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印描師  作者: 風妻 時龍
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14.『終幕』

14.『終幕』


 結局、風鶴は隼那と結婚した。その話を、最も強引に進めたのは、桃姫だった。

「私も結婚して子供をお父様に見せなければなりませんし、お二人には早く結婚していただかなくては。自分の子供に、年下の叔父がいるなんて、複雑な家庭環境は作りたくありませんから」

 とは、桃姫の弁だった。

 それに少し遅れて、虎獅狼と鵬粋も結婚することになった。虎獅狼は、気持ちを抑えきれず、緋浦に相談した結果、「知るか!」と怒鳴り飛ばされ、困った挙句、いきなり求婚して、鵬粋が「仕方ない」と答えたらしい。

 桃姫に、未だ善き人は無し。ただ、翠林族の豊かな暮らしの礎を作るため、武蔵族の技術を出来る限り提供する緋浦とは、傍から見れば良い仲に思われ、風鶴をひやひやとさせている。ただ、その話を、緋浦は徹底的に否定している。「体良く使われているだけ」との弁だが、快く協力している節も見られる。

 陣央は、翠林族の大長に、聖印の代わりとして譲られ、陣描術が新たな翠林族の聖なる儀式として、広められ始めた。風鶴曰く「陣描術は、星の起こす災害の源となる力を分けてもらうものとしての役目がある」と言い、災害を減らすために、積極的に使うようにと伝えられていた。

 聖印はすぐに全て処分され、最後の十三番目の聖印も、陣の力の無効化を繰り返すことによって消滅させた。

 結局、風鶴と隼那の間に子は授かることはなく、風鶴が逝くことになる。原種という強靭な肉体をもってしても、千年の魔法の眠りは、相当な負荷を肉体にかけていたようだった。

 隼那は元の集落に戻ることはなく、桃姫の補佐を務めた。

「なあ、風鶴」

 緋浦は風鶴の墓の前でしゃがみ、呟いた。

「見えるか?お前の護った世界だぜ?」

 翠林族の地で、最も高い山の中腹。緋浦が、「世界を見渡せるように」とそこを選んだ。

「美しいだろ?

 ……いつまでも、しかめっ面すんなよな。

 隼那、また泣いてたぜ?

 虎獅狼なんて、厄介な奴を放っていきやがって。勝手に俺の弟子を名乗ってるんだぜ?

 ……お前は、この結果に満足か?」

 墓には、『世界で最も高い地位点を与えられた法筆』が供えられていた。

「全く。

 肉体が悲鳴を上げていただろうに。黙って耐えていやがって。

 桃姫は気付いていたぜ?俺も聞いていた。

 ……ホントに、役目だけ果たしていきやがったな」

 持ってきていた酒を一口啜り、残りを墓標にかけた。

「……強い娘だな。涙の一つも見せたことがねぇ。

 さて。

 俺も、そろそろ解放してもらおうか」

 立ち上がり、武蔵の地の方角を眺める。

「世の中には、未知の技術がまだまだありやがる。

 しばらく、楽しませてもらうぜ。

 俺らが楽しむのも、一つの供養だろうが」

 最後に墓標にこう語りかける。

「またな」

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