ショートホラー第11弾『お化けマンション』
体調が優れなくて8月中に間に合わなかった―
「あそこ出るらしいぜ。ほら、あの『お化けマンション』。本気でヤバいらしい」
そんな噂が怖い物好きな俺達の間でささやかれていた。
『お化けマンション』とは街外れに建っている古びた5階建てのマンションだ。
高度経済成長の時代に建てられた当時は多くの入居者が居たが老朽化と街の中心へのアクセスのしにくさなどから住民がどんどん減ってしまい、今では誰も住んでいないとか。
何人も屋上から飛び降りて亡くなっており、その幽霊が出るだとか。
あるいは凄惨な殺人事件があって犯人は未だに捕まっていない。その犠牲者が苦しむ声が夜な夜な聞こえるだとか。
大学生になって幾つもの心霊スポットを回っていたがまさかこんな身近にあるとは。
俺はその話を聞いた翌日、さっそく授業をサボってお化けマンションへと赴いた。
錆だらけの手すり。所々割られたガラス。
これって何か変な奴がたむろしているとかでヤバいんじゃないよな?
エレベーターもあるみたいだがフロア表示を見ると奇数階にしか止まらないらしい。
何だよその不親切な仕様。まあ、エレベーターがあるとはいえやっぱりこういうのは階段で上がらないといけないよな。
というよりエレベーターが止まったらヤバいし。
1階ずつ階段で昇って行き5階へ。
人が住んでいる気配はない。
噂によると殺人事件が起きたのは5階にある503号室だとか。
503号室の前に立つ。割れた小窓から中を覗くと人の気配は皆無。
次にドアノブを捻ってみると……開いた。
「これ、中に誰かいるとか無いよな?」
埃っぽい部屋は誰か住んでいるという気配もなく、当時の生活を思わせるものも何もない。
血の跡くらいあったら面白かったのに、そんな事を考え部屋を見回り外へ出た。
そこで異変に気付いた。
「ッッ!?」
5階にあるすべての部屋の扉が、開け放たれていた。
「な、何だよ!?一体どういう……」
そしてさらに気づく。
エレベータが…………動いている。
1階から3階、そして…………
何かが上がってきている。
もしかして不能侵入だと通報があり警察が来たのか?
否、警察だったらどれほど良かっただろう。
チンッ!と音がして扉が開くとそこにはサラリーマン風の男が立っていた。
「ッッ!?」
何でこんな所にサラリーマンが!?
いや、何よりもこのサラリーマン、何処か昔風な感じが……
サラリーマンは全ての部屋が空いているという異常な状況など気にせず淡々とした表情でゆっくりとこちらへ向かって歩き出した。
ヤバイヤバイヤバイッッ!!
俺はサラリーマンに背を向けると階段目掛け奔り転がるようにして1回まで駆け下りてマンションから離れた。
途中、一度だけマンションを振り返り、見てしまった。
手すりから身を乗り出してこっちを見る、『大勢の人達』を。
もう心霊スポット巡りなんて辞めるよ。
だってあんなもんが見えちゃったらもう……




