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鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
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第二十二話 謁見(2)

これまで書きなぐったものを垂れ流していましたが・・・いずれ機会があれば再編したいと思います。一旦、検索対象から外しました(汗


これまで読んでいただけた方が居られましたら、大変申し訳ありません。書いた分だけは投稿いたします。ありがとうございました。

 エルが起き上がった。気配と音から、鎧を着た兵士が近づいてきているのが分かった。そして少ししてから扉が開かれ、出発が近いとその兵士に呼ばれた。


 裏の通用口から出て表に回ると、エントランスの前に馬車がニ台止まっている。その一台の脇に団長が控えていて、思わず俯いて顔を隠した。


 門の外には既に騎馬が隊列を作っていて、マリエラ様が馬車に乗り込んだらすぐにでも出発できる体勢だ。


 私たちは迎えに来た兵士と一緒に、馬車から少し離れたところに控えた。


 そこへマリエラ様が玄関からゆっくりとした足取りで出て来ると、女中たちに助けられながら馬車の中に乗り込み、その後に続いて団長が乗り込んだ。もう一方の馬車にはお付きの侍女たちが乗り込んで行く。


 私たちもその侍女の乗った馬車に乗るのだと思っていたら


「こちらへ」


 そう言われて兵士の後をついて行くと、さきほどマリエラ様と団長が乗り込んだ馬車に近づいて行く。まさか・・・と思っていたら、その馬車の前で兵士が


「どうぞ」


 そう言って、私たちに乗り込むよう促した。


 中を見ると、向かい合わせの座席の奥にマリエラ様が、同じ列の手前に団長が座っていた。予想通り、私たちは彼にすごい形相で睨まれた。


 私は委縮しながら団長の前を通り過ぎ、奥のマリエラ様の正面に座った。彼女は私たちをちらりと一瞥しただけで、パタッ、パタッと、手に持った扇子を閉じたり開けたりしながら窓の外に目をやり、何か物思いに耽っているようだ。団長は向かいのエルを射るように睨んでいるけれど、エルはそれを無視するように俯いて目を閉じている。


 やがて馬車が動き出した。


 この馬車の前後を護衛兵団の騎馬隊が守っているはずで、窓の外を見ると隣を騎馬が一騎並走しているのが見えた。



 馬車に乗ってから、目の前のマリエラ様は私たちに話しかけるどころか、目を合わせることすら無かった。さっきの形式ばった謁見の事を思い返せば、良家のお嬢様が護衛に気やすく接するなどありえない事なんだろう。そう思ったら、この密室の中でどう振舞えば失礼がないか、考えだして居たたまれなくなった。


「リズ、具合でも悪いの?」


 するとマリエラ様が声を掛けた。


「はい!?」


 それが思いがけなかったので、文字通り飛び上がってしまった。


「だ、だ・・・大丈夫です。」


 するとマリエラ様は


「緊張しているの?さっきの廊下と同じ顔をしてるわよ。」


 そう言って、私を見ながら笑った。


「廊下では作法のことを色々吹き込まれたんでしょ?さっきのあなたのひきつった顔、可笑しくて笑いそうになったわ。」


 そう言われて顔が、かぁっと熱くなった。


「あのお作法はね、私のためじゃなく周りの連中のためよ。だから私たちだけの時は、作法だとか礼儀だとか気にしなくてよくてよ。むしろ私、そういうの嫌いなの。」


 そういうことだから、と言ってマリエラ様は微笑んだ。


「馬車の中では楽にしなさい。」


 そう言われて私はぎこちなく頷いた。


 その言葉でホッとしたとか、緊張が解けたとか、そういうのでは全くなかったのだけれど、なぜか涙が滲んでしまって自分でも驚いた。


 そんな私を見てマリエラ様は


「面白いわね、あなた。」


 そう言って、子供のような悪戯っぽい笑みを見せた。


「ねぇ、屋敷に着いたらこの子たちはどうするの?」


 隣に座っている団長を見て言った。


「先方の警備に合流させます。」


 そのことは確かに依頼書にも書いてあった。


「警備?アナハイムが出すの?」


 アナハイムというのは、今私たちが向かっている、夜会が行われる家の名前だ。


「いえ、例の家が出すそうです。」


「そう・・・それならこの子たちは、ろくな使われ方はしないんじゃなくて?」


 そう言って視線を私に戻したその目の輝きが、良からぬ企みの存在を示唆していた。


「ねぇ、あなた、ドレスやお化粧に興味はない?あなたなら、ちょっと手をかけるだけですごく奇麗になるわ。夜会の会場中の男たちが振り向くようなね。」


 そして扇子で隣のエルを指した。


「エルには執事の格好をさせたらいいわ。きれいな執事になるでしょうね。そう、それで、あなた達を何処かの令嬢とその付添人ということにしてね、社交の間も私の近くで警備してもらうの。うん、いい考えだわ。」


「お嬢様。」


 団長がたしなめた。


「良いじゃない。行き帰りの警備だけなんてもったいないわ。あら、そうしたら男はリズ、女はエルの虜にできるわね。それでみんなの口を軽くさせたらいいのよ。そしたら情報も集め放題よ。警備の他にも私の役に立ってくれそうじゃない!」


「お嬢様、お戯れはそこまでに。」


 でも団長は、そう言ってマリエラ様を遮ると私を睨みつけた。


「お前は護衛の任務に集中しろ。」


 怒られてしまった。私は何も話してないのに・・・


 それから団長は、さも忌々しそうな顔をしてエルを見た。


「お前、索敵は出来んのか?気術使いは出来ると聞いたが。」


「気配を観るのはリズが上手い。能力は上級探索者並みだ。」


「では女、お前は・・・」


 するとマリエラ様が鋭く遮った。


「フリード、この娘にはリズっていうちゃんとした名前があるのよ。」


 団長はマリエラ様に睨まれて目礼を返した。


「・・・リズは索敵に専念しろ。何か異変に気付いたら知らせるように。」

 

 そうして、マリエラ様は扇子を手に窓の外を眺め、エルは俯き、団長がそれを睨む最初の状態に戻った。


 そうなってから、何故か心が落ち着いてきた。


 考えるまでもなく、これは私たちがローゼンハイム家から任された冒険者見習いとしての初めての仕事だ。その責任をきちんと全うしようと、私は周りの気配を探ることに集中した。

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