夫婦喧嘩が一日以上続かない男の話。
今日は久しぶりにやってしまった……。
売り言葉に買い言葉とはいえ、嫁をまた傷つけてしまった。
とはいえ、今回ばかりは俺の方から謝るわけにはいかない。
内容が内容だったからな……。
イライラが抑えられないので、何かヤケ食いでもしてやろうとキッチンへと向かう。するとテーブルの上にはビールが一缶。
これはいつもの和解のサインだろうか?
あれほど、激怒してしまった俺に対し、また彼女は何も言わずに許してくれるというのだろうか?
俺は、少し落ち着いた気分でテレビを点け、ひとくちビールを飲んだら、また程無くして寝てしまっていた。
◇
今日は久しぶりにやってしまった……。
売り言葉に買い言葉とはいえ、主人をまた傷つけてしまった。
けれど、私の方から謝るわけにはいかない。
何のためのケンカだったか、だから。
いつもどおり、私はキッチンのテーブルに缶ビールをひとつ置く。
主人はひとくちでもアルコールを飲めば、本音をすべてぶちまけてくれるのだから。
彼は非常にアルコールに弱く、たったひとくちでも酩酊する。
そうなってしまうと私への愛を恥ずかしげもなく、一時間でも二時間でも延々と語ってくれる。
そして翌日には、そのことをキレイさっぱりに忘れ、朝食を用意した時も、お弁当を手渡す時も、小さく「ありがとう」とつぶやき、そしていつものように出勤する。
これがあるから主人とのケンカはやめられない。
次はまた、何を理由に彼にケンカを売ろうかしら?