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その29 《テーマ・アニメ》 『三人目の綾波レイ』についてうすく語ってみる①



 エヴァンゲリオンに出てくる綾波レイが好きです。



 いろんなところで考察されていて、今さらドヤ顔で語るのもなんですが、ぶっちゃけると、二人目の綾波レイだけが好きです。


 三人目は、別人です。

 自分的には、綾波レイではありません。

 だからあまり好きではありません。


 二人目と三人目の違いはというと、シンジ君がピンチに遭遇したか、しなかったかという時間軸の違いだけです。

 中身はまったく同じ綾波レイです。

 でも全然違います。

 だからあまり好きではありません。


 ちなみに一人目はただのクソガキです。



 レイが助かって(?)ほっとした方もたくさんいらっしゃるとは思います。


 綾波さんの性格ならば、たとえ三人目であってもシンジ君がピンチになっていれば迷わず助けに入ったことでしょう。


 でもピンチの場面にはいあわせていなかった。


 これはレイの人生にとって大きな分岐点です。



 何をそんなにこだわっているのかとお思いでしょう。

 でもその小さな違いが、本物と、あふれ返るあまたの亜流達との違いにも通じる大きな差でもあるのです。



 自分は出不精なので、あまり外へは出ません。

 ですが、急にフライドチキンが食べたくなって外に出て、近所の人を車で撥ねて死なせてしまったとしたら、たぶんその後の人生をかけて、償うことになると思います。

 ああ、あの時、フライドチキンを食べたいと思わなければ、と思いつつ。


 その動機の違いだけで、その後の人生はまったく異なったものになります。


 いくら嘆いても、フライドチキンを食べようとしなかった自分の人生には戻れません。


 反対に、フライドチキンを食べようとしなかった時間軸の人生では、自分が人を撥ね殺してしまうなどとはこれぽちも思わず、ただ、ああフライドチキンが食べたかったな、メンドがらずに買いにいけばよかった、と思うだけで暮れていきます。


 我慢したことによって自分が救われていたことなど知らずに、小さな後悔をずっと反芻し続けます。


 その後の結末がまるで違っているのに、結果的にフライドチキンが食べられなかったことだけが共通事項とはなるのは皮肉です。



 これがよく自分が作中で多用する、運命は変えられない、という部分です。



 当然のことですが、フライドチキンを我慢して罪を犯していない方の自分の前に、その世界では死んでいない近所の人が鬼の形相で現れて、あんたよくも別の世界でわしを轢き殺しやがったな、と言われても、ポカーンとなるはずです。

 言いがかりもはなはだしい、この人頭がおかしいんじゃない、と。


 不適切なたとえで申しわけありませんが、これが二人目と三人目の違いです。


 同じ綾波レイでも、その後、過ごしていく人生がまったく違うのです。


 ドラえもんでいうところの、のび太がジャイ子と結婚しなくても、その後にジャイ子の遺伝子を持つ誰かがのび太の子孫と結婚すれば、せわし君が生まれてくる理論も同じはずです。

 せわし君が生まれてくる結果はかわらないのに、しずかちゃんと結婚するというジャイキリをのび太は達成しています。


 たら、れば、の話になってきますが、中学の時に卓球部ではなくてテニス部に入っていたら、もっとモテていたかもしれないぞ、と思うことがあります。

 でも、たぶんなじめずに、結局まわりまわって卓球部なんだろうなとも思います。

 モテないという結果もかわりません。


 運命は変わらない説です。


 でも、少なくとも、いい方か悪い方かのいずれかに、何かがかわっていたはずです。

 あの人ってなんかちょっとだけ前とかわったよね、といわれることになったかもしれません。

 それだけで、他人から見たら別人になっていたということでしょう。


 三人目のレイはシンジ君を助けてはいません。

 まったくのパラレル人間です。


 ヤシマ作戦や十九話で特攻していった人間とは別人です。


 別人である二人目に嫉妬心すら抱いているのではないでしょうか。


 その後から映画までの流れをたどっても、ただのシンジ君の信者になってしまっているような感じがします。


 つまり、


 自分が作品に惹かれた時の極めて大きな構成要素でもあった、あの時の『綾波レイ』ではないのです。


 ヤシマ作戦を通して強い信頼と絆を感じたレイは、盲目的に崇拝する信者なんかではなく、シンジ君が間違った道を選択すれば、自分の命をなげうってでも正してあげるような強さがあったはずです。


 エンディングのくるくるは、その悲しい運命を暗示しているようで、せつなくなってきました。


 あ、これは絶対死ぬな、と、初見で、死を連想してしまいました。



 気持ち悪い話で恐縮ですが、自分ならばそんな数奇な運命にある彼女を救ってあげられる存在になれるかもしれない、と考えている人は、かなりいたのではないでしょうか。


 育成計画はそんな人達のためのゲームなのでは。


 当然やりましたけど。



 ということで。


 ではまた。





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