その30 《テーマ・アニメ》 『三人目の綾波レイ』についてうすく語ってみる②
性懲りもなく、もう一つだけ、不謹慎にたとえてみます。
みなさんはKKドラフト事件というのをご存知でしょうか。
もう三十年以上も前の話になりますが、当時の高校野球を沸かせ、後のプロ野球界でもスター選手となっていった桑田選手と清原選手は、同じ高校のチームメイトにしてライバルでした。
清原選手は巨人にいきたくてしかたがなくて、桑田選手が進学を希望していたこともあってか、ドラフト会議での巨人の清原指名はほぼ確実ともいわれていたのです。
しかし、いざふたを開けると、プロにはいかないと明言していた桑田選手を巨人が指名、清原選手は失意のうちに西武ライオンズのユニフォームを着ることとなったのです。
それが清原選手にとってのバネとなったかどうかはわかりませんが、彼の心にわだかまりを残す結果となり、桑田選手自身がピュアな心の持ち主であったとしても、長きに渡り二人の関係をこじれさせる原因となってしまいました。
これを無理やりエバンゲリヨンに当てはめてみます。
ドラフト会議をDNAみたいな螺旋の使途戦だとすると、ドラフト前までの、力を合わせて甲子園で優勝した頃の二人は、互いの仲を認めあう親友だったはずです。
この時の桑田選手が二人目の綾波レイに相当します。
清原選手も桑田選手のことを信頼しています。
そして運命のドラフト後の桑田選手こそが、三人目の綾波レイということになります。
清原選手同様、シンジ君が欺かれていたと感じてしまうのも、無理はありません。
綾波の行動には一貫性があるものの、結果的にそれまで信じてくれていた人間を欺いてしまったという点では共通点があります。
三人目の綾波レイにドン引きした理由も納得できます。
これがもしなんらかの理由で清原選手がドラフト会議を回避していたらどうなったでしょう。
巨人の桑田選手指名に驚きは隠せないでしょうが、そこまでこじれることはなかったはずです。
前もって、実はおまえに遠慮していたんだけど指名を受けないっていうから俺が受けてみた、おまえの分も頑張るから来年は同じユニフォームを着ようぜ、とでもいっておけば、逆に美談となったことでしょう。
実際のドラフト会議後の桑田選手は清原選手に声をかけることすらできなかったはずですが、ドラフト会議を回避した清原選手は疑うことすらせず、桑田選手に感謝すらしています。
桑田選手にとってはどちらも同じ結果なのに、清原選手にとっては、その前の分岐点で天国と地獄ほどの差が出ています。
清原選手の心理の違いこそが、シンジ君のおかれたそれぞれの状況ともいえるのではないでしょうか。
もしくは、桑田選手がシンジ君で、清原選手が綾波レイなのかもしれません。
念のためにいっておきますが、桑田選手は決して清原選手を欺いていたわけではありません。
悪いのは当時の大人達です。
さまざまな憶測が飛びかい、実際のところ何十年たった今でも真相は闇の中でしょうが、大人達の画策や情報戦に翻弄された当時の二人の心境は察するに忍びありません。
彼らはともに被害者なのですが、割り切ることさえできれば、もっと二人とも幸せになれたはずです。
それが簡単には受け入れられないほどの強いこだわりとプライドがあったからこそのプロアスリートであり、その心理を軽んじてもてあそぶかっこうとなった当時の関係者達と、碇司令の思慮の甘さと他人を見下した態度がダブって見えます。
まことに不愉快なたとえですみません。
ここまでのくだりはなかったことにしてください。
新劇場版はおなかいっぱいです。
ぽかぽかしちゃうとかいいながらアクティブに動き回るレイを見て、これもアリだと思った人がいるかどうかはわかりませんが、自分的には超ガッカリもいいところでした。
できの悪い二次創作を見せられているようでした。
製作者側の意図どうり、まったくの別物だと思っているので、好きな方には申し訳ありません。
自分にとってのエヴァンゲリオンは、テレビ版の第二十三話で終了です。
それ以降は蛇足です。
カヲル君のお話は、最終回の後の後日談的なものだということで……
多くは望みません。
二十五話と二十六話を本来の形に作り直し、笑えばいいと思うよ、のところの笑顔を差し替えてくれさえすれば。
ということで。
ではまた。




