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鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
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第十七話 魔術師アナベル(3)

毎週、月、水、金曜日の0時更新予定です。

「でも、そうだね。見た感じ、戦闘に関しちゃ教えることはなさそうだ。私が教えられるのは魔術だけだし。でも・・・」


 そして苦い顔になって目を瞑った。


「別な面で教える事は色々ありそうだ。いや、学ばせなきゃいけないことが山ほどあるね。」


 その言葉を聞いてラシーさんは目を見開いた。


「じゃあ、引き受けてくださるんですか?」


「この子達がうんと言ったらだけど。」


 それを聞いて、ラシーさんの表情がパッと明るくなった。女性に短くお礼を言うと、今度は私たちに向き直って机に身を乗り出してきた。


「昨日アナベルさんがいらした時、あなた達の事を話してみたんです。こちらに暫く拠点を移すと言うことだったので、あなた達をサポーターとして雇ってもらって、アナベルさんのお仕事をお手伝いさせてもらえないかって。」


 そう言って隣に座る女性を見た。その表情から、ラシーさんはこの女性の事を心から信頼している事が分かった。


「お二人が強いのは知ってますけど、でも優秀な冒険者になるには、色々な人たちと交わって知識や技術を吸収しなければいけないと思うんです。それに見習いのあなた達は、誰かと一緒でなければ冒険者としての経験を積むことは出来ません。」


 冒険者見習いは単独で依頼を受けることができないから、正規冒険者と組まなければまともなギルド活動は出来ない。


「ローゼンハイム様からの指名依頼が無い時で良いので、アナベルさんのお手伝いをしてみてはどうですか?そうすれば冒険者としての経験も積めますし、あなた達の収入も安定して一石二鳥だと思うんです。それにね・・・」


 そして、彼女は居住まいを正して私たちにまっすぐ向き直った。


「受付としてこれまで冒険者の方達をサポートして来た経験から断言できます。アナベルさんと一緒なら、あなた達はきっと、もっと強くなれますよ。」


 ラシーさんはそう言うけれど、でもこの人の事を良く知らないし、信じる事はまだ出来ない。エルだって警戒している。それでも、強くなれるというラシーさんの言葉は心に残った。


 その時、ラシーさんの隣に座る女性を見て、ふと、また懐かしい感じを覚えた。


”・・・母さん?”


 女性を見て何故か、死んだ母さんのことを思い出した。


 髪色も、瞳の色も母さんとは全然違う。顔も、雰囲気も、声も喋り方も、母さんとかけ離れている。


”でもこの人の魔力・・・母さんの魔力と同じ匂いがする”


 女性の纏う魔力、それは研鑽を積んで魔術を極めた魔術師が身に纏うものだ。そしてそれは、記憶の中に残る母さんの魔力と同質のもの。そう思ったら、唐突に母さんのことが恋しくなって胸が締め付けられた。


 私に恩寵が与えられていることは生まれたときから分かっていたから、やがて水の気術使いになって、父さんと共に戦うのだと物心ついた頃から思っていた。そうなった時に多彩な魔法で自身の身が守れるようにと、母さんは私に魔法の事を教えてくれた。そしてエルが家に来てからは、二人で一緒に母さんの魔法の講義を受けた。


 気術を使った小規模魔法であっても、幼い内は魔法を暴走させる恐れがあるからと、それは座学のみの講義だったけれど、母さんは時に厳しく、そして殆どの時は優しく、様々な魔法の知識を授けてくれた。


 それは結局、短い時間しか許されなかったけれど、母さんが与えてくれたその魔術の知識は、今、私たちが戦うときに折々で役立っている。そして優秀な魔術師であるこの女性と行動を共にして、母さんが教えてくれた魔術のその先を間近で見ることができれば、私たちはもっと強くなれるかもしれない。


「お願いします。」


 私はラシーさんに向って思わず頷いていた。でも私が勝手に下したその判断に、エルは反対していないのが彼の気配から分かった。


 それを聞いて、女性は無造作に手を差し伸べて来た。


「よろしくお願いします。アナベルさん。」


 でもその手を取ろうとしたら、彼女はそれを避けてヒョイと手を引っ込めた。


「私の事はアンナとお呼び。それから、冒険者同士で敬語は無しだ。」


 そしてもう一度差し伸べられた手を、私は改めて握った。


「よろしく・・・アンナ・・・」


 すると彼女は柔らかな笑顔を見せて、私の手を強く握り返してくれた。


「さて、そうと決まれば、早速仕事に出かけようか。」


 それを聞いて驚く私たちを尻目に、アンナは勝手に話を進める。


「西の森に調査と採取に出かけるから、あんた達はサポーターとしてついて来な。今すぐ立てば日が変わる前には帰って来られるよ。」


 そうして俄かに私たちの出立が決まると


「急いで手続きを済ませて来ます!」


 そう言ってラシーさんは慌ただしくカウンターへ走って行った。


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