第一章 「青森様」
「は?ここどこ?」起きたら、知らない部屋だった。
はーい、なにこのよくある物語展開、って思ってるそこのあ、な、た。私もよく思っていたけど、『知らない部屋』としかいいようがない。白い壁、木製床板、そして、小さな白いテーブル。私が今寝ていたベッドも、白い板、白い枕、もちろん白い掛け布団。
「なんなんだよ、ここのご主人、白好きなのかよ。」私はため息をつき、周りをもう一度見見回し、自分の記憶をたどった。覚えているかぎり、昨日の朝までは普通だった。お昼くらいに起きて、午後スタジオ行って仕事をして、八時から渋谷で遊びまわって、そう。今日は土曜日のはずだから、朝まで飲んでいたはず。友達と駅までふらふらしながら、うん、午前二時半頃、歩いて。そのあとは別れてなんとか電車まで乗ったっけ。でも、そのあとがどうしても思い出せない。
「嘘だーこんな私が誘拐されるとは、ね」私は弱く笑った。
「嘘ではないのですわよ」落ち着いた声が鳴り響いた。私はギョッとし、いつのまにか目の前に現れていた少女に気付いた。
「あ、あんた誰よ?は、早く出してもらわないと警察、って、携帯どこだ。まさかお前っ、もういい、誰?ここはどこ?」私はパニックのせいか、少し声が震えてしまった。
「私のことなんか、どうでもいいのです」少女はニッと笑った。「あなた、青森美玖、35歳、まったく仕事に行ってない、昨日くびにされたデザイナーですね。」
あ、そうだ、私昨日くびにされたんだった。
「えらい年で渋谷で遊んでいる、偶然と青森出身ですね。高校は成績が悪すぎて指導を何度も受けたが、ついにあきらめて高校卒業したのです。くだらない人生を送ってるのですね、青森様。」
「まだあんたみたいな若いお子ちゃまにはなんも分からねーつーの。」私は舌打ちをして少女をにらんだ。「で、あんたは誰なの?なんで私はここにいるの?私のことなんかどうでもいいとか、馬鹿げたこと言うんじゃないでしょうね?」
少女はため息をついた。「ワタクシは少女と申します。さきほどの荒い口調大変失礼いたしました。青森様は今特別なご体験をしているのです。」
「少女?嘘でしょ、」私は腹を抱えてケラケラ笑った。「なにそれ、どんな名前よ、親センスないわねっ!」
少女は私を無視した。「とにかく、青森様は今から貴重な体験をするのです。まだ明かされていなかった国宝を体験するのです。これから、青森様の渋谷生活から一転と、色々な時代を体験させるのです!少女は、この体験は青森様の記憶に刻み込まれる、とても貴重な体験になると思うのです。」
「え?は?なにそれ、タイムトラベル?」私は誘拐などのことをすべて忘れ、わくわくが込みあがってきた。
「お楽しみにしていてください。では、静かに、おとなしく、目を閉じるのです。」私はなぜか少女の声に癒され、目を閉じた。どこからか騒がしい音が聞こえる。もうこらえきれず、目を開けたら、大雪が降っていた道路だった。
「寒い、はずなのに。寒くない。は?少女?少女さまー?」私はとりあえず立ち上がり、雪に囲まれた静かな住宅地を見回した。そして、手に、赤い文字で、『大正』と刻み込まれていることに気付いた。「そうか、ここは大正なのねっ」私は少し奇妙な形をしていた建物に気付いた。「わ、人いるじゃん!未来のこと言ったらどうなるだろっ」笑いを堪えながら、「あのー」って言っても、なかなか気づいてもらえない。「すみませーん、おーい、おーーーーい!」私は少しいらつき、女の体に触れようとしたが、手がすり抜けてしまった。
『タイムトラベル。そうか、そういうことか、まあ、人と話したりできるわけないか。』私は静かに場面を見ることにした。女性は若くて、茶色の髪の毛を結い上げていた。そして、違う女性が家から出てきた。
「どうされましたか?」出てきた女性が明るい声で答えた。」
「うちのおばさんが大雪の中で倒れてしまいました、助けてください、お願いします!」
「だ、大丈夫ですか?もちろんです、すぐに行きます。」私は『やっべーな』と思いながらその場面を観察していたら、一つの奇妙なことに気付いた。おばさんが大雪で倒れたと言い張っている女性。見覚えのある、奇妙な表情をしている。なんだっけ、なんだっけ、この表情。私はハッと思い出し、凍り付いてしまった。出てきた女性に何かいようとしたが、声が届かないことに気付いた。なに、どうすればいいの、あ、もう、遅い。
悲鳴が響いた。