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彼女が私の背中を引っ張り、席に着かせてくれた。彼女は小さくだけど、ハッキリとした喜びの感情を込めてありがとうと言ってくれた。正直に言うけれど、彼女のために文句を言った部分はほんの少ししかない。本当はオタク女子である私自身がいじめられるのを恐れての言葉だった。彼女がいじめられていたから、私は勇気を持てた。高校生活が始まってから毎日異世界で冒険を繰り広げているおかげも少しはあると思う。けれどもしも私がいじめを受けていたなら、どんなに異世界での経験を積んでいても、怖くて立ち上がることすら出来なかったと思う。彼女は強いと思った。私の暴走を止めるためとはいえ、しっかりとその足で立ち上がったんだから。あの時の彼女の行動が、いじめをなくしたんだと私は思っている。私の行動に、教室中が引いていた。驚き? 戸惑い? 恐怖? その全てかも知れないし、呆れていたのかも知れない。けれど一つだけ言える確かなことは、誰もが私に声を掛けられずにいたってこと。その場の空気も含めてそれを打破したのが、彼女だった。彼女はすでに教室内では認められていたって事だと思う。