛布から出るのは嫌だと体が言っていたが、意識したら結構もよおして来た。
仕方ねぇな……ん? 日本語?
『ま、魔物を刺した感触が消えないんだ……』
『あんまり気にしても……』
『うん、それは判ってる。判ってるつもりなんだ……でも……』
『まぁ、気持ちは判ります。寝られそうなら寝ちゃってもいいですよ。温かい飲み物とか用意出来れば良いんですが、私、水魔法使えなくて……すみません』
『あ、いや、大丈夫。そう簡単に眠れそうにないし、話を聞いてくれるだけで嬉しいよ』
『そうですか……なら良いんですけど……』
『金稼がなきゃいけないしな……稼いでキャシーを迎えに行かなきゃ……』
『そうですよ、頑張ってください』
『ああ、そうだよね。頑張って稼いで、結婚するんだ。あいつを幸せにしてやるって……』
『奥さんが羨ましいですよ』
『ははっ、まだ結婚してないし、奥さんは早いよ。でも俺は皆と、日本の人達と出会えた事が嬉しい……奴隷から解放して貰って、割のいい仕事まで貰えて……』
見張り当番のグィネとバストラルか。
今日は俺とゼノムが最終当番で、その前が彼らの筈だから、今は二時から四時の間か。
『ファルエルガーズさんも、ヒーロスコルさんも悪い人じゃないと思うんですけどね。アルさんはなんで誘わなかったのかなぁ……』
『そうだね。俺も彼らには恩があるから一緒に働いてくれると心強いとは思うけど、彼らは騎士だったみたいだし、ロリック、ファルエルガーズさんは伯爵の長男だし、ヒーロスコルさんは元々相当なお年寄りだったらしい。最初にあんなことがあったんだし、頭を下げづらいんじゃないかなぁ……』
なんだ、あのタイガーマンの騎士は老人だったのか。
道理であんな言い方をして来た訳だ。
周りが皆、小僧に見えて仕方ないんだろう。
加えて気持ちも若くなっているだろうし無理からぬ話だなぁ。
『ところで、この前言ってた……その……国を作るってことなんだが……』
『はい?』
『正直な話、俺にはよくわからない……気を悪くしないで欲しいんだが、目の前のことで手一杯で他の事まで気が回らないんだ』
『サージさんの今までの状況を考えたらそうでしょうね。仕方ないと思いますよ』
『だからさ、フィオ、ヒーロスコルさんがそんなの出来っこない、騙しているんだと言った時も俺は何も言えなかった。勿論、常識で考えたら無理だとは思うよ。でも、全くダメだとも思わないんだよね……』
『どういうことですか?』
『だってさ、爆弾も飛行機もない世界で戦国時代みたいな程度の戦争しかしてないんだろ? やり方によっては出来るんじゃないか? って思うさ。俺も男の子だからな……』
『ん~、私はどっちでもいいんです。サージさんなら解ると思うんですが、両親がモンスターに殺されて、どうしようって思ってたので、お金稼げるだけで問題ないんですよね……』
何言ってんだよ……こんなとこで。
それより小便どうしよう。
起き難くなった。我慢してて途中から話なんか殆ど聞いてねぇよ。
『だよなぁ……まずは食っていかなきゃ話にならないし……。あ、そうそう、今日の魔石って売ったら一千万行くって本当?』
『あの大きさと色で十五個もあれば行くんじゃないですかね?』
『くっ……やった……一日で十万以上稼げたって事か……すげぇな……本当に夢みたいだ』
『頑張れば倍になるじゃないですか』
『そう! それな。本当に凄いよ……毎日二十万ならたった一月で六百万だ。借金返してキャシーを買える……それどころかその後も金持ちになれるじゃないか……』
『……流石に毎日七層とか無理ですよ……』
『そうかなぁ? だって、アルさんって六層まで奴隷と二人だけでいけるんだろ? 今日だってすげぇ魔法でオーガを一発だったじゃないか……楽勝だろう?』
『それはそうですが、あの人は特別です。皆、必死なんですよ。第一気持ちが持ちません。今回だって年末年始の休みと八層以降の予行演習の意味もあるんでしょうけど、本音を言えばこれからかなり疲れると思いますよ』
『あ……ごめん……そうだよね。俺、なんにも役に立ってなかった……。ここに来るまでもミヅチさんが氷とかで動けなくした魔物を突いてただけだし……皆で弱らせたオーガの止めを刺すくらいだった……しかもそれなのに俺はびびって……女の子もいるのに……』
『最初だから仕方ないですよ……私だって最初はこんな深くまで来なかったのに、バストラルさんはいきなり七層ですからね。怖がるのも仕方ないと思います』
むふぅ……膀胱が破裂しそうだ。
話的にもそろそろ起きてもいいだろうか? いいよな?
「う……ん……」
今起きましたよ、という顔でごそごそと毛布から出ると急ぎ足にならないように気をつけて部屋を出た。
通路に入り、もう見えないと確信すると、内股になってぷるぷる震えながらなんとか土を盛り上げた場所まで移動する。
勿論数秒を惜しんで移動しながら股引をズリ下げている。
トイレに到着し次第、ダムの放水の時間だ。
……ふぅ……。
最近、微妙に先端から頭を出し始めた我が息子をしまうと手を洗って、部屋に取って返した。
「……おはよ……何時?」
「おはようございます、アルさん」
「お、おはようございます」
眠そうに聞こえるように言うと水筒に煎豆を入れて熱湯を注ぎ、三人分の豆茶を淹れた。
「三時半くらいです」
グィネがコップを差し出しながら答えてくれた。
なんだ、あと三十分で交代だったのか。
「もうすぐ交代か……これ飲んだらシャワー浴びてくるわ……」
バストラルも喜んでいるし、稼がないとな。
勿論、目標達成のためだ。
■文中に出てくる北部遊撃レンジャーは、2009年(平成21年)度から冬季遊撃レンジャーとなり、部隊レンジャーから格上げされているようです。昔は北海道の方面隊の部隊レンジャー資格でした。
ゴムは冷蔵庫の内壁と外壁の間などもそうですが、特に扉のパッキンに使えば性能も少し上げられるでしょうね。天然ゴムなので冷えて硬化するとは思いますが何も使わないよりはマシなんじゃないですかね。
また、メッセージ(最近読み始めていただいた方に多いと思います)やご感想(こちらは昨年が多いです)などでよくご指摘を頂くのですが、主人公はゴムなど知識を活用している部分もありますが、現代の技術を再現しようとか品質を現代のもの同等にしようなどと思っていません。出来るとも思っていないのです。今ある物より優れていさえすればそれで有効だ、と考えているだけです。




