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鉄屑拾いの剣姫  作者: エビマヨ
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第十二話 認定試験(1)

不定期更新もありますが、基本毎週、月、水、金曜日の0時過ぎに更新予定です。

「あなた達にお話があります。こちらに来て頂けますか?」


 受付の女性に誘われ、私達はギルドホールの端の、誰もいない長机の席に着いた。


「あの・・・さっきは、エルを止めてくださってありがとうございました。」


 私はペコリと頭を下げた。あの時、エルは身の縮むような凶悪な殺気を放っていた。でも彼女は、そんな圧をものともせずに割って入ってくれた。

 

「いえ、あの位、大した事ではありませんよ。ここでは、ああいうトラブルは日常茶飯事ですし、その対処も私たち受付の仕事の一つですから。」


 事も無げに言う彼女は、小柄でおとなしそうな見た目とは裏腹に、肝の座った強い心を持っているようだった。


「それより、リズさんでしたね。お怪我はありませんでしたか?」


 カイエンに掴まれた腕をローブから出して見てみたけれど、手首に少し痺れたような感覚が残っているだけで、痣や内出血などの傷も無かった。私が頷くと、彼女も小さく頷いた。


「それで・・・実は、あなた達の冒険者見習いの登録についてなのですが・・・」


 彼女はそう言って少し居住まいを正した。


「一応認めてもらえましたが、条件付きです。あなた達には認定試験を受けてもらいます。」


 全ての冒険者にはAからFまでのランクが付けられていて、新規に冒険者に登録された者、つまり駆け出しの冒険者は、特別な事情が無ければ皆Fランクとなり、そこから実績に応じてランクを上げて行く。


 最高ランクがA。でもそのさらに上にSランクと言われる階級もあるそうだけれど、それは国によって認定される特別なもので、だから実質、冒険者ギルドでの最高ランクはAランクとなる。


 そしてランクアップのために冒険者は認定試験を受けることになっていて、その試験では魔道具を使って召喚した魔物たちと戦う。


 今回は、私たちが見習いとしてギルドに登録してもらうために、その認定試験を受けることになったのだそうだ。


 その説明をする彼女の顔に、一瞬翳が差した。


「でも・・・見習いの認定試験なんて、今まで聞いたこと無いんですけどね・・・」


 セバスさんも試験の事など話していなかったし、登録は書類を書くだけで終わると言っていた。それに彼女の口ぶりからも、そんな試験は一般的ではないようだ。


 何か、悪意のようなものを感じた。


 普通の人たちと同じ事をしようとすると、必ず悪意を向けられる。


 やっぱりここでも疎外されるのかと思ったら、私は思わず身を硬くしてしまった。


 そんな様子を見て、魔物と戦うと聞かされて緊張しているのだと思ったようで、彼女はまた柔らかな笑顔を私に向けてくれた。


「魔物と言っても、召喚される魔物の強さは試験のランクに応じて変わります。見習いの方が認定試験を受けるなら、多分、戦って頂くのは最低クラスの魔物になると思います。そうですね・・・スライムとか、ホーンラビット・・・ちょっと難しいところでは大コウモリとか・・・飛びますので。」


 そこで彼女は、思い立ったように私とエルを交互に見た。


「ところであなた達、これまで魔物と戦った経験はありますか?」


 私が頷くと女性はホッとした表情を見せた。


「それならきっと大丈夫。試験をクリアできますよ。それに試験ではケガをする心配はありません。試験会場となるギルドの鍛錬場には特殊な結界が張ってあって、その中で負ったどんなダメージも無効化してもらえるんです。ただ、本来命を落とすほどのダメージを負った場合は、気を失ったりもしますけどね。」


 その時、受付カウンターの奥の扉から数人の職員らしき人たちが出てきた。あの扉は、裏の冒険者ギルドの事務棟に繋がっているのだそうだ。


「さあ、では試験会場に向かいましょうか。」


彼女に促されて私たちも席を立った。



 事務棟から出てきた職員たちは、長机の間の通路を通りギルドホールの奥に向かっていった。彼らの一人は、水晶球がはめ込まれた魔道具らしき物を持っている。あれで魔物を召喚するのだろうか。


 受付の女性と一緒に彼らの後について行くと、ホールの奥に大きな扉があり、その先は下へ降りる階段になっていた。何度か折れ曲がりながら階下へ行くと、広い地下室に出た。


 そこは地上のギルドハウスの何倍もの広さで、しかも三階建ての建物がすっぽり入るほどの高さがある。その高い天井からは、魔光石のライトが無数にぶら下がっていて、中は昼間のような明るさだった。


 地下室の地面は固そうな土で覆われていて、胸ほどの高さの板壁で丸く囲われた大小のスペースがあった。


「あれが鍛錬場で、あの板で囲まれている内側に、さっき説明した結界が張られています。認定試験はあの大きなところで行います。」


 受付嬢は中央の一番大きな鍛錬場を指さした。板壁に丸く囲まれたエリアの直径は百m(メナリ)ほどもあり、冒険者パーティーの戦闘訓練などに使われているそうだ。今も何人かの冒険者たちが剣を交えて戦っていて、そしてその周りの板壁を仲間らしき人達が取り囲んでいた。その中にはさっきの男の子たちの姿も見えた。


* 1mメナリ= ほぼ1メートルです。

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