すれ違う (光島さん視点)
あんまり人に話したことのない趣味とか物事ってあると思う。かく言う俺も、漫画が好きだ。
そういう柄じゃないと言われることもあるが、俺は比較的いろいろ読む方である。バトルも異世界も、恋愛も。
…まあ、こっちは誰にも言えないんだよなぁ。
ベッドに寝転んだままスマホのメモ機能を起動する。行儀が悪いのは重々承知だが、今日は疲れているからちょっとだけ。
「したい・されたいことリスト」
そう書かれたメモをタップして、リストを表示した。いくつかの項目の中で、チェックが付いているものが二つ。
・好きな人と一緒におうちご飯
・好きな人と間接キス
その文字を見返して、顔がボフッと熱くなった。同時に、なんだかつい口元を押さえてしまう。
誰にも言ってないけれど、俺が密かにしたいと思っていることだ。柄じゃないとか言われそうで、言えないけれど、俺は少女漫画的シチュエーションに憧れがある。
指をスライドさせて、手を止めた。
・好きな人と付き合う
・恋人とキスをする
リストには書けなかったけど、これに加えてもう一つ。
…体の関係を、もつ。
あれは事故のままなってしまったような、そんな感じだった。斑鳩の優しさにつけ込んで、やらせてしまった。
これでもまだ嬉しい自分が、あんな方法でも斑鳩を繋ぎ止められたことに喜ぶ自分が嫌になりそうだ。
…何やってんだろ、俺。
ふ、といきなり我に返ってしまう。あ、やばい。これ、今考えたら止まれないやつだ。
俺が自己管理できていなくて、部下を巻き込んで。その責任を取らせる形でズルズルそのまま関係をもって。何やってるんだよ、本当に。
『役立たずのグズなんだからよ、おとなしく家で飯でも作ってればいいんだ』
「…っ!」
耳元に蘇った声に、思わず振り返る。当然ながら北斗さんはいなくて。
ただ心臓の音がドキドキと、一人の部屋にうるさかった。
◇◇◇
カタカタとパソコンを打つ手が痛い。ここのところまたよく眠れなくなってきたし、そろそろPlayをお願いしないといけない頃だろうか。
自分のSub性が、自分でも鬱陶しい。これだけ煩わしいのだから、周りから見ても相当面倒くさい奴だ。
「…っ、」
メッセージを送るのを躊躇ってスマホを置いたものの、突然きた頭痛の波に唇を噛む。
『ごめん』
『そろそろPlay、お願いしたい』
これが続くと日常生活にも支障が出てしまう。しゅぽしゅぽとメッセージが送信されるのを見て、罪悪感を胸に俺は仕事に戻った。あと20分ぐらいで始業時間だけれど、今日は耐え切れるだろうか…。
ぴろん。
着信音に思わず、スマホをまた手に取る。
『了解です!』
『今すぐ行きますか?』
流石にそこまで急がせるのは悪い。今日の夜くらいまでならもつだろう。その旨を打ち、送信する。
『じゃあ、今夜ですね!よろしくお願いします』
その返事を見たあと、俺はスマホを置いた。申し訳ないと思う一方で、でも確かに安心している俺がいた。
◇◇◇
業務中に私情を持ち込むわけにはいかないので、なんとか頑張り昼までは持ち堪えた。今日が外回りじゃなくてよかった。
昼休憩の間に軽く弁当を食べ、自販機コーナーへ向かう。斑鳩は基本、そこにいるから。
途中まで来て足を止めた。斑鳩がいなかったのではなく、むしろ逆だった。早乙女と談笑している。
早乙女は腰まである綺麗な金髪を揺らしながら、斑鳩はカフェラテの缶を持ちながら。二人は何かを楽しげに話していた。
「…あ、ムリこれ甘すぎ」
「あらら」
早乙女が、自分が飲んでいたいちごミルクのペットボトルを斑鳩に手渡す。
「あげるわ、飲んで」
「お前が買ったやつだろ。金払うよ」
「いーよ、あたし飲んだし」
そ?と言って斑鳩が何の躊躇いも見せずに蓋を開け、口をつけた。俺にやったよりも自然な仕草に、胸がギュッと痛くなる。
「おいしい?」
「うん」
二人で笑いながら話に戻る。間接キス、だった。たぶん、全然気にしないほどに普通の。
あ、と思った。
やばい、と。これ以上ここにいたら自分が辛くなる、と気づいてしまう。
斑鳩は、俺に対して何も思っていない。たぶん、きっと。だって、あの二人は付き合っているから。
周りが囁いていた噂が胸に刺さる。斑鳩と早乙女は高校時代から一緒で、付き合っているって。俺はただ、事故で斑鳩と触れ合って関係をもってしまった、部外者。
そんなことは知っていた。わかってた。身を引こうとずっと思ってた。ただあたたかさを手放すことが怖くて、見ないふりを続けていただけだ。
なんで、どうして。なんでこんなにも胸が痛いんだろう。どうして、好きになってしまったんだろう__。
これ、本当は昨日投稿する予定だったんですけどね。
さっぱり忘れてました。
意外とピュアな光島さんだったということで。ちなみにあと「バックハグする・される」とかもリストの中にあります。
こんな重くしたかったわけではないんですけどね…。
今、本編を書き中なので次投稿するのは短編になるかもしれないです。
読んでいただきありがとうございました。




