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大丈夫 (☆)




 この世界には「第二の性」と呼ばれる四つの性が存在する。


 Sub(サブ)に「Command(コマンド)」と呼ばれる命令を出し(この行為を「Play(プレイ)」と呼ぶ)、Subがそれをすることに満足感を覚える「Dom(ドム)」。


 Domに命令を出されることで安心・安定するSub。


 どちらにでもなれる性別「Switch(スイッチ)」。


 どれでもない性別「Normal(ノーマル)」。


 俺…。斑鳩由良(いかるがゆら)は、Domだ。



◇◇◇



 はぁ、はぁ。


 俺の前で荒い息を繰り返しているのは、光島(みつしま)常務。俺の尊敬する先輩であり、とても厳しい人だ。


 咄嗟に薬を飲むのを止めたのがCommandとして認識されてしまったみたいで、今、俺と光島さんはPlayをしている状態らしい。


「…っ、かえ、る…」


よろ、と立ち上がった光島さんを止めたくて、俺は慌てて頭の中でCommandを探した。


「光島さんっ、[Kneel(すわって)]」


「っあ、」


かくん、と膝が砕けて、光島さんが床にへたり込んだ。


「わっ、ごめんなさい!怪我してない、ですか…?」


思っていたより勢いよく崩れ落ちた。ぺた、と床に座ったまま、泣きそうな目が俺を睨み上げる。


「あ、っと…。ぐ、[Good boy(じょうずです)]」


「…ん」


躊躇いつつも頭を撫でると、目がとろりと和らいだ。


 SubやDomがPlayをするときは、性的快感を伴う場合がある。そう、聞いたことがある。


 Subの人の気持ちはわからないんだけど、今、俺はそのことが正しいんだなって思い始めていた。


 光島さんが、目を閉じて、無意識だろうが気持ちよさそうに頭を俺の手に擦り付けている。


 微かに好調した頬が、普段では想像できないくらい柔らかな表情と相まって、ひどく官能的だった。


 いつも厳しい光島さんが、俺のCommandでこんなに蕩けるなんて。


「えろ…」


ぽつ、と呟いた言葉が聞こえたのか、びくっと光島さんが体を跳ねさせる。


「…っあ、ちが、これは…!」


俺の視線が向けられているところに気がついたらしく、焦ったようにそこが覆い隠された。


「ひ、久々のPlayだから、そのっ、体が勝手に…!」


手を伸ばして耳に触れると、びくんと首がすくめられて。


「そうですね、生理現象ですから仕方ないです。俺もそうなってるんで。…手伝ってもいいですか?」


「そ、っんなことを、さ…せるわけ、には。っあ」


熱くなっているそこにそっと触れると、ぴくんと体が震えた。


「嫌、じゃないんだ?」


手探りするように俺の背を、光島さんの指が掴む。

「っ、ぅ…」


「ね、もっと触ってもいい?[Tell(おしえて)]」


「…っ。い、い。た、のむ…」


ぎゅうう、と光島さんの手に力がこもった。


 どく、どく。


 心臓の音が、うるさい。


 それが俺のものか光島さんのものかもわからない状態のまま、俺たちは互いに熱を溶け合わせた。






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