年越しを、二人で
「…今年もあと三時間で終わりですよ」
『早いもんだな』
「ですね〜…」
こたつの中で、紅白歌合戦を見ながら俺は光島さんと話していた。隣に寝ているのはポチである。
両親はソファに座ってみかんを食べている。俺が誰と話しているかに興味はあるけれど、深くは聞いてこないみたいな感じだ。
『俺、今旅館にいてさ。ちょうど海が見える部屋だし、ここで年を越そうかと思ってて』
「いいですね、部屋で年越し。海だとやっぱ寒そうですもんね」
『うん。外に出るつもりだったけど、寒いからやめた』
他愛もない会話をただひたすらして、年越しまでゴロゴロする。それがこんなにも幸せになるとは思わなかった。
こたつの布団からは実家の匂いがして、それはそれで落ち着くんだけど。
…光島さんの匂い、嗅ぎたい…。
変態かよ俺は、と自分に苦笑する。光島さんに直接会いたいなあ、と思いながら画面の中でテレビを見てる光島さんを見つめた。
『そういえばさ』
何曲か終わったあと、合間にぽつりと光島さんが呟く。
『お前、意外とキス魔だよな』
「はいっっ!?」
食べてたみかんで咽せた。寝ながら食べるのは危険だね…。
『いや、かなりグイグイしてくるじゃん。…でも、口には絶対しないよな』
「な、なんで今…、げふ」
『大丈夫か?…いや、歌詞で出てきたからさ』
「あー…」
そういえばさっきの歌にあったな。でもなんでと言われましても…。
「俺、口へのキスって好きな人同士がすることだと思ってるんで…。だから光島さんが好きな人とするもんだと思ってやってないですね」
「…ふぅん」
本音を言うと、めちゃくちゃしたい。でも、それは光島さんが本当に好きだと思った人にやることで、その好かれた人の特権だと思うから、やらない。
いつか光島さんが心からキスできる人に会えるといいな。そう思う一方でその相手に嫉妬してしまう俺は、ずるいんだろうか。
◇◇◇
「あと30秒で今年が終わっちゃいますよ〜」
『もうそんな時間か。…斑鳩、今年もありがとう』
「…!ふへへ、こちらこそです。えっと、今年もありがとう…、ことあり?」
『ふは、初めて聞くわ。でもそうだな、あけおめとかことよろとかあるもんな』
ふぁ、と小さく光島さんが電話越しにあくびをした。声がちょっと出るのかわいい。
『じゃあ、来年もよろしく』
「よろしくです」
言い終えた瞬間、テレビの表示が切り替わった。響く除夜の鐘が終わりと始まりを同時に告げる。
年が明けたんだ。
「あけましておめでとうございます、光島さん」
『あけおめ、だな。今年もよろしく頼む』
二度目のこちらこそ、を返す。笑い合いながら、俺は窓の外に目をやった。
新たな年だ。
どんな年になるだろうか。…まあ、それは俺次第なんだけど。
「…いい年にしよう」
『だな』
「あれ聞こえてました!?」
声に出てたとは。恥ずかしくて頭を抱えながら、でも光島さんが笑ったことに嬉しくなりながら。
まだこの幸せな時間が続けばいいのに、とか、そう思ってしまった。
ごめんなさいめちゃめちゃ遅れました。作者無事です。
本当はもう少し前に投稿する予定だったんですけど、ちょっとゴタゴタしてて…。三ヶ日なのでまだ一応お正月だと思って読んでくだされば幸いです
遅くなりましたが今年もよろしくです




