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めりくり②




 光島さんはローストチキンとオニオングラタンスープ、それからミニハンバーグを作ってくれている。その横で俺は、火を使わない仕事をやっていた。


「ふぅ…」


作業がひと段落したのか、光島さんが俺のところに来た。いつの間にか椅子が二つあるのが普通になったダイニングテーブルの側に立って、俺の作業をじっと見ている。


「…お前、器用なんだかなんなんだかわかんねえな」


俺の作ってるミニトマトサンタを見て、光島さんが言った。すでに五体ぐらいのサンタが机の上に爆誕してる。


「俺、サラダ担当なんでちょっと頑張ってみました」


光島さんがめっちゃ料理作ってくれてるんだから、俺も何かしようと思って、ネットで検索してみたのだ。ミニトマトを切ってモッツァレラチーズを挟み、黒ゴマとケチャップで顔をかく。なかなかかわいい見た目じゃないだろうか。


「いいんじゃないか?かわいい」


感想を期待して見つめていると、光島さんがちょっと笑って言ってくれた。


 やった!が顔に出ていたのか、吹き出す光島さん。


「お前、マジで見てて楽しい…。俺も美味しい飯、作んなきゃな」



◇◇◇



「いただきますっ!」


「ん、いただきます」


手を合わせてそう言って、顔を見合わせて思わず笑う。光島さんがチキンを切っているので、俺はミニバーグを食べた。


「おいしいでふっ」


「ふは、そりゃよかった」


皿、と光島さんが手を出してくれる。渡すと、チキンとサラダを盛り付けてくれた。


「わ、ありがとうございます」


「…ん」


お礼を言うと、びっくりした顔になったあと、照れたように笑う。


 …光島さんって、実は表情豊かなんだよね。


 会社の人が鬼上司と呼ぶ光島さんが、こうやって俺の前でいろいろな顔を見せてくれるのがすっごい嬉しい。


「ミニサンタ、かわいいな」


箸で器用にミニサンタをつまみ上げ、そのままパクッと口に入れる。うまい、と言われて、にへらと口角が弛んだ。


「お前酔いやすいんだから、ワインほどほどにしとけよ」


そう言いながらもグラスを合わせてくれる光島さんが好きだと改めて思う。


 ほとんど食べ終えた頃になって、俺はその話をすることにした。


「メリークリスマスですね、光島さん。…ということで、プレゼントがあります!」


「え、俺に…?」


はい、とこたえ、俺は机の下から包みを取り出す。


「斑鳩サンタからのプレゼントで、あ、待って逆」


リボンが垂れ下がっちゃった。あわわ。


「落ち着け斑鳩サンタ」


光島さんに落ち着けられた。改めてプレゼントを差し出す。


「これっ、マフラーです!めちゃあったかくて良いんですよ」


クリスマスと言えばプレゼントだよな、で最初に思いついたのがこれだった。俺が使ってるマフラーの新作カラーが光島さんに合うと思って、つい買ってしまったのだ。


「…!ありがとう…」


ぱぁ、と小さく光島さんの顔が輝いた。よかった。


「ちょっと重いかなぁって思ったんですけど、なんかいつも光島さん寒そうだったし」


「全然ない、大丈夫だ。…嬉しい、ありがとう」


ふわ、と解けるような笑顔で光島さんが箱を撫でる。その笑顔を見た瞬間、胸がぎゅっとなるような、抱きしめたいような、そんな気持ちになる。


「俺、なんもそういうこと思いつかなくて…。悪い」


「いえ、俺が勝手にしたことですし。それにいつもご飯とか作ってもらっちゃってるんで。こちらこそありがとうございます」


ぺこりとお辞儀し返すと、照れ隠しのように目が逸らされる。その耳が赤く染まっているのが、本当に愛おしい。


「あ、そうだケーキもあるんです」


「え」


しまったというような顔になった光島さんの表情の変化を、俺は見逃さない。その…、と気まずそうに光島さんが続ける。


「あの、俺も買っちまった…」


「ケーキ贅沢喰いですね!」


「いや多いって」



◇◇◇



 結局、俺が買ってきたチーズケーキを二人で食べて、明日光島さんの買ってきてくれたケーキを食べることになった。


 …フルーツタルトを買ってきてくれるとか、嬉しすぎる。光島さん曰く店頭で見た瞬間に俺の顔が横切ったそうだ。流石というべきか、俺はフルーツタルトが大好きである。


 それにしても、理由まで同じだったとは驚いた。俺もチーズケーキを見た瞬間、コーヒーを飲んでる光島さんが思い浮かんだから。


 その張本人は俺がプレゼントしたマフラーをもふもふに巻いて、外に出ようとしていた。


「じゃあ、今日はありがとう。また明日」


あたたかそうに顔を埋め、ふわふわと手を当てて。光島さんは名残惜しそうな目を一瞬したあと、ドアを開ける。


「おやすみなさい」


「うん、おやすみ」


 そう言って、外に出ていく光島さんをただ俺は見送った。


「…泊まっていきませんか」


言えなかった言葉がつい、喉の奥からこぼれた。今日はなんでもない、ただ一緒に食事をするだけの日だ。Playもしない、体を重ねもしない。わかってる。なのに、光島さんに触れた手が、今になって熱い。


 俺はただのパートナーで、セフレだ。その事実を、光島さんを飲み込んだ夜景が突きつけてくる。


 …もし光島さんと「恋人」になれたのなら、もっと長くいれたのかな。


 声に出せない思いを息と混ぜて白く吐き出す。もう一度光島さんが消えた方を見たあと、俺は家のドアを閉めた。



 

メリークリスマスですね。


私は現金を親からクリスマスプレゼントとしてもらいました。夢も希望もないですが、一番便利です。

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