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コーヒーって苦いよね。


 頭がそろそろ糖分を欲している。カフェオレでも買いに行くか。そう思って椅子を立つ。思ったよりも進んで余裕がある。


 自販機にお金を入れてボタンを押そうとした瞬間、後ろから肩を叩かれた。


「どひゃん!?」


振り返ると、光島さん。お昼食べたからか、いつもより機嫌がいい気がする。眉がちょっと寄っていないような…。


 ガタン!


「のわっ!」


 光島さんが何かを言う前に、自販機の下から音がした。慌てて取り出し口を見ると、青い缶。


 あちゃ〜…。コーヒー押しちゃった。


「光島さん、どうしたんすか」


「いや、お前を見つけたからつい。…その間抜け面はどうした」


間抜け面でしたか!?


「いや〜、間違えてコーヒー買っちゃって…」


言いながらプルタブを引き上げる。うん、香りは好き。


 前に飲んだの二年くらい前だし苦手も克服できてるだろう。そう思って黒い液体を口の中に流し込んだ。


「に、苦っ!」


「…、まあ、コーヒーだからな…」


咳き込む俺を、なんだコイツという目で光島さんが見ているのがわかった。落ち着け、と背をさすられる。


「大丈夫か」


「だめでふ…」


綺麗に畳まれたハンカチで、目と額を拭われた。


「相当苦手なんだな」


「恥ずかしながら…」


そもそも俺は甘党なんだ…。そして俺の体はカフェオレ受け入れ態勢だったから、まさか苦いのくるとか思わなくてパニックったようだ。


「うう…」


やばい、超恥ずい。


 やっと頭が冷静になった。コーヒー苦手なのバレたし、絶対呆れられてるって…。


「お前、ほんとDom感しないよな。あ、嫌だったら悪い」


くす、と笑って光島さんが言った。そのままカフェオレをピッピッと買い、渡してくる。


「お前のあんなDomの姿を知ってる人って少ないんだろ?ふは、得した気分」


笑いながら俺の手を引き、ベンチに座らせてくれる。カフェオレを渡された。


「なんか俺が原因っぽいし、それやるよ。あとちょっとだから頑張れ」


そう言って去っていこうとする光島さん。やっぱかっこよすぎる上司だ。やたら機嫌いいし。


「これ、もらってくれませんか…?」


おずおずと手に持ってたコーヒーを差し出すと、まあいいけど、と受け取られた。その顔がちょっと赤い気がしたけど、気のせいかな。


 職場に戻ると、隣の席の早乙女が袖を引っ張って肩を寄せてきた。


「ねぇねぇっ、光島さん真っ赤じゃん!何したの?キス?」


「なんでそんな選択肢になったん?」


ワクワク顔。早乙女は同期で、口も堅い方だ。


 光島さんがSubであることや仮とはいえパートナーになったことは黙ったけど、かなり全部話した。


「はー、いいね。恋する男子だねぇ」


「おばちゃんっぽいぞ」


「二十代の乙女に何言ってんのよアンタ」


脛を蹴られた。い、痛い…。


「もしかしてさぁ…。光島さん、間接キス意識しちゃったんじゃないの?」


「っっへ!?」


「声がでかいわ」


また怒られた。…え、えっ!?俺の頭は軽く混乱中である。


「か、間接…っ!?」


「…アンタも恋する男子だったわ」


そっか、そうじゃん!俺、飲んだじゃんっ!ぶわわ、と顔が熱くなる。


「おい、どうした」


上から声が降ってきた。


「みっ、光島さん!きす」


「バカか!」


頭と肩が上と横から叩かれる。見事な連携プレー…。


「いいよ、別に気にしてないし…。お前も気にすんな」


そう言って、光島さんは青い缶を捨てに歩いて行く。


 気にしてない。そう言ってたのに、俺から見える耳が、真っ赤だった。そして、たぶんだけど、俺も一緒だ。




 

攻めと受けに上下関係がありすぎないのも好きだったりする作者の完全なる好みの創作です。ハイ。


ちなみに作者はコーヒーは飲めるけどカフェオレの方が好きです(どうでもいい)。光島さんはブラックがお好き。



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