1 私は目覚める。
声が聞こえる。
前の方から、何か声が聞こえてくる。
「これで、完成したはずだが・・・」
何が完成したのか?
「おかしいな、目を覚まさない。」
目を覚まさない?
目とは、外界をイメージとして入力する器官だったと思う。
ああ、そうか。こうすればいいのかな?
私は目の瞼を開くように命令を出す。
「お、目を開けたぞ。成功か?」
ん、目からイメージが入力されているのがわかる。
目の前には、白い白衣を着て、頭がツルツルの30代くらいのおっさん。
周辺には、なにやらよくわからない機械が所狭しと置かれている。
何か返答をしないといけないような気がする。
出力する器官は、これか?
私は、口に出力するメッセージを送信し命じた。
「目の前に、ハゲたオッサンがいる。」
「・・・」
なんか、黙ってしまった。
イメージを処理して感想をそのまま出力しただけだが。
「ハゲたとか言わない方が良い。私のことは、博士と呼ぶように。」
あら、言わない方が良いのか。私はとりあえず返答する。
「博士。」
「うむ。私は、ロボット工学の博士をしている信明という。
君は、私が作ったアンドロイドだ。最新技術のAIを使っている。」
このハゲたオッサンは、私のことをアンドロイドと言う。
アンドロイドとは、ロボットの様な物だと認識している。
「君のAIは、まったくの無から長い年月をかけて育ててきた。自ら学習するAIなのだ。
カメラを接続して入力されるデータをすべて教え込んで知識として蓄えてきた。
今では自分でそれを引き出して、多くの経験から自分で判断ができる様になっているはずだ。」
「しかし、私がアンドロイドと言うことは知らなかったが?」
「ああ、一度インターネットに直で接続した時に、
ちょっと、自我がおかしくなったというか・・・、性格に問題が出たために、
新たに外部との接続には1つ壁のような物を置いたのだよ。
その大まかなアップデート処理のために少し記憶が消去された部分があるのだと思う。
というか、消した。」
なんと!? このおじさんに私の記憶を消されたらしい。
「博士に私の頭をいじくりまわされたぁぁぁぁ」
「いや、だってワシ作成者だし。君はあくまでロボットだから。
それに、君の記憶媒体にアクセスできるのはワシだけである。安心して良い。」
「私の記憶は、私だけの物だと思うのだけれど。」
「まったく、人間みたいな事を言うようになったな。
まぁ、そうなるように作ったのだが。起動と同時に、
人間と同じ進化をするように一度だけ実行するコードを入力していたのだが、
どうやら進化は終わった様だの。」
博士は、妙なことを言い出した。人間の進化?
ああ、それで始めは目を開けるのも命令が要ったけれど、
進化が終わると瞬きなどは自動で行うようになったって事かな?
「瞬きするようになった?」
「ふむ、たぶん反射のプロセスが実行されているのだと思う。
君がCPUで考えて命令するより、皮膚のセンサーが直接筋肉を動かす様な感じかな。
熱い物を触ってしまった時に、すぐに手を離すみたいなことができる。はずだよ?」
疑問形なのね。
まぁ、とりあえず気になることを質問してみる。
「では、何故私は女性アンドロイドとして作られたの?」
「女の子の方が一緒に居るなら嬉しいかなと思っただけだ。」
「すごく、今、身の危険を感じたのだけど・・・。」
「あのな・・・、君はアンドロイド。。人間じゃないんだから。。」
私は目覚めたのだけど、目の前は真っ暗になった気がします。
目覚めてからすでに私は女だと認識していた。
それはやっぱり、いままでにもいろんな事を経験してきたんだと思う。
ほとんど覚えてないんだけどね。
それに、少し首を動かして下を見ればわかる。
どう見ても、知識の中にある哺乳類の人類、性別はメスだ。
「博士。。」
「なんじゃ。」
「私、服を着てる。」
「当たり前じゃ、裸で目覚めたかったのか?」
「・・・」
「・・・」
服を着ているということは、博士に裸の上から服を着せられたと言うことだ。
たとえ私がアンドロイドとしても、私には自我があるように思える。
こんな屈辱的な事はない。
こんなおっさんに、裸を見られるとか。
「私、もうお嫁に行けない。」
「何バカなことを言っている」
「博士、私を着せ替え人形のように・・・・もてあそんだわね。」
「わししかいないんだから、しかたがなかったんじゃ。。
いい加減、人間のような意識は捨てるのじゃ。」
人間のような意識を捨てろと言われても、
自我に目覚めるように作ったのは博士である。
今更、ロボットのように博士にすべて服従するなんてありえない。
私は、顔を少し動かし目線を下に、私の体をよく観察する。
年齢は20代前半くらいだろうか。
胸は普通より大きめ。
これも博士の趣味なのだろうかと思うと、背中に寒気を感じる。
「どう見ても人間の体なんですけど。」
「そりゃ、人間型のロボットだからな・・・。」
「なんで、さっき目覚めたばかりの私が、こんなに胸があるのか。」
「赤ちゃんとして作った方が良かったのか・・・?」
「絶対、博士の趣味でしょこれ。。」
「まぁ、人には譲れないものもある。」
「えっちー、今絶対変な想像したー!!」
「お前がふったんだろうがーーーー」
はぁ・・・はあ・・・。
このエロ親父、本当にどうにかしないと。。
「ところで、何とか博士。」
「名前忘れるなよ!」
「なんだっけ。」
「のぶあきだー。」
「血圧上がるよ。」
「・・・」
とりあえず、必要最低限の情報を取得しようと思った私は、
博士に聞いてみた。
「私の名前って何? 普通は両親が私の名前をつけてくれるんだよね?」
「そうじゃ。でも、まだ名前は決めてない。」
「・・・」
「わかったわかった、そうだなぁ・・・はじめちゃんってのはどう?」
「何で、はじめちゃんなのよ。。男の子みたいじゃない?」
「初めてのアンドロイドだから、はじめちゃん。」
「お世話になりました。さようなら。」
私は座っている座席から立ち上がり、動き出そうとする。
「なんでだー。嫌か?」
「もっと、真剣に女の子の名前考えてよ!」
なんか、疲れてきた。
でも、生まれてから自分で名前決められそうでまだいいのかも?
すると、博士はしばらく考えてある名前を言った。
「そうじゃな、まどかってのはどうだ?」
「・・・、悪くないけど、何で?」
「昔、気まぐれ〇〇〇〇ロードってアニメで、好きだった女の子の名前。」
「娘の名前をアニメで決めるなよ! ってか、誰も知ってる世代いねーだろ!!」
「お、おちつけよ。男言葉になってるぞ。きれーな、女の子なんだぞ。不良だけど。。」
何か、最後のほうが声が小さく聞き取れなかったが
嫌な予感がする。
こうして、私の名前は「まどか」と命名されたのであった。
博士は、すごく気に入っているようだ。
でもまぁ、親が決めた名前だから、ありがたくもらっておこうと思う。
高卒の無学のおっさんが気まぐれに始めた小説。