プロローグ
久しぶりに書かせていただきました。よろしくお読みになっていただけましたら幸いです。次、書きます。
陽の光は、相変わらず残酷なまでに地面に降り注いでいた。
室内に居てエアコンを点けていても額に汗が浮くのだ。
ドリッパーにゆっくりとお湯を注いだ。コーヒーには拘りがある。 豆の産地は、ヴァテマラだ。
フルーティな酸味と、チョコレートやナッツのよえなコクが特徴。柔らかいフローラルな香りも。重めの味わいなので、ブレンドのベースにも使われる。険しい山岳地帯で栽培されたのが、そのまま味に出たという感じだ。
コーヒーはドリップ式に限る。味わいで言えば、サイフォン抽出には敵わないのかもしれないが、経済的にサイフォンは維持出来そうにない。
まあ、身の丈に合った選択をしていると言えるだろう。
ドリップの中でも、ネル・ドリップに限る。紙で濾すよりも、布でした方が美味いような気がしてならないのだ。
さて、朝八時、出勤前に飲むべく淹れたコーヒーはまだ湯気がたつ程には熱かった。
リヴィングに置いたストゥールに腰掛けて、まだ熱いマグカップに口をつけようとした矢先だった。
「よう」
突然、背後から声がしたのだ。何処かで聞いたことのあるよえな声が。
「誰だお前は!?何処から入った!?」
俺は思わず怒鳴った。
「どこからはいったって?まあ、ここは俺の部屋だからな。何処からも何もない。もともと居たよ。なんてな」
背後の男が笑ったようだった。
俺はその時点で漸く減り向くことが出来たのだ。コーヒーに口をつけるのを諦め切れなかったから。
「よう、元気か?」
振り向いた先には、思った通り、俺が居た。
それも数年前に着ていたグレイのパーカに、見憶えのあるダメージ・ジーンズをだらしなく着こなした俺が。
「邪魔するよ」
「どういうことだ?何故、オレが?」
俺は一応、驚いた風を装った。
「やっぱり本気では驚いてはくれないよえだな。俺自身なんだから、本当は驚いてないことぐらいわかるんだよ。でも、予想通りだ。まあ、身に憶えあるんどものな」
その挑発的な言葉に俺は答えなかった。俺が答えないのも俺は知っていた。過去に経験していたから。
未来から、自分がやってきて、悲惨な未来を変えるべく未来の自分が奮闘する物語はよくあるが、その逆、過去からきてしまうというのはどうなのだろう。
俺は若干、白けてきた。経緯も結果も、いま眼の前にいる過去の自分がやがて経験し、知ることになり、今の俺に至るのはもう、この一年の間に俺自身が経験して知っているのだから。
「ちょうど一年前からやってきたのだろう?」
俺は訊いた。
「ああ。君も憶えていると思うけど、オレが作ったタイムマシンの行き先のタイマ設定が、ちょうど1年後にしかならなきったのだよ」
やはり、過去の俺は笑っていた。それは、やっとの思いでタイムマシンの開発に成功した歓びの余韻がまだ残っているから、なハズだ。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。色々なエピソードを用意しています 楽しみにしてください。