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鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
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第十八話 魔狼の群れ(2)

毎週、月、水、金曜日の0時更新予定です。

 その隙に木々の切れ目にたどり着き、その間に出来た道を、川辺に向って速度を維持したまま疾走する。二十mほど先が草むらだ。今度はアンナを先頭に、私が左、エルが右に並んでその後ろを走る。


ハッ、ハッ、ハッ


 短い呼吸がすぐ後に聞こえる。獣道から追ってきた残り二匹が私とエルの背後に迫っている。


 その二匹が同時に、私たちの背中に向けて飛び掛かった。


 その瞬間私たちは左右に飛び退き、直後、そこに魔狼たちが飛び込んできた。私は青く光るレイピアでその頭を側面から突いて脳を貫き、エルは緑に光る短剣で斬撃を飛ばしもう一匹の首を刎ね飛ばした。


 四肢に力を失い声も無く崩れる魔狼の躯を追い越して、木々の間の道を抜け切ったところで急停止。アンナはそのまま草むらの中へ走ったようだ。


 振り返り並んで剣を構えると、獣道を追って来た残り一匹と、待ち伏せしていた二匹が遅れてやって来て、立ち止まって私たちと対峙した。


グウゥゥゥゥ・・・


 狼たちは赤紫色の歯茎が露になるほどに牙を剥き、唸りながら威嚇してくる。そしてこちらの隙を伺うために、私たちを睨みながらウロウロと動き回る。


 彼らのその動きが止まった瞬間、突然三匹が並んでとびかかって来た。一匹は私に、もう一匹はエルに牙を剥きながら襲い掛かる。そして真ん中の一匹は、私たちの間を通り過ぎ、そのまま草むらのアンナに向かって行った。


 その攻撃を避けながら、私はアンナに叫んだ。


「アンナ、逃げ・・・」


バリバリバリッ


 でもその声を、耳を劈くような雷鳴の音がかき消した。


 アンナは魔術杖を手に草むらに立ち、襲い掛かる魔狼を雷魔法の一撃で黒焦げにしていた。


「私はいいから、あんた達は目の前の敵に集中しな!」


 そうだった・・・アンナは凄腕の魔術師でAランク冒険者だった。私の助けなんかいらない。彼女の言に従い、アンナの事は意識から外し目の前の敵だけに向き直った。


 魔狼は相変わらず牙を剥いて威嚇してくる。鼻から血を流しているから獣道で飛び掛かってきた個体だ。目が怒りで血走っているから、ここでさっきの突きの仕返しをするつもりのようだ。


 その前で、私は剣を構えながら姿勢を低く取ると、体の大きい魔狼が私を見下ろす格好になった。


 その姿勢のままジリジリ後退すると、魔狼もそれに合わせて前に出る。


 その時、草の根に足が引っかかり私の体が後ろに傾いた。


 その機を見逃さず、魔狼は口を大きく開けて眼下の私に噛みついて来た。でも体を噛み砕こうとしたその口は、何もない空間を空しく噛んだだけで終わった。


 足を取られ倒れそうになったのは、この攻撃を誘うためのフェイクだった。


 体を後ろに倒した瞬間、私は地を強く蹴り背面で宙返りした。宙で逆さま立ちになった時、眼下に私を噛み砕こうと突き出した魔狼の頭があって、そのままその脳天を、青く光り魔法陣を纏うレイピアで刺し貫いた。


 魔狼は短い悲鳴をあげると、そのまま動かなくなった。


 エルを見ると彼は腹ばいで横たわった魔狼の隣に立っていて、足元の首は半ばまで切り裂かれ、そこから血がドクドクと溢れ出ていた。


 魔狼を倒したのはエルの方が先だった。そして危なくなったら助けに入ろうと私を見守ってくれたようだけれど、悔しかったのでそれには気づかないふりをした。



***



 追尾してきた魔狼達を倒して一山越えたけれど、それに安堵する時間はそう長く与えられなかった。


 木々の間の道を、一際大きな、熊ほどの体躯の最後の一匹が音もなく近づいてくる。アンナが言うようにこの群れのボスのようだ。その目は、配下を殺された怒りと、その仇を取ろうとする殺気が漲り、血走って赤く光っていた。


 今までも大きな魔狼と戦ったことはあったけれど、目の前のボスはそれらより飛び抜けて大きかった。


「こいつは上位種のウォーグウルフだね。しかもかなり大きい。」


 魔物は、峻烈な生存競争を勝ち抜き長い時間生き残った末に上位種へと進化する。だから年を経た体の大きい個体ほど力も強く、そして幾多もの死闘を経験して老獪になる。


「手助けが必要かい?」


「連携の仕方がわからない。二人で当たるから危なくなったら援護してくれ。」


 魔狼のボスと睨み合いながらエルが後ろのアンナに答えた。


「あんた達、分かってると思うけどこいつは魔法を使うよ。気をつけな。」


 私たちはそれに黙って頷いた。



 ボスは歯をむき出しにして私たちを威嚇する。その口からは鋭い牙が覗いていて、あれで噛まれたら骨まで砕かれるだろう。


 ボスは私とエルを交互に睨むと、いきなりエルに向って襲い掛かった。


 エルはその攻撃を避け、川沿いに後ろへ飛び退いた。草むらは、そのすぐ脇にまで森が迫っているから横幅が狭い。けれど川に沿って動けば距離を取れるから、ボスをこの草むらの中に誘導したい。魔狼のボスは、その思惑に乗せられたように逃げるエルを真っすぐ追う。でもボスとしては、一番の脅威であるアンナから私たちを引き離したいのかもしれない。


ガウッ!


 ボスは後ろ向きに逃げるエルの腹を食い破ろうと、鋭い牙を剥きだして首を突き出した。その牙が届く直前、エルは地を蹴って大きく後ろへ飛んだ。


 その時、エルが着地しようとする地面に赤い魔法陣が真っすぐに並んで現れた。魔狼のボスが構築した炎系統の魔法陣だ。


 直後、魔法陣から炎が噴き出し一直線に並ぶ紅蓮の炎が幕のように立ち上がった。

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