第二十四話 揺れる心(2)
これまで書きなぐったものを垂れ流していましたが・・・いずれ機会があれば再編したいと思います。一旦、検索対象から外しました(汗
これまで読んでいただけた方が居られましたら、大変申し訳ありません。書いた分だけは投稿いたします。ありがとうございました。
次の朝、気が乗らなかったので谷での訓練はやめにした。でも報酬を受け取りにラシーさんの所へ行くと約束していたから、仕方なく朝も遅くになってからギルドハウスへ向かった。エルはそんな私に、何も言わずに合わせてくれた。
「こちらがローゼンハイム様からの報酬です。」
ラシーさんは、奥の金庫から小さな布袋を2つ持ってくると私たちに手渡してくれた。その袋の中には金貨が入っていた。
「報酬はお一人当たり金貨三枚になります。それにしても良い依頼でしたね。報酬の金額は、多分相場の倍以上ですよ。」
私は袋から金貨一枚だけを取り出し、小さなお金に両替してもらうと、残りの二人の金貨をギルドの口座に預けた。
姉弟という事もあって、ギルドには二人共同の口座を作ってもらっていたけれど、アンナのサポーターとして同行したときにもかなりのお金を得ていた上に、また十分すぎる報酬を得て私たちの経済状況は一気に改善した。
私たちの収入を心配して動いてくれたお礼も言外に込めて、ラシーさんに丁寧にお礼を言った。
「そう言えばアナベルさん、今日はもういらしてますよ。」
私たちの礼に笑顔の会釈で返してから、彼女はギルドホールの奥に視線を送った。その先の長机には紫色のとんがり帽子が見えた。
***
「依頼はどうだった?」
“挨拶だけして帰ろうと思ってたのに・・・”
今日はそのつもりは無かったのに、結局こうしてアンナの前に座らされてしまっていた。
「問題無く終わった。特に危ないことも無かったし。」
アンナは鋭いから、今の私の弱った心を悟られないよう、努めて普通に受け答えた。
「報酬は十分もらえたかい?」
「うん。今回の報酬は相場の倍だってラシーさんが言ってた。」
するとアンナは、それは良かったね、そう言って静かに笑みを返してからコップを口に運び、美味しそうに喉を鳴らした。
「それ、魔法で作った水?私も飲みたい。」
このままでは私の事を見透かされると思い、気を逸らそうとお願いすると、コップを持ってきな、と言われた。
「エルも飲む?」
エルはアンナが手にするコップをじっと見つめてから、席を立った私を見上げて頷いた。後ろの席に置き捨てられていたコップを二つ、アンナに渡すと彼女は魔法で水を満たしてから魔力を取り除いてくれた。
「いま使ったのは水魔法だよね。」
頃合いを見てここから立ち去ろうと思いながら、その様子を見て何気なくアンナに尋ねた。
「あぁ。水球の魔法だ。」
それは彼女が目の前で見せてくれたように、空中に水の球を作り出す初級の水魔法だ。
「なんだい?おまえ魔法に興味があるのかい?」
でも私は、ただこの場をやり過ごす事しか考えていなかったので、だから何と答えようかとコップの中の澄んだ水を見つめていたら、アンナが頬杖をついて私の瞳を覗き込んできた。
「・・・リズ、昨日の依頼先で何かあったのかい?」
”やっぱり的確に心を読んでくる・・・”
慌てて気配を整えようとしたけれど、この人を誤魔化すのは無理かもしれない。
でも昨日の事は話せない。私はすこし首を傾げて彼女に微笑みかけた。すると、それが答えたく無い問いであることをアンナは理解してくれた。
それから、私は相変わらずコップの水を見つめていた。冷たかった水はもう温くなってしまった。
アンナに聞かれ昨日の感情がまた心を占めそうになったけれど、もう本当に疲れていたから、大きなため息をついてそれを心の奥に押し込んだ。
でもそれで目を瞑ったら、父さんと母さんの顔が思い浮かんでまた心が揺れた。
昨夜、厄災の竜までの道のりが、夜空で瞬く星までの絶望的な距離にも思えて心を苛まれた。
でも諦めたくない。二人が永遠に罪人のままなんて耐えられない・・・
だからほんの一歩でも、半歩でも良い。瞬く星に近づきたい。長い時間コップを見つめているうち、そう思えてきた。
「魔法に興味がある訳じゃない。」
アンナの一つ前の問いに答えた。
「でも魔法を使えるようになりたい・・・そして強くなりたい。」
言葉の最後は、思いがけず囁きのようになってしまった。
「強くなれるさ。」
ずっと黙りこくっていた私を辛抱強く待ってくれていたアンナが頷いた。空のコップを手に黙って座っていたエルも私を見つめたのが分かった。私は、傷だらけの心を抱いてその場で俯いた。
それから、アンナは魔法の事を教えてくれた。




