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鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
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第二十一話 団長(1)

毎週、月、水、金曜日の0時更新予定です。

 次の日の早朝、私たちはローゼンハイム屋敷を訪れた。


 門番に訪いを告げようとしたら、詰め所から鎧を着た兵士が数人出てきた。皆、腰に剣を佩いている。普通、平民のお屋敷の門番は重武装などしないから、先日のマリエラ様の誘拐事件で警備を強化したのだろう。


「ギルドの中央支部に派遣された冒険者です。」


 私たちはフードを外して胸のプレートを見せた。


「執事長のセバスティアン様から、ここへ来るようご指示を頂いています。」


「少し待て。」


 兵士が答え、別の兵士がお屋敷の方へ走って行った。



 暫くして、セバスさんがやって来て私たちを敷地内に入れてくれた。


「装備の方は、問題なく新調できましたか?」


 二人でセバスさんにお礼を言ってから、私はローブの前を開いて見せた。


「結構です。あなた達のスタイルに合った装備だと思います。」


 私は、真っ黒ですね、なんて言われたらどうしようと密かに心配していたけれど、セバスさんの満足そうな顔を見てホッとした。


「紹介いただいた武器屋の店主さんに選んでもらいました。」


「あぁ、あそこの主人は私の昔馴染みでしてね。信頼する職人の一人です。私が冒険者だったころ、よく世話になりました。」


 すると兵士が三人、並んで向こうからやってきた。セバスさんは脇によけて道を譲り彼らに礼をしたので、私たちもそれに倣ってぎこちなく礼をした。お屋敷の敷地を巡回しているようで、前回訪れたときより確実に警備は手厚くなっている。


 そうして屋敷のポーチの前まで来た。前回来たときは、屋敷へ入るのにここを曲がって裏手の通用口まで歩かされた。


「こちらへ。」


 今回も、やはり玄関からは入れてはもらえないようで、ポーチの手前で、この間とは反対の方向に曲がって屋敷の奥へ続く道を案内された。


 玄関から招き入れられる身分でも立場もないから当然なのだけれど、でもこの敷地に入るとき、裏の使用人のための通用門ではなく正門から入れてもらえたのだから、それだけでも貧民では考えられない好待遇だ。


 隣を歩くエルを見ると、いつの間にかマスクを外していた。


”今、私は貧民ではなく、ギルドから派遣された冒険者見習いだ”


 そう自分に言い聞かせ、ローブの中にしまった髪を出して、手を頭の後ろに回してマスクを止めるボタンを外した。



 屋敷の横を通り抜けると、セバスさんは裏手へは回らず、背の高い生垣に囲まれた敷地の奥へと続く道を歩いて行った。


「裏の通用口からお屋敷に入るのでは?」


 セバスさんに聞くと


「いえ、まず奥の離れの屋敷にご案内します。そこが我が家の護衛兵団の詰所になっているのですが、あなた方には彼らに協力してマリエラ様の警備に当たっていただきます。それで今から、そこの団長様にご挨拶に行きます。」


 そういって微笑んだ。



 生垣の先はカーブになっていて、このまま生垣が続いているように見えるけれど、実際はカーブの先ですぐに切れていた。街中の敷地だから、広いとはいえ広大という訳ではなく、生垣や庭園で敷地内を広く見せる工夫が随所に施されているようだ。


 少し先に離れの屋敷が見えた。二階建てで、白い壁にオレンジ色のスレート葺き屋根をもつ建物で、本邸に比べれば劣るけれど、小洒落た立派な建物だ。


 いま歩いている白い砂利道がその玄関まで真っ直ぐ続いていて、その左右は芝の張られた庭になっていた。


 この離れと周りの芝の庭は、本来ならシンプルだけれど落ち着いた雰囲気の場所なのだろう。けれど、今はその庭に幾張りものテントが立てられその景観を壊していた。


 テントの中には木箱がたくさん積まれていて、その間を兵士たちが忙しそうに行き来していた。


 屋敷の中も騒然としていた。セバスさんに連れられて廊下を歩きながらいくつかの部屋の前を通ったけれど、どの部屋も中には机だけがいくつか置かれ、人が出たり入ったりしていて忙しなかった。


「この護衛兵団は最近編成されたんですか?」


 そう問われてセバスさんは微笑み、少し間を開けてから答えた。


「いえ、兵団自体は昔からありましたよ。」


 でもさっきのどの部屋も、空っぽだった部屋を急ごしらえで整えたようにしか見えないし、庭のテントも明らかに仮設で、彼らが昔からここで活動していたようには思えなかった。


 兵士たちが着る鎧にも違和感を感じた。


 普通、貴族の私兵達の鎧には胸に主家の紋章が装飾されているはず。でもここの兵士たちの鎧は無紋だった。ローゼンハイム家が貴族ではないからなのだろうか?


 そんな事を考えているうちに、廊下の突き当たりの広い部屋に着いた。



 南向きの壁はガラス窓で占められていて、外からの光でレースカーテンが輝き、部屋の中はとても明るかった。


 部屋の真ん中が通路になっていて、その両側に通路に向き合う形で、書類が積まれた机が幾つも並べられていた。そしてそれぞれの机に事務官らしき服装の人が座っていて、手元の書類と向き合っていた。


 正面の壁の前には大きな机が置かれていて、そこに鎧を着た兵士が座っている。深紅の立派なマントを羽織っているから、この人がこの兵団の団長様だろう。


 歳は四十前後といったところだろうか?赤い髪を短く刈り揃えていて、鼻下には同じ色の形を良く整えられた髭があり、肌は日に焼けていて精悍さが滲んでいた。


 その気配からは、実戦を多く経験した練達者といった印象を受けるけれど、その割に鎧がピカピカで真新しく、なんだか不釣り合いな印象を受けた。


 数人の兵士や官吏たちが、彼の決裁をもらうためか、書類を手に彼の後ろを取り囲んでいる。


 セバスさんはその机の前に立ち、私たちは更にその後ろに控えた。そして団長から話しかけられるのを待った。


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