表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
61/70

第二十七話 下水道(1)

これまで書きなぐったものを垂れ流していましたが・・・いずれ機会があれば再編したいと思います。一旦、検索対象から外しました(汗


これまで読んでいただけた方が居られましたら、大変申し訳ありません。書いた分だけは投稿いたします。ありがとうございました。

 路地を進んでゆくと、周りは背の低い、柱の傾いたことさら粗末な建物ばかりになり、やがてその家並みを抜けると何もない殺風景な広場に出た。


 街中で見られる広場には、ベンチが据えられ花壇に花が咲き、市民の憩いの場として整備されているところが多いけれど、ここはただ石畳で覆われた何もない空間で、風が吹き抜けると砂埃が舞い、周りを取り囲むバラックのような家の軒先に干された洗濯物がはためくばかりだった。


 その中央には大きな土嚢袋がいくつも積まれ、その前の地面には、周りの土色の石畳とは材質の違う、灰色の石材がはめ込まれていた。そしてその上に滑車櫓が組み立てられていた。


 三本の太くて長い樫棒で三脚を作り、それらを結ぶ中央から滑車がぶら下がっている。この滑車で灰色の石材を持ち上げるようだ。


 それを取り囲むように、粗末で汚れた服を着た十数人の男たちが地べたに座り込んでいる。


「ようハイデル!やっぱり依頼を受けたのはお前か。」


 後ろから、櫓の周りの男たちより小綺麗な、精悍な感じの四十男が近づいて来た。


「ギルドにはお前を指名して依頼を出してるわけじゃないのに、いつも来るのはお前だな。」


 そう言って、笑いながらハイデルの肩を抱いた。


「ん?お前らはなんだ?」


 男はハイデルの隣に立っている私たちに怪訝な目を向けた。名乗ろうと思ってその前でフードを取ると、男は私の顔をねっとりとした目で見てニヤケ顔になった。その顔を見たら名乗りの代わりに小さなため息が漏れた。


 男はラウルと名乗り、それからハイデルの腕を肘で小突いた。


「ずいぶん奇麗なお嬢ちゃんを連れてるな?なんだ、俺への貢ぎ物か?」


 でもハイデルは慌てた顔をラウルに向けた。


「魔物の処理をしてもらうために・・・呼んだんだ・・・こいつらは・・・暦とした冒険者だ。」


 私たちだけの時と違い、ハイデルはまた訥弁に戻ってしまっていた。


「手を出したら・・・ギルドを敵に回すことに・・・なるぞ。」


 ハイデルはそう言ってくれるけれど、でも私たちは冒険者の見習いで、それに例え私たちが害されても、ギルドを敵に回すことは無いだろうと思った。けれど、わざわざ余計な口は挟まなかった。


「冗談だよ、冗談。いくら奇麗だからって子供に手を出す趣味はねえよ。」


 ラウルはそう答え、ハイデルの心配を杞憂だと言うのだけれど、でも相変わらず私に向けて来る視線がいやらしくて閉口した。



「さぁ、作業を始めるとするか。野郎ども、準備しろ!」


 ラウルの言葉を合図に男たちは櫓に群がって、滑車から伸びるロープを数人がかりで引くと、石畳に嵌る石が宙に浮いて地面に長方形の真っ暗な穴が開いた。すると男たちはウエッと悲鳴を漏らしながら顔をしかめた。その様子を離れた所から眺めている私たちには届かないけれど、その穴の下が下水道になっていて、そこから強烈な悪臭が立ち昇っているようだ。


「お前ら、まだ堪えろよ。臭いにたじろいでロープを放すんじゃねえぞ!放したら今日の給金は無しにするぞ!」


 ラウルは鼻をつまみながらくぐもった声で叱咤する。小柄な男が彼らの後ろを走り石畳に刺し込んだ杭にロープを固定すると、灰色の石材が宙にぶら下がり、その下の真っ黒な穴に梯子が降ろされた。


「行くぞ。」


 布で鼻と口を塞いだハイデルは、私たちを振り返ってから、右手にスコップを、左手に角灯を持ってその梯子を降りて行った。それを見送る周りの男たちはあからさまな軽蔑の目をその背中に向けていた。


 ハイデルが穴の中に姿を消した後、ラウルは相変わらず鼻をつまみながら穴の中に向けて声を張り上げた。


「しっかり働いて来いよ。汚水路は止めてあるから水は抜けているはずだ。」


 そしてハイデルに続いて私もその梯子を降りた。ラシーさんも言っていたし、櫓の周りの男たちの反応からも、下水道は悪臭が充満する劣悪な環境であることは予想できた。でも梯子を降りながら、その臭いが思ったほど大したことが無くて内心ほっとしていた。確かに少しきついけれど、その悪臭は不浄の谷のそれと大して違わなかった。


 角灯を掲げていたハイデルは、梯子を下りて来る私たちに何か言葉を掛けようとしていたけれど、案外普通にしているのを見てその言葉を飲み込んでしまった。


 そこは小部屋のようになっていて、その中央は四角い升になっていた。向かい合う壁にはアーチ状の穴が空いていて、枡を横切って排水溝が通っていたけれど、水路が止められているから汚水は流れていなかった。そして一段低くなった枡の底は真っ黒な絨毯のようなものに覆われていた。


 ハイデルは角灯を足元に置くと、何のためらいもなく枡の底へと降りて行く。すると天井から紐に吊るされたバケツが幾つも降ろされて、手にしたスコップでその黒い絨毯を掬ってはバケツに入れる。それが一杯になったら紐を引き、するとそれが引き上げられて、それから空になったバケツがまた投げ入れられた。


「ドブスライムだ。あれを頼む。」


 排水溝を見ると、アーチ状の穴からスライムが一匹這い出して来たところだった。それを見てレイピアを抜くと


「汚れるからローブは脱いでおけ。」


 ハイデルがそう言うので、ローブを脱いで枡の中に降りると、黒い絨毯のように見えたそれは汚泥で、踝がすっぽり沈むほどの深さがあった。


 後ろの穴からもスライムが出てきて、そちらはエルが当たってくれた。


 スライムを一突きして魔核を砕くと、外皮に空いた穴から水を噴き出して、やがて萎んで動かなくなる。でもレイピアで突いた穴は小さいから、出てくる水は細く勢いも良く、しかも萎みきるまでにスライムが暴れるから、辺りは汚水まみれになった。しかもスライムたちは、資材の回収もままならないほど次から次へと這い出て来て、その汚水で頭から足先までずぶ濡れになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ