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鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
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第二十一話 団長(3)

これまで書きなぐったものを垂れ流していましたが・・・いずれ機会があれば再編したいと思います。一旦、検索対象から外しました(汗


これまで読んでいただけた方が居られましたら、大変申し訳ありません。書いた分だけは投稿いたします。ありがとうございました。

 両者とも剣を構えて暫くにらみ合っていたけれど、最初に動いたのは団長で、走り出て距離を詰めると、両手で持った長剣を水平に払った。


 その団長の動きは美しく、筋の良さと折り目の正しさを感じさせた。


 エルは地を蹴って飛び上がり、彼の目の前の宙で膝を折って逆さま立ちになった。


 そのエルの頭の直下を剣が横薙ぐ。そのとき、通り過ぎる団長の腕にエルが短剣を当てた。でも、カシャッ、という金属の擦れる音がして弾かれた。


「あの鎧はアダマンタイトですね。」


 それならあの鎧は、重たいけれど強度が恐ろしく高いはずで、真正面からの攻撃で鎧を貫くのはまず無理だろう。


 着地したエルはそのまま後ろに下がったけれど、団長はそれを追いかけて剣で鋭く突いた。でもそれを風に舞う落ち葉のようにひらりと躱す。


 そのままエルは前に出るつもりだと分かった。胴鎧と腰当てのわずかな隙間を狙って払いを入れる。でも団長の突き出された剣が、そのまま真横に払われた。


 体勢的にもそれほど力を込められない筈なのに、信じられないことにその払いには十分な重みが乗せられていて、エルは双剣でかろうじて受けたまま後ろに押し飛ばされた。


 団長の予想外の動きを目の当たりにして、彼の身体能力の高さに驚いた。魔法の気配はないし、純粋に腕力によるもののようだ。


 その身体能力にしろ剣技にしろ、それを修得するために、この人はこれまで想像を絶するような過酷な鍛錬を積んできたことが窺い知れた。



 団長は、突きと払いを複雑に絡めながら峻烈にエルを追う。その姿は剣舞のように美しかった。その攻撃で、エルのお腹、腕、そして頬を団長の剣が掠めた。鍛錬場の外だったら、今頃エルは血まみれだ。終始団長が押し、エルがそれを躱した。そして時々、カウンターでエルが刃を当てるけれど、みな硬い鎧で弾かれた。


 でも団長の動きも、だんだんと拙速になってきた。


 必殺のはずの剣は、小さな傷を与えても、ことごとく躱されて勝ちに繋がらない。イライラが募っているようだ。


「避けながら攻撃するばかりでは、この俺の体に傷一つ付けられんぞ。お前の剣技は、その短剣の長さのように足らんのだ。俺に刃を届かせるにはな!」


 苛立ちのはけ口にするために、エルを卑下する言葉を吐き始めた。


「どうした?俺に打ち込むのがそんなに怖いのか?臆病者め!お前のは所詮、卑賤な臆病者が振るう剣だ!」


 王道の剣技は、敵が正面から打ち込んでくることを前提に組み立てられている。だからエルにも打ち込ませようと挑発しているのは分かるけれど、その悪口に腹が立って、私は手に持ったエルのローブをぎゅっと握りしめた。


「お前は恩寵を授けられていると聞いたが、その力を使わんのか?持ってるものなら何でも使え。それを使って正面からかかってこい!」


 団長はそう言って更に挑発した。


”言ったな!”


 私は心の中で呟いた。エルもこちらを向き、私と目が合った。


 エルをバカにする団長の態度には腹が立っていたし、実際のダメージがないとはいえ、エルの体が傷つけられるたびにムカムカしていた。


 団長に見られると怖いので、彼がこっちを向いていないことを確認すると、私はエルに向かって大きく頷いた。


”やっちゃえ!”



 エルの短剣が緑色の光を帯びる。それを見て団長も身構えた。


 エルが前に出るや、団長は渾身の力を込めて剣を横払いした。それをエルは背面飛びで飛び越えながら、仰向けの姿勢のまま短剣を払って喉を襲った。


 入ったと思ったけれど、団長はその驚異的な身体能力で反応し、のけ反ってそれを避けた。


 エルの短剣は僅かに喉を掠ったけれど、実践だったとしても浅すぎて声帯も傷つけられなかっただろう。


 でもその時、団長の首を貫くように魔法陣が現れた。


「な・・・なんだこれは!」


 喉のわずかな傷から流し込まれた気力でエルが魔法陣を構築したのだ。団長は手でそれを除けようと必死に払うけれど、ゆらゆらと揺れるばかりで消えてくれない。


「これは魔法か?・・・いや、これが恩寵というやつか?」


 そう言って睨むと、エルはコクリと頷いた。


「それで風刃を発現すれば、あなたの首が落ちます。」


 すると団長の顔はみるみる赤くなった。


「こちらが正面から向かっても避けるばかり、そしてその隙ばかり狙って反撃する。挙句は、折角の力も姑息な使い方しかしない。剣を堂々と切り結ぶ力も勇気もない!」


 怒りの籠ったドスの効いた声で言うと、勝手に剣を納めてしまった。


「良く分かった。襲撃者に勝てたのは、お前も奴らと同じ卑怯な剣の使い手だからだ!卑怯者には、同じ卑怯者しか相手が出来んのだ!」


 そう言って出口に向かってズカズカと歩き出し、そして途中でエルを振り返り、指を差して叫んだ。


「認めんぞ、そんな卑しい無様な剣などけっして認めんからな!」


 その背中を見送りながらエルが気術を解くと、大股で歩く団長の首から魔法陣がすうっと消えていった。



 オーガのような形相で私たちの前を通り過ぎる団長に、セバスさんは恭しく礼をした。私は、エルが卑怯だと連呼されて心底腹が立っていたけれど、怒気を発する彼を目の前にしたら、セバスさんの隣で小さくなって、隠れるように礼をした。


 中庭を後にする背中を見送りながらセバスさんが呟いた。


「どうしたものですかね・・・」


 彼の上品な顔に困惑がはっきりと浮かんでいだ。


 でもエルが出た時点で、結果がこうなるのは分かっていた。


 この子の攻撃はカウンターが基本。それに対し団長は、直情型で正面から力で押すタイプに見え、実際その通りだった。これまでそういう敵は、自滅するようにしてエルに倒されてきた。彼に翻弄されて、怒って冷静さを失うからだ。そして団長も予想通り怒らせてしまった。最初から、彼にとってエルは相性が悪いと思っていた。


 エルが戻ってきた。


 そこで改めて団長の言葉を思い出した。この子に何度も卑怯だと悪口を言ったけれど、馬鹿正直に正面からしか来ない方がおかしい。そう思うとまた腹が立った。


 剣が掠めたお腹と二の腕を触ってみたけれど、怪我もなく、服も傷ついていなかった。顔を見上げて切られたはずの頬も撫でてみたけれど、そこにも傷は無くてホッとした。


「結局、お名前を名乗っては頂けませんでしたね。」


 私たちを見ながらセバスさんは苦笑いした。


「あの方は、当家の護衛兵団長のフリード様です。お嬢様の護衛の際は、お二人と一緒に働いてもらう事になります・・・」


 上手くやっていける気が全くしなくて、私は暗い気持ちになった。でも隣のエルの手をギュッと握ると彼の瞳を見つめた。


”いいのよ。さっきはよくやったわ”


 頷きながらその気持ちを目で伝えてあげた。


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