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16 第一回大臣会議

「ふふふ。茸も侮れないものだな。俺の【空腹】が正常値になった。茸鍋、万歳だ!」


 ========☆

 大神直人


 HP  0100

 MP  0100

 【空腹】0100 

 ========☆


 俺は、水やりをしていた。

 その間、四柱の女子高生女神達は、ゴザのような敷物を作った。

 ヤシの実に似た殻は、井戸の辺りに沢山落ちている。

 その実から繊維を毟って、縦横に重ねる。

 できたものは、百合愛さんが一番小さかった。

 お尻が細いのな。

 どちらかと言えば、スレンダーじゃない方が好きだが。

 まあ、今はやることがあるから、脇目を振っては、だめだっ。

 俺は最後に敷物を作り、話し合いの長として腰を落とした。


「さて、第一回オオガミファーム大臣会議を始めたいと思う。その間、クエストの水やりは、櫻女さん、菜七さん、紫陽花さん、百合愛さんの順で行う。あーと、俺も臨時でやるから、勘弁してくれ」


 反感を買うといけないと思い、俺も水やりに参加する。

 これなら文句も出ないだろう。

 皆が、首肯した。

 俺はキボッチを手に、土に文字を書きながら話し始めた。


「櫻女さんは、『小麦(こむぎ)蔬菜(そさい)大臣』で、どうだ?」


 彼女が、プチプチと爪を弾いたのち、顔を上げた。

 何か考えていたのか。


「むむむ。『小麦』だけで大変なのに、『蔬菜』も一度に管理するようにってことね」


 学級委員長タイプでいながら、自分は動かないのかな?

 俺は、そんなことないけれども。

 待てよ。

 高校でクラス委員をしていた頃、同じくクラス委員の相方だった立石澪(たていし みお)さんに、文句を言われた。

 皆によく指図はするけれども、大神くんはどうなのかって。

 いやな黒歴史は、ぽいっとしたい。

 まあ、ここは櫻女さんを丸め込もう。


「俺も手伝うから。都会っ子にでもできることはあるのだよ」


「都会っ子? そんなことありません。どんなことができますか?」


 ほら、どストレートに来た。

 櫻女さんは、プライドが高いのだろう。


「それは、これから示して行くよ」


 櫻女さん、爪を二回弾いて、ちょっと反抗心を見せたけれども、仕方がないだろう。

 大臣の数は決まっているのだ。

 これから、ここで共同生活をしなければならない。

 そう、自分に言い聞かせては、ため息状態なのだがな。


「菜七さんは、『家畜(かちく)大臣』に向いているだろう」


「まあ、『家畜』さんですか? 可愛らしいと思う。どんな動物達かな? んー。肉牛(にくうし)は困ると思う」


 はは、肉牛は可哀想だから嫌だとか?

 霞を食べているのだから、それは食欲がなくていいだろう。

 ただ、俺としては食べたいよ。

 肉をな。

 母さんの肉じゃがが大好き……。

 いや。

 そんな過去は捨てたっけな。

 菜七さんは当たり障りがないから、俺でもなんとか話せる。

 これからも頼むよ。


「それは、家畜が亡くなったら、祈っていただくしかない」


「少なくとも私は霞で十分です」


 ほっこり笑顔で誤魔化される所だった。


「霞ばかりでダイエット中だったな」


「んー」


「誰か、違うと否定しないのか。もれなく、女子高生女神達はお腹にものを入れませんってか」


 だが、俺は毎食いただきたい。

 その為にも素材がいるのだ。

 菜七さんに、上手く牛のような家畜を引き渡すから、育てて欲しい。


「紫陽花さんは、『(きのこ)大臣』に決まりだな」


 ここで、茸を断られたら、俺、困るよ。


「猫がいてくれたら……。ふう、そうです」


「え? 猫の手も借りたいの? そんな冗句を放つとは思わなかったよ」


 猫の手も借りたいなんて、女子高生女神にも通じるのか。

 普通に女子高生を召喚していたら、高卒程度の知識があるってことだな。


「んー、ニャートリーは、猫鶏だよ」


 それだけは、付け加えておく。

 ニャートリーを連れて行かれては困ってしまう。

 今や俺の最大のパートナーだから!


「百合愛さんは、『乳加工品(にゅうかこうひん)大臣』なんて、中々いいと思うぞ」


「はうう! じゅるっ。牛きゅんのお乳を揉むですか」


 えええ!

 乳しぼりとかしたいんだ。

 ウインクばしばし飛ばさないでくれよ。

 慣れていないのだから。


「百合愛さん。もの凄く顔色が悪いけれど、大丈夫?」


「興奮しちゃって。揉むー! 直きゅん、私に任せて」


 百合愛さんが、絞るポーズを取ったり、ガッツポーズを取ったりで忙しい。

 そうなのですね。

 そんなに鼻血ものかな?

 できるのなら、お願いしますよ。


「それで、牛は何処に? 教えて欲しいじゃん」


「そうか。パンと牛乳とバターを考えていたから、つい牛の話をしてしまったな」


 俺は、じっくり汗を掻く程考えた。

 ニャートリーは、何処かへ行ってしまった。


「牛みたいなのを探してくるよ。クエストにはないけれども」


 俺は、水やりの手を止めて、櫻女さんに代わった。

 輪になっている皆の前で親指を立てた。

 任せろってな。


「茸も見つけられたのですから、きっと大丈夫だと思う。大神さん」


 菜七さんが俺の手を握った。

 握った?

 握ったんだよ!

 応援の握手だな、きっと。

 嬉しいのか、何なのか、悩み所ですよ。

 何故か母さんの顔を見られないと思ってしまった。

 俺、うぶ過ぎかな?


「うん、今から行って来る。昼頃までには帰るから、水やりしながらがんばってて」


 俺は、後ろ向きに手を振って、何も持たずに去り行く。


「直きゅん、私が付いて行こうか?」


「ええ! 意外なのですが? 百合愛さん」


 牛似家畜探しですよ?

 女子は面白いのかな。

 でも、人手があった方がいいのは確か。

 背中に腕を回していた彼女がくるりとこちらを向いた。


「てへ。大臣なのだ!」


「お言葉に甘えまして、存じ上げ、候」


 きょとんとすると、おちょぼ口の百合愛さんの口元が赤く染まる。


「何それ?」


「イッツ ア ジョーク」


 既に、多国籍な会話になってきたので、本題に入ろう。


「あのさ、井戸の近くに、古代遺跡みたいなものがあるのだ。中は見たことないけれども、奥からぼーうぼーうと、聴こえるんだ」


「それが、家畜の牛似さんだきゅん?」


 ========☆

 百合愛


 HP  0100

 MP  1008

 【愛方(あいかた)】3000 

 ========☆


「我が【愛方】よ! 牝牛似に告ぐ。さあ、集うのだ!」


 百合愛の右手を胸の前に伸ばす。

 そして、上へと音を取りながら高く指先を伸ばす。


「我が【愛方】よ! 牡牛似に告ぐ。さあ。集うのだ!」


 百合愛さんの左手を胸の前に伸ばし、彼女の右手に交差させる。


「いやー!」


 この後、どれ程の牛似さんがやって来たか、想像に難くない。

 ――本当の女子よりも怖いものを知った。

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