第五十六話 四層
7443年8月23日
見張りを終え、最後のゼノムとベルを起こして再び休んだのが午前三時くらい。
そして起こされたのが午前五時だ。
野営の荷物を片付け、床に敷いた土を消し、各自装備を確認し終わり、四層への転移の水晶棒を握っている今は五時半くらいだろうか。
相変わらずわけのわからない転移の呪文を唱え、四層へと足を踏み入れる。
四層は二層のように湿気があり、床や壁なども一層と二層に近く、土と石で出来ている。
あと、臭い。
すっごく臭い。
明かりは相変わらず床や壁面がぼうっと光るので必要ない。
グィネがすぐに【地形記憶】の固有技能を使い、過去に来た事があるか、それとも未知の場所なのか判別する。
「ここは初めてのようですね」
そうか、なら地図の空白を埋めるいいチャンスだ。
グィネの言葉を聞くと、皆すぐに水晶棒の台座の紋様の方向を探し始める。
四層ともなると数字を見付けるのは半々くらいの確率だ。
「よっ……と。北はあっちね」
ラルファも【空間把握】の固有技能で方角を確認している。
俺も探したが数字は見つからない。んじゃ137番な。
「ベル、137な」
俺がベルに言うと彼女はリュックサックを降ろし、筆とインク壺を出した。
台座の紋様が指し示す方向の壁に「壱参漆」と書く。
他のパーティーに読めないように漢数字の大字だ。
最初にトリスとベルがこれを提案してきたときは感心した。
それまでは深く考えずにオースの数字で書いていたのだ。
アラビア数字や普通の漢数字も考えたのだが、字の構造が単純すぎるのですぐに規則性を見破られそうだから仕方ないと思っていたのだ。
ちなみに、今さっきは漢数字の大字だけで書いていたが、別に「百三十七」と書いてもいいし、「壱百3十7」でもいい。
他のパーティーに読めなければ何でもいいのだから。
その証拠によくわからない記号を発見する事もある。
多分数字の代わりに暗号で書いているんだろう。
ベルが数字を書き終わり、道具をしまったのを確認したら、通路に風を作り出し、一層と二層のような隠蔽された落とし穴の発見に努める。
なお、四層のモンスターは一層から三層との共通点は全くない。
オークもホブゴブリンも出てこない。
出てくるのはそれらのゾンビだ。
ゴブリンゾンビ、ノールゾンビ、オークゾンビ、ホブゴブリンゾンビになっており、俊敏がかなり低くなっている代わりに耐久が何倍にも跳ね上がっており、仕留めるのにそれなりの時間が掛かるようになっている。
結局、腐りかけた死体が動いているので、戦闘時や魔石を取る時の臭気はそれはもう、筆舌に尽くしがたいものがある。
HPが高いので経験値も増えていると思いきや、レベルは一とか二とかに落ちているので思ったほど経験値は入らない。
それでもHPが高い分ゾンビじゃない相手より多少ましになってはいる。
部屋の主はグールって奴が殆どで(実はそれ以外見たことない)、大抵十匹以上の集団で襲いかかってくる。
こいつの攻撃には、スカベンジクロウラーのように喰らった相手を麻痺させる能力があり、かなり苦戦する。
しかし、解麻痺の魔術の練習を重ねてきたおかげか、俺たちの場合、そう苦労することはない。
まぁぶっちゃけた話、フレイムスロウワーの魔術が使えるならあっという間に焼き殺せる。
経験値の問題があるので、基本的には下半身を氷漬けにしてただ振り回すだけの武器を冷静に叩き落とし、腕を切り落としてからタコ殴りにするだけなので正直今までとあんまり変わった所はない。
見た目が気持ち悪いので全員四層には嫌気がさしている。
転生者は女性も含めこう言った世界ならゾンビだのグールだのいずれ出てくる事は予想していたし、四層はアンデッドモンスターの巣だとの事前情報もあったので覚悟を決めていたからパニックになるような事はなかった。
しかし、エンゲラだけは「動く死体」に嫌悪感が酷く、しょっちゅう吐いていた。可哀想だが仕方がない。
ゾンビだのグールだのは臭いも酷いのだが、階層自体に漂う空気の臭気も酷く、エンゲラの【超嗅覚】もあまり役に立っていない。
【赤外線視力】も温度差を感じ取る能力なので全く役に立っていない。
アンデッドモンスターの体温は周囲の気温と大差ないからだ。
僅かにズールーの【夜目《ナイトビジョン】とベルの【超聴覚】に引っかかることもある程度だが、アンデッドモンスターは普段あまり動き回る事も無いようで、正直な話、俺の【鑑定】の視力以外、ほぼ役に立たない。
まぁズールーの【夜目】があれば通路の明かりで見えるより少しばかり先も見えるようだし、ゾンビになる前の生きている時のような突進力も失われているようなので奇襲を受ける事もまずないのは助かる。
風を送って落とし穴の偽装の土を跳ね飛ばしながらそろそろと進んでいく。
この階層から落とし穴の底には殆ど全て木製の逆茂木が植え込まれている。
また、三層から数の増えてきた矢が放たれる罠も増えてきた。
曲がり角が見えるか見えないか、と言う程度の正面の壁から三〇~四〇mほど離れた場所の床にはほとんど必ずと言って良いくらい弩を発射するスイッチが床に隠されていた。
これは落とし穴同様に風を送る事で容易に見つけられるので俺たちにはあまり脅威ではない。
それよりも辟易としたのは隠し扉だ。
通路に立っているゾンビは別にいい。
動きがトロい分、体力が多く、すぐに倒し難い事を除けば今までの延長だ。
だが、迷宮内各所に巧妙に隠された隠し扉は厄介だった。
俺達が隠し扉を通り抜けてから数十秒~一分程でそっと隠し扉が開き、ゾンビがわらわらと出てくるのだ。
【鑑定】で見つける事は出来るのだが、そうでない限りは相当傍に寄った上でかなり注意深く見てみないと非常に解りづらいのが厄介だ。
初めて見た時は土と石の壁に扉があるとは想像もしておらず、思わず【鑑定】してしまった。
まぁ【扉】と出たのですぐに理解できたのだが、その隠し扉を発見した時、俺は隊列の真ん中程にいたのだ。
仕方ないので、ある程度まで傍に寄った時に、
「なぁ、あの辺、変じゃねぇか?」
と言う事しか出来なかった。
後で冷静に考えれば無駄でも風魔法を再度使って「あそこが今動いた気がした」とか言う方が余程自然だった。
当然ながら【鑑定】していない状態で見ても周囲の壁と見分けが付かない。
だが、やっとの事で違いを発見出来た。
地上から一五〇㎝くらいの所に細長いスリットが空いている。
俺の場合、扉全体が【鑑定】の固有技能のおかげで輝度が上昇していたから気付けただけなんだけど。
その時先頭にいたベルを差し置いて、真っ先に扉の傍まで寄った。
何が起きるにしても俺なら対処可能だろうし、HPも多い。
おまけに一番防御力の高いゴムプロテクターを装備している。
扉の向こうにモンスターが潜んでいるというのが一番可能性が高いが、ノブがあるわけではないのでスリットから距離を開けてそっと覗いてみた。
予想通り、ゾンビと化したオークの目玉と目があった。
「何かいる」
そう言って銃剣を構え直し、皆に用心を伝える。
警戒した俺たちがいつまでも扉の傍からどかないのでオークのゾンビも出て来ない。
近くまで寄り、注意深く見ると隠し扉は誰にでも判別は出来るが、そこにあると聞かされていなければ見過ごしてしまう程度には巧妙に周囲の壁に溶け込んでいる。
根競べの様相を呈したので、皆をゆっくりと前進させ、最後尾で後ろを警戒しながら通り過ぎたところ、一〇m程度離れたところでゆっくりと扉が開いた。
オークのゾンビがわらわらと隠し扉の中から出て来たので、一気に下半身を氷で固めた。
全てのゾンビを片付け、隠し扉の中を調査する。
中は四m四方くらいの小部屋になっており、腐汁や肉片が落ちている以外、異常はなかった。
見張り役がスリットから外を監視し、獲物が通り過ぎたところで後ろから不意打ちをかけるのだろう。
恐ろしい罠だった。
【鑑定】がなければ確実に一回は最後尾に奇襲を受けていた筈だ。
そのタイミングが運悪く戦闘中だったりしたら全滅も見えるかもしれない。
とにかく、この罠の発見は困難だ。
今までは床だけを注視していれば良かったのに、壁のスリットまで発見しなければいけなくなった。
そのため四層はグィネに地図を作って貰った場所以外は全く油断出来ず、特に初めて足を踏み入れるエリアは今までの階層と比べて大きく神経を磨り減らす階層であった。
勿論、【鑑定】の目で見れば一発なのだが、警戒しながら進む癖をつけることは大切なので、俺は気付いても敢えて放置していた。
だが、全員目を皿のようにして監視しながら進んでいたためか、一つも見逃す事なく発見していった。
一度実験と称して発見した隠し扉の前にズールーに命じて用意させていた杭を打ち込み、扉が開かないようにした事があった。
その後全員で警戒しながら進んだのだが、その扉は内開きだったようで、何の意味も無かった。
そのうち引き戸タイプも出るのか?
こうして来る日も来る日も四層の地図を作成していたのだ。
今日もその延長ではあるのだが、予想では四層の七割ほどが埋まったので可能なら五層を目指してみたかった。
だが、せっかく未踏破のエリアに転移したので空白を埋めるチャンスだから出来る限り地図作成をしておくことにする。
五層には行こうと思えばもういつでも行ける。焦ることはない。
迷宮の四層に足を踏み入れてからもう三時間以上が経過したろう。
隠し扉や罠を警戒しながらもそれなりに歩き回った。
もうこれ以上の調査は一度途中の別れ道まで戻り、その先にあると思われる部屋を進むしかない。
皆にそう伝え、心を引き締める。
グールしか見掛けていないが、四層の部屋の主だけあってかなり強いモンスターだ。
下半身を氷漬けにされながらも腕を振り回し、こちらに麻痺を与えようとしてくる。
タイミングよく武器を振り下ろし、腕を切り落とすことが大切だ。
大きなダメージを与えるのはそれからでも遅くはない。
最初の部屋にはグールが九匹いた。
ちょっと少ないがその分楽なのは確かだし、歓迎だ。
いつも通りグールの群れを撃破してその先に見える通路の一つを選んで進む。
また一時間程して別の部屋を見付けた。
そろそろと中を窺ってみると、予想に違わずやはりグールが巣食っていた。
先程と同様に撃破して更に先を行く。
道が二つに分かれるT字路にぶつかった。北には数十mで部屋があるようだ。
グールの群れが見える。
南にも数十mで別の部屋があるようだ。
こちらは一見すると部屋にモンスターはいない。
まぁ、地図を作成してる途中なのだし、時間を取られても仕方ない。
主がいないのなら通り抜けるまでだ。
きっと復活前なんだろうよ。
そう言って南の空の部屋へと移動する。
今までの部屋と特に変わったところはない。
部屋は五〇m四方くらい。いつもの主が巣食っているでかい部屋だ。
俺達が入ってきた北側の壁の正面に通路が伸びている。
東側と西側には通路はない。
部屋の各所に以前の犠牲者のものだろうか、白骨が散らばっている。
主がいないのだから俺たちが通る前に別の冒険者に駆除されたばかりなんだろう。
今更漁っても戦利品や魔石が残っているなんて甘い話があるわけ……あるじゃんよ!?
「おい、あれ、槍だよな? あっちには剣と盾も残ってるぞ」
俺がそう言うと皆も吃驚したようであちこちを見回した。
「あ、あれも剣ね」
「お、いい感じに残ってるっぽいな」
「あれ、槍ですかね」
「いいじゃないですか、拾いに行きましょう」
「そうだな、手分けして拾っていこう」
「アル、ボーナス宜しくね」
「おうよ」
そう言ってそれぞれが部屋の各所に散らばった戦利品を回収しに行く。
俺も東北の隅に落ちているらしい剣と盾を回収しに動いた。
大漁だ、こりゃ。
笑みがこぼれる。
……しかし、装備品がこれだけ残っているのであれば、この部屋を通った冒険者たちはよほど急いでいたのか、戦闘を避けて主を引き連れたまま部屋を通り抜けたのだろう。
と、すると危険だ。
主は部屋から一〇〇m以上離れる事はないという。
冒険者たちがそれ以上の距離を逃げ切ったのであれば戻ってくるのが道理だ。
「気をつけろ、主が戻ってくるかも知「うおっ!!」
俺の声はトリスの叫び声にかき消された。
反射的に声のした方を見て仰天した。
主は冒険者を追いかけて行ったのではない。
元々部屋に巣食っていたままだったのだ!
ああ、散らばっていた骨が起き上がって骸骨戦士のように武器を構えた訳じゃないぞ。
アンデッドモンスターの巣だという四層だからそういう敵もいるのかと思って最初は警戒していたが、最近はそんな敵はいないだろうと予測していた。
何しろ骸骨には魔石を格納しておく肉体はないからな。
根拠は薄弱だが、魔物には魔石があるのが定石だ。
で、魔石はほぼ全ての魔物の心臓の傍にある。
頭骨の中に心臓でもあれば別かもしれないが、そうじゃなきゃ魔石の保持が出来ないだろうから骸骨の魔物はいないだろうと予測していたんだ。
少なくとも今のところそんなモンスターには出会っていないし、仮説は正しいと思われる。
今出てきた部屋の主はそんなのとは全然違う奴だ。
天井から部屋の真ん中に落ちてきたらしい。
裸の男に見える。
【エミリオ・ジョバーゲ/18/7/7209】
【男性/14/6/7208・普人族・ジョバーゲ家次男】
【状態:ヴァンパイア】
【年齢:34歳(232歳)】
【レベル:16】
【HP:236+198(236) MP:59+46(59)】
【筋力:46(23)】
【俊敏:44(22)】
【器用:40(20)】
【耐久:50(25)】
【特殊技能:吸血】
【特殊技能:麻痺】
【特殊技能:石化】
【特殊技能:精力吸収】
【特殊技能:地魔法(Lv.4)】
【特殊技能:火魔法(Lv.3)】
【特殊技能:風魔法(Lv.3)】
【特殊技能:無魔法(Lv.5)】
何だ! こいつ!? やばい奴だ!
いや、裸だからヤバいって訳じゃないぞ、勿論。
「逃げろ!」
俺は叫ぶが早いか、味方ごと奴の周囲に氷を張った。
トリスも二m程は移動出来たようだ。
彼が一番近いが、それでも五m以上の距離がある。
氷に巻き込まれた仲間が誰で何人なのか考えている暇はない。
すかさずストーンジャベリンを撃ち込む。
絶対に俺の方が早く奴の頭部を潰すのだ!
石の槍が超速度で飛翔する。
奴は右手をこちらに向けている。
氷漬けにされた時にはもう、そうしていたのか?
だが、遅いわ!
今から魔術が間に合うもんか!
同時に俺は駆け出す。
もちろん目標である奴の頭部を睨みつけたままだ。
と、奴の右手から魔術が放たれた!
早いな。
奴の魔術もストーンジャベリンのようだ。
俺と奴のジャベリンが交錯し、奴のジャベリンは俺のジャベリンに弾かれる。
しかし、俺のジャベリンも狙いを外され、奴の左肩を抉り取って後ろの壁に突き刺さる。
クソッ! ミサイルにしときゃ良かった。
走りながら再度魔術を使った。
今度こそ!
ファイアージャベリンミサイル!
五発同時に飛ばす。
俺の右足が氷の上に乗る。
右足に力を込め、体全体を引き上げる。
五つの炎の槍が五角形の頂点を保ったまま奴の頭部と胸部めがけて飛翔する。
奴はまだ次の魔法を発動出来ないようだ。
このまま勝てる!
頭部を焼き尽くし、残った炎の槍四本で胸に風穴開けてやる!
「むおぉぉぉ!」
鬨の声を上げ、奴の注意を俺にだけ惹きつけるようにする。
よし!
あれ?
もう少しで炎の槍の五角形が一番上の頂点を顔のど真ん中に、残り四本が胸に突き立つ、という瞬間、それは起こった。
奴の頭部が右にズレ、胸に槍は突き立ったものの、顔に突き立てることは出来なかった。
高速で飛翔していた槍はそのまま壁にぶつかり炎を散らして四散して消えた。
いかなミサイルとは言え超高速を誇る俺の槍は早過ぎて制御しようにも目標までにそれなりの距離が必要だ。
今のは命中寸前に奴の頭がズレたのが原因だ。
奴の頭の左には手斧が突き立っていた。
あと、矢も左のコメカミに刺さっていた。
ゼノムか?
いや、ラルファとベルかよ……。
馬鹿。
注意がお前らに向いたらどうすんだ。
氷漬けなので電撃は危険すぎる。
火の玉もこいつにダメージを与えるにはトリスが近すぎる。
よし。
銃剣を放り出し、両手を奴に向け、瞬時に集中する。
分解!
膨大な魔力を感知したのか、こちらに目を向けた瞬間、奴は塵になった。
出来れば使いたくなかった。
散々修行を重ねてはいたが、魔石まで原子に分解しちまう。
俺の取って置きの魔術だ。
銃剣を拾い上げ、アンチマジックフィールドで氷に下半身を固められた仲間を解放する。
戦闘時間はせいぜい五秒くらいだったろうし、幾らなんでも凍傷にまではなるまい。
ズールーとエンゲラ、グィネ以外が氷漬けになっていた。
ラルファが申し訳なさそうな顔で俺を見ていたが、こいつはこいつでよく咄嗟に動けたもんだ。
しかも下半身の踏ん張りが利かない、上半身しか自由のない状態で、よくもまああれだけ正確に斧を投げつけられたな。
ベルは射撃感覚もあるだろうから正確に撃ち抜けるだろうけどな。
ゼノムは斧の半分が氷漬けになっており、投げられなかったのだろう。
「怪我はないか?」
全員を念の為に【鑑定】しながら聞いてみる。ベルのMPが何故か二減っている。ラルファもMPが一減っていた。
全員、異常は無いようでホッとした。
その後時間をかけて氷を全て消し、戦利品を回収した。
両手持ちの大剣が二本、両手剣が二本、長剣が九本、段平が七本、歩兵用の剣が四本、各種の盾が八つ、槍などの長柄武器が十三本。
かつて無いほどの大量の戦利品だった。
なお、経験値は三万以上入った。ラルファとベルも一〇〇〇程増えていたようだ。
分解の魔術は全属性のレベルが三以上で使える。
但し、MP一五を使用する最低の分解だと体積一〇㎝立方、つまり一リットルくらいまでの物体しか分解できない。
普通は敵の持っている武器に対して使う魔術だ。
生き物なんかに使った場合、分解の効果以上の体積の相手にかけても何の効果もない。
さっきはおっかないので二〇〇倍、つまり二〇〇リットルまでの体積を消せるようにした。
やつの体重や体積なんか解らないし、とにかく怖かったんだ。
MPで三〇〇〇も消費している。
俺でさえ連発は難しい攻撃だ。
奴がデブじゃなくて良かった。
ラルファが「あの手斧、ゼノムに買って貰ったのに……」とか言っていたが聞こえないもんね。




