安全地帯。(光島さん視点)
本編で載せてなかった、Safe wordを決める話です
今回性的描写は含みませんが、軽い【暴力的表現・トラウマ・フラッシュバック・DV要素】が含まれます。
申し訳ありませんが、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
「Safe wordってどうしますか?」
俺に頬をつままれながら、斑鳩が聞いてきた。真面目な話だと思って、もにもにした頬から手を離す。
「Safe word…」
つい、鸚鵡返しのように繰り返してしまった。斑鳩がこくんと頷く。
Safe wordの存在は知っている。知っているけれど、あの人とのことがあってから誰ともPlayをしていなかったから、忘れていた。
「はい。えっと、お互いに決めるのが俺は普通だと思ってるんですけど、どうですか?」
「お互いに…?Domも…お前もってことか」
DomにSafe wordが必要になることなんて思いつかなかったから、ぱちぱちと目を瞬く。再び斑鳩が頷いた。
「俺もあんまり使わないんですけど…。でもたまに、望んでない範囲までCommandが効いちゃうことがあるんですね。だからその時に『もういいよ、大丈夫だよ』っていう感じで止めます。相手がめっちゃ無理してるなとか様子がおかしいなって思ったら使いますね」
そこまで強制力はないし、After careとかも必要ないんですけどね。そう言って、そっと笑う。
「一応[止めろ]です。基本的に使わないんですが、俺がそれ言ったら一旦ストップでお願いしますね」
「…、[止めてください]」
つうっと口から言葉が落ちた。咄嗟に口を押さえて斑鳩を見る。
「えと、どうしたんですか」
突然身を引いた俺を心配するように、斑鳩が手を伸ばした。その姿さえ、あの人と重なってしまう。
「やっ…!ごめっ、なさ…!」
「ちょ、光島さん!?」
「ごめんなさい、ごめんなさいっ…」
「っ、[Look]!」
手首が掴まれた。Commandに反応して、俺の目が開き情報を読み込む。それが全部頭の中を滑っていくようで、吐き気がした。
「ごめんなさい、気持ち悪いですね。よく見てくれました、[Thanks]」
抱きしめられる。そのあたたかさに必死にしがみついた。あの人とは違う、あったかい、安心の匂い。
「…よし、光島さん。俺の名前、[Call]」
「…ゆら。いかるが、ゆら…」
それは、わかる。
暴れ回っていた心臓がだんだんと、元の速さを取り戻し始めた。Good boy、の低い囁きに、そっと身を預ける。きもちいいやつ、来た…。
「…光島さん。言いたくなかったらもちろん答えなくていいんですけど。なんで謝っていたか…教えてもらってもいいですか?」
俺を抱きしめたまま、低く、斑鳩が問うた。ちょっとだけピリッとして、Glareが出てるなと思った。でも全然俺を威圧するものじゃないから、怖くない。
「せーふわーど、言った、から…」
「へ?Safe wordは言っていいものですよ…?」
軽く、俺を抱く手に力が籠った。
「でも、ほくとさ…」
北斗さんに、怒られた。萎えるって、うるさいって。それが普通じゃ、ないの?何か違う?
…わかんない、もうやだ。もう、何も考えたくない。
「…あの。他の人がどうかはわからないです。でも俺は、相手に気持ちよくなってほしいんです。安心してもらいたい。だから、無理されたくない。限界を教えてほしい。傷つけたくないです。怒らないから、お願い」
お願い。もう一度そう言って、俺の髪を長い指がそっと撫でた。
…安心して、いいの?
ねえ、怖いよ。俺を縛ったりしない?お仕置き、しないの?
お前のこと、信じてもいい…?
▪︎語句説明▪︎
Glare
→Domが怒りの感情を抱いた時に見られるオーラ・眼力。
Subに不安や恐怖を感じさせたり、また他のDomを牽制し威圧感を与えるたりすることができます。本人の制御が可能ではあるが、感情に左右されることがあります。




