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他所の学校では、オタク女子も大いに幅を利かせていると、たまにしか会えない実の兄が言っていた。兄はあれで、高校教師なんだ。あれってどれだよと思うけれど、いつしかこの物語にも登場すれば嬉しいなと思っているので、その時あれがどれなのかがはっきり分かると思う。妹の私からすると、兄の見た目は流行りのニートのようだ。家にいるといっつもパンツとランニングシャツでウロウロしている。髪の毛もボサボサで、お腹も少し出っ張っている。妊娠五ヶ月頃の姉と同じくらいの出っ張りようだ。私には少し歳の離れた実の姉もいる。同じ干支だったはずだ。既におっさんのような兄だけれど、まだ教師一年目なのでそれほど歳の差は感じたことがない。私がオタクっ子だってことを、その二人はよく知っている。というか、その二人しか知らない。今ではきっとその筈なんだ。
アニメ好きだとなにか迷惑でも受けるの? それとも有希ちゃんが可愛いから嫉妬してるの?
私がそう言うと、自分の席に座ってタイトルがやたらと長いライトノベルを読んでいた彼女が立ち上がり、慌てて私の背後に寄り添い、私は大丈夫ですから。いじめには慣れています。けれど、あまり変なことを言うと余計にいじめられてしまいますよ。分かってるんですか? 真木さんはとても目立つし影響力があるんですから。そんな言葉を囁いた。
私はチラッと背後に視線を送ったけれど、その言葉は無視をした。
とにかく! この子をオタクだからっていう理由でいじめるのは許さないからね! 他の理由があるにしても! ちゃんと私に知らせなさいよ!