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鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
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第二十二話 謁見(1)

これまで書きなぐったものを垂れ流していましたが・・・いずれ機会があれば再編したいと思います。一旦、検索対象から外しました(汗


これまで読んでいただけた方が居られましたら、大変申し訳ありません。書いた分だけは投稿いたします。ありがとうございました。

 中庭を出た後、私たちは本邸に向かった。団長との顔合わせは終わったけれど、今後の任務のために協力関係を築く、という目的からすると大失敗だったような気がする・・・


 でも今、また顔を合わせるのはむしろ逆効果だということで、次のマリエラ様への挨拶に向かった。



 セバスさんの後をついて行くと、この間とは違う裏の通用口から屋敷の中に入り、二階への階段を昇って、その先の廊下の中ほどで止まった。


「ここでお嬢様をお待ちします。」


 セバスさんは廊下の先の扉を見やった。その部屋にマリエラ様がいるようだ。


「これからの外出のために、お嬢様が身だしなみを整えておられます。」


 扉の向こうからくぐもった女性たちの声が聞こえる。時折、女中が荷物を抱えてその部屋を出入りするときに扉が開かれ、その間だけ声が喧しくなった。


「さて、それでお目見えの際の儀礼についてなのですが・・・」


 マリエラ様とは、非公式だけれど既に名乗りも上げて見知った間ではあるけれど、ローゼンハイムの家人たちにとっては、私たちは今回初めて雇った冒険者だ。だから彼らの手前、ここで略式の謁見を行うそうだ。


 彼女がここを通りがかる際にセバスさんに声を掛け、そこで私たちに名乗りの機会が与えられる。


「あなた達は臣下ではないので立礼で良いでしょう。ですが、お嬢様からお声がけがあるまでは礼をしていてください。お嬢様からご許可を頂くまで、お顔を直接見てはいけません。それが貴人に対するお作法です。」


 そう言われて、私たちの他に誰もいない廊下で立礼の練習をした。


「リズさんは俯きすぎです、もう少し顔を上げて。いや、今度は上げすぎです・・・」


 セバスさんは私の頭と顎に手を添え、顔を正しい角度に矯正した。


「この角度を覚えておいてください。エルさんはいいですね。実に美しい礼ですな。筋がよろしい。」


 エルだけ褒められてムカッと来たけれど、睨んだらセバスさんに注意されそうだ。


 セバスさんに教えられた角度は微妙で、気を付けないと下を向いて俯きすぎになってしまう。緊張して頬が痙攣しそうだ。


 扉の向こうからは相変わらず女性たちの声が聞こえている。私はふと、セバスさんが貴人と言ったことを思い出した。


「これは貴族の方への礼と同じなのですか?」


 そういえば前回マリエラ様が、この家が貴族の真似事をしていると言っていた。


「ローゼンハイム様ともなると、貴族様と同じお作法を取り入れているのですね。」


 そう言うと、セバスさんは答えずに、ただ柔らかな微笑を返してくれた。今朝からセバスさんと一緒の時間を過ごしてきたけれど、この笑顔は答えに困る質問をしたときに見せる表情だな、と思って不思議に思った。



 しばらくすると、奥の部屋の声が一層大きくなり、扉が開かれて女性たちが出てきた。


「いらっしゃいました。」


 私は、セバスさんに角度を矯正されたときに見えた、壁紙の一点に視線を合わせてから目を閉じた。話し声が近づいてくる。その声の主の一人はマリエラ様と分かる。彼女が私たちの前で止まった。


「あら、セバスティアン、どうしたの?そちらの方達は?」


「護衛のために当家で雇った冒険者の者達です。今回の外出に当たり、お嬢様のおそばで護衛の任に当たらせます。ですので、あらかじめお嬢様にお目見えさせようと連れてまいりました。」


「そう。それはご苦労様。あなた達、顔を見せて。」


 そう言われて私は顔を上げた。


「名前は?」


 彼女と目を合わせるのが正しい作法なのか分からなくて、とりあえず彼女のドレスを見ながら名を名乗った。


 そのドレスはふわりとした空色の生地で縫われていて、その上に淡い赤やピンクの花びらのモチーフと、煌びやかなビーズの装飾が豪華に施されていた。それらはまるで空を舞う花吹雪のようだった。


「では、今日はよろしくね。」


 そう言って彼女は廊下を歩きだし、私たちはまたさっきの立礼に戻る。


 私たちの前を通る人たちから、敵意は無いけれど強く訝しむ視線を感じて薄目を開けると、マリエラ様の後をぞろぞろとついて行く侍女たちの足元が見えた。



 お目見えを終え、私たちは使用人の使う一室に案内されて、兵士の呼び出しがあるまでここで待機するように言われた。


「それではお嬢様のことを、くれぐれもよろしくお願いいたします。」


 セバスさんは恭しく礼をして去っていった。


 その部屋は使用人の休憩室なのだろう。中央にテーブルが置かれ、食事が用意してあった。私たちは机の周りに置かれた丸椅子に座って早い昼食を取った。


 壁際には長椅子が一脚置かれていて、昼食を食べ終わると、壁に寄りかかりながら二人並んでその椅子に座った。


「ちょっと寝たいから、もうちょっと端に寄れよ。」


 エルがそう言うから端に寄ってあげたら、結局追いやられて、お尻がすこし長椅子からはみ出してしまった。でもまだスペースが足りないと視線を送って来る。足を折って寝ころぶのだと思っていたら、足を延ばして寝たいらしい。


「お尻がはみ出してるのよ。もう寄れないんだけど。」


 元々、寝そべるには椅子の長さが足りないのだ。するとエルは


「あっちの椅子に座れよ。」


 そう言って、さっきまで座っていた丸椅子を面倒くさそうに見やった。


”なんで私が丸椅子に?背もたれが無いと疲れるでしょ!”


 そう口にする代わりに無視して目を閉じたら、腿の上に重量を感じて驚いて目を開けた。エルは長椅子の上に仰向けになって、図々しくも私の膝の上に頭を載せている。その上、人に膝枕をさせておきながら意地になって不機嫌そうな顔で目を閉じていた。ムカついて、絶対に場所を譲ってやるものかと私も意地になって座り続けた。


「ちょっと・・・足がしびれるんだけど。」


 まだ寝入っていないのが分かるから、暫くして怒りを含めながら言ったのだけれど一向にどこうとしない。ムカついて拳を作って振り上げたけれど、どこに振り下ろそうか決めあぐねて、代わりに片手を胸の上に置いてトントンとリズムを作りながら、もう一方の手で頭の地肌を掻いてやった。


 不敵な笑みを浮かべながら、嫌がらせに子供の頃に寝かしつける時の仕草をしてやったのだ。でも、子ども扱いされるのを怒って起きるかと思ったら逆効果で、苦虫を嚙み潰したような渋い顔をしながら、そのまま寝息を立て始めてしまった。


 そういえば、禿げ頭に殴られた次の日にこうして頭を掻いてあげたけれど、あの時も拒絶はしなかったな。


 そうしたら、さっきの団長との戦いで疲れているんだろうと思えて来た。あの結界の中で攻撃を受けると、体に傷は出来ない代わりに体力を消耗する。そう思ったら、ため息をつきながらそのままゆっくりと頭を撫で続けてあげた。


 相変わらずムカついていたけれど、でも椅子の長さが足りなくて、エルの足がはみ出してブーツが宙にぶらんと突き出ているのを見たら少し怒りが収まった。


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