表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/28

違和感。

注意:【暴力的な描写】を含みます。





 最近、光島さんの様子がおかしい。いや、ここ数日なんだけど。


 なんとなく顔色が悪い気がするし、ご飯全然食べてない。それにめちゃくちゃ避けられてる。


 俺、なにかやらかしただろうか。


 もしかして、あのとき手を繋ぎたくなかったとか!?


 確認しようにも話せないから、一人で悶々としてるだけだ。近づくとすすすすっと逃げられる。


 何かしましたかと聞いても「別に」しか返ってこなくてとても怖い。


 でも本当にご飯も全然食べないのは心配だ。


 俺の家にも来てくれなくなってしまったし、ここ数日飲食する光島さんを見ていない。


 迷惑かもしれないけど、今日あたり光島さんの家に行ってみようかと思う。追い返されたらそれまでだけど、とりあえず俺が避けられてる理由を聞かせてもらいたい。



◇◯◇



 斑鳩が最近、ちらちら俺を見てきている気がする。助けてと言ったらきっと助けてくれる気がした。そこに縋りたい思いもあれど、迷惑になるのがただただ怖い。


 俺なんかのために、あいつを巻き込んではダメだ。


 お腹も全然空かなくて、斑鳩の顔が浮かんでは何かを口に入れようと思うけれど、すぐ戻してしまう。


 寝ても北斗さんの夢ばかり見てしまい、ここ数日はろくに寝れてもいない。早く決めなければと焦るほどに、心はどんどんと重たくなっていった。


 北斗さんと会ったのは月曜日の夜。もう金曜日になってしまっているから、早く北斗さんのところに行かなくてはならない。頭でわかっていても、足が動かなくなってしまうのだ。


 アパートに帰ると、また、集合ポストの前に北斗さんが立っていた。チッと舌打ちが人のいない空間に響く。


「おせぇんだよ。相変わらず鈍いんだな。成長したかと思ったのに、変わってねぇ」


お前、今付き合ってるやつでもいんの?その問いかけに、反射的に首を振る。Glareに押されて、じり、と外に後退した。


「っは、ダッセェ。オレのとこからいなくなるから、あてがあんのかと思った。つぅか、お前は誰かと付き合うなんて無理か。邪魔にしかなんねえもん」


「…っ」


思っていたことを、抉られた。図星?とまた、北斗さんが嗤う。


「ほら、だから早く来いって言ってんだよ。お前のイバショ?になってやるからさ。ああ、それとも」


これ、公開してほしい?


 北斗さんが、スマホを突きつけてくる。画面を見て言葉を失った。動画が再生されると、卑猥な言葉と音が聞こえだす。


「なんでっ、それ…」


「あ?お前が撮ってって言ったんだろう?」


言ってない、そんなこと。画面に映る俺は、ひどい痴態を晒していた。解説をする俺のそんな姿なんて見たくなくて、目を逸らす。


 だって、[Taken(撮られろ)]って言ったのは北斗さんじゃん。[Show(見せろ)]も[Present(晒せ)]も全部、俺、嫌だって言ったじゃん。何回もSafe word言って、それでもやめてくれなくて。消すって、言ってた、のに。


「これ、お前の会社の人に送ったらどうなるだろうな?」


「やめっ…!」


それだけは、嫌だ。斑鳩に見られたら、軽蔑されたら。会社の人にだって、Subであることは言っていないのに。切羽詰まった俺の様子が面白かったのか、北斗さんがまた笑った。


「どうする?オレの家で家事をするか、このまま帰るか。選べよ」


選択肢を与えてやる、と言っているけれど、こんなのもう選べるものは一個しかない。


「…っ、ついて、いきます…」



◇◇◇



 目の前がライトでチカチカする。いわゆるラブホ街で、目が回りそうだ。


 家事をすればよかったんじゃないんですか。そう思って見上げても、一向に速度を緩めてくれなかった。


「おい、来いよ」


あるホテルの前で、手が引かれた。咄嗟に反抗するように足を突っ張る。


 ああ?と舌打ちする北斗さんにまた、体がびくんと反応した。


「…イカルガ、ユラ?だっけ?お前が仲良いの」


「っは」


斑鳩の名前が、なんで、ここで。なんで北斗さんがその名前を知って、…?


「あいつが心残りかぁ?二人仲良く水族館まで行って…。恋人ゴッコ、お疲れ様」


体がかっと熱くなる。


 くすくすとバカにしたような嗤い。それが斑鳩に向かったことが、なぜかどうしようもなく許せなかった。


「斑鳩を悪く言わないでください…!」


「ハハッ、恋人のふりは楽しかったか?…あいつにあれを見せることだってできるんだぞ」


がっと肩を掴まれ、強く下に押しつけられた。


「[Kneel(跪け)]」


その言葉がずんっと重くて、膝が崩れ落ちる。よくもオレに歯向かいやがって、手加減してやろうと思ったのにどうしようか、と北斗さんが俺を見て呟いた。


「とりあえず、電話をしろ。イカルガに。で、嫌いだと告げろ。いいな?」


「…やっ」


理解して反抗する前に、叩きつけられるようにCommandが重ねられた。


「[Call(電話しろ)]、[Say(言え)]」


そう言われると、手を止めたいのに、勝手に手が動く。嫌だ。斑鳩に嫌いだなんて言いたくない。嫌だ。


『…っもしもし、光島さん!?どうしました!?』


電話から勢いよく斑鳩の声が返ってくる。心配するような声が、優しくて。助けてって言いたい。でも、俺に今、許可は出てない。


『最近大丈夫ですか、体調とか』


「なぁ」


心配してくれる言葉を無理矢理遮る。俺の声から何かを感じ取ったのか、ぴたりと斑鳩が黙った。その顔とか、そんなの想像したくない。できるのが嫌だ。傷ついた顔なんて、知りたくない。


「お前のこと、きらい、だからさ。もう、関わんないでくんない…?」


『…え』


固まった声が、小さく、響く。胸が引きちぎれるように痛くて、でもこれで斑鳩を巻き込むことはなくなったはずで。これでいいんだ。


 そう思って、北斗さんを見上げる。


「うぜぇ…」


その声が上で聞こえた瞬間、スマホが吹っ飛んだ。手に強い衝撃を感じて、持っていられなかった。咄嗟に胸に当たるのは庇ったものの、蹴られた力に抗えなくて地面に倒れ込む。


『光島さんっ、なんの音』


「…助けて、由良っ!」


じわりと手から血が滲むのを感じた瞬間、由良の声を聞いた瞬間。抑えきれなかった悲鳴が助けを求める言葉となって溢れ落ちる。同時に、体が浮いた。


「てめぇ、許可してねぇって何度言ったらわかる?脳みそはあるか?躾がまだ、足りてないんか」


胸ぐらを掴まれて、息が苦しくなる。苦しくて涙がこぼれても、北斗さんは手を緩めない。


「ゃ、めっ…」


「やめろっ!」


突然衝撃を感じて、首から手が離れる。息が楽になると共に、周りが真っ暗になった。


「光島さん!」


ぎゅっと抱きしめられて、反射的に抱きしめ返す。


 聞き慣れた、安心する声。包まれたらほっとする匂い。


 斑鳩だ。


 ぎり、と小さく歯軋りが聞こえた。俺には向けないようにと抑制された強いGlare(グレア)が放たれている。


 斑鳩が俺の視界を塞ぐように抱きしめて、北斗さんを睨みつけたのがわかった。


「お前っ、何しやがる」


「そちらこそ、光島さんに何をしていらっしゃるんでしょうか」





 

今さらですが


▪︎語句説明▪︎


[]の中の英語は「Command」です。上に振ってあるふりがなが日本語での意味になっていて、英語が同じでも人によって微妙な差があります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ