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自分史のきっかけ
生涯事項として自分史を記しておこうと思いつつ、今日の明日のと延び延びになっていたところ、孫のhisaからこの手帳を授かり、やうやく時機到来とばかりに入院を機会にその気になった訳である。
さて、何から取上げてよいやら、一口に言って自分史と言い乍ら、すでに年齢87歳数か月を経過し、家系から言えば篠山出身の勝之助爺さんから、養子である喜一郎、そして今在る自分、茂である。
爺さんの女系家族であった家系は概して温厚で男尊女卑の一族であったように思はれる。故にここに記し止めておくのは、主として親父と自分の過去を重点に書き止め、同時に約10年に及ぶ軍隊(捕虜期を含む)生活状況を知っていただきたいと思ってペンを取った次第である。
記憶を遡ることは可成り明晰な記憶力と当時の状況把握に徹していなくてはならないし、その自信も誠に心許ない。然し、意を決して書き止めて置こうと心に決めた以上は、今更翻すことはことはできない。