第一章:隣り合う絶望と「観客」の影
あの日のあの夜以降、藤原家の食卓には奇妙な沈黙と、それ以上に異様な「儀式」が持ち込まれていた。
佑三さんは、僕たちが互いを貪り合った夜を克明に記録した動画を、大型テレビの画面に映し出しながら朝食を摂っていた。
「自分の動きを客観的に見るのは大事なことだよ。ほら、恵理。この時の顔、すごくいいよ。自分がこんな声を上げている自覚はあったかい?」
恵理は俯き、震える手で味噌汁の椀を握っている。
母さんは、まるで魂が抜けたような顔で、佑三さんの皿に焼き魚を並べていた。
テレビの中では、僕が母さんを押し倒し、獣のように腰を振る姿がループ再生されている。
佑三さんは箸を置き、画面を指さして鼻で笑った。
「純一、腰使いが雑すぎる。もっと深く、もっとゆっくり味わうように突かないと、由美のいい反応が出ないだろ。これじゃ観客が満足しないな。」
彼はリモコンを手に取り、再生を止めた。
佑三さんは母さんを呼び寄せ、ニットシャツの上から胸を大きく揉みしだく。
「純一、お前もこっちにきて、由美を気持ちよくしてあげなさい」
彼はそう言うと、由美のスカートを捲り上げ、両足を大きく広げた。
「さぁ、今ここでやり直すんだ。もっと丁寧にやってみなさい。」
佑三さんは椅子に深くもたれると、腰を上げてズボンを脱いだ。
「その前に、恵理。お前は私のこれに奉仕しなさい。口でしっかり起こして、私が満足するまで離すんじゃないよ。」
恵理の肩が小さく震えたが、逆らうことはできなかった。
彼女はテーブルを回り込み、佑三さんの膝元に跪く。
佑三さんは恵理の髪を掴んで導きながら、僕と母さんに向かって顎をしゃくった。
「純一、もっと手と舌を使って……そう、そうだ。いいぞ!…由美は息子の朝立ちを握って、優しく扱いてあげなさい。……ほら、ちゃんとカメラに映るように顔を上げて。」
こうして、食卓は一瞬にして淫らな舞台へと変わった。
恵理のくぐもった吐息と、母さんの掠れた喘ぎが重なり、僕の荒い呼吸がそれに混じる。
そして、佑三さんも満足げに息を吐きながら、恵理の頭を上下に動かさせていた。
「いいぞ、みんな。自然でいい。これが家族の朝の挨拶だよ」
やがて彼は恵理を離し、スマホを手に取った。
「今日から、家の中の各所に増設したカメラが稼働している。脱衣所、トイレ、お前たちの自室…死角はないと思いなさい。そして――」
佑三さんはスマホを操作し、ある画面を僕たちに見せた。
そこには、あの夜彼が言っていた掲示板の「予約ページ」への反応が、数字となって現れていた。
「『公開希望』のポイントが、数日で一万を超えていた。世界中の人間が、お前たちの醜態を待ち侘びている。もし、私のルールを一度でも破れば、即座に『公開ボタン』を押す。…分かったね?」
僕たちは、もはや頷くことしかできなかった。
家という安らぎの場は、二十四時間監視される「スタジオ」へと変貌したのだ。




