第二話 【お嬢サンタ】の捕獲方法
【お嬢サンタ】とは、サンタクロースのおじいさんに雇われた、クリスマスプレゼント配りのためのバイトであるという。
しかも多種多様な美しさをもった美少女たちから熟女まで揃っているらしい。
この羊皮紙本は【お嬢サンタ】を捕獲して、性奴隷として囲い込むための魔導書であるという。
但し、サンタクロースや【お嬢サンタ】がクリスマスプレゼントを配るのは、未成年の『良い子』に限られているというのだ。
現在、一九歳の俺は、今年のクリスマスがラストチャンスである。
捕獲の手順としては、【お嬢サンタ】の目標となる靴下の選定作業から始まる。
サンタクロースや【お嬢サンタ】たちは、枕元に下げられた靴下を目標に遣って来てクリスマスプレゼントを置いていくらしい。
この時に【お嬢サンタ】が枕元に下げられた靴下を履くと、彼女自身がクリスマスプレゼントとして認識され、服務規定に則り彼女の所有権は靴下を下げた子供のものとなるという裏技が存在しているというのだ。
歴史の裏側を紐解くと、その裏技を活用して将来有望で性格も良い好青年と結ばれた【お嬢サンタ】がそれなりに居るという。
この裏技を悪用して【お嬢サンタ】の所有権を強制的に握ろうというのが、この魔導書が作られた目的らしい。
しかしながら、【お嬢サンタ】が人界へと降り立つのは、クリスマスイブの一夜だけである。
その機会を逃がすと、翌年のクリスマスイブまで待たなければならないという。
更に用意する靴下の種類によって、引き寄せられる【お嬢サンタ】の容姿や性格も変わってくるのだとか……。
純白の高級ニーハイソックスを下げると、貴族令嬢の如き見目麗しい【お嬢サンタ】が来るという。
一方、大人っぽい黒ストッキングを下げると、アダルティックで妖艶なお姉さまの【お嬢サンタ】が来るらしい。
他方、逆に子供っぽい靴下を下げると、ロリータコンプレックス心を刺激する幼い容姿の【お嬢サンタ】が来るとも説明されていた。
俺としては、お嬢様タイプの一択だ。
しかし、女性用の高級靴下を購入するのは、何気に難易度が高いのでは!?
更に、【お嬢サンタ】が枕元に下げられた靴下を自主的に履くことは、通常はありえないことだろう。
厳然とした事実として、彼女たちは靴下を履くことの意味を熟知しているらしいのだ。
そこで使用するのが香水瓶の如き精緻な玻璃の容器に入れられた『隷属の雫』と呼ばれる強力な誘引剤を靴下に垂らしておくことだという。
この誘引剤は、【お嬢サンタ】専用に開発された性フェロモンであり催淫効果も併せ持つ。
誘引剤の匂いを嗅いだ【お嬢サンタ】は、発情して状況判断能力が低下するとともに、狂おしい程に恋心を刺激されて靴下を履かせるに至るのだとか……。
そして靴下を履いた【お嬢サンタ】は、彼女自身がクリスマスプレゼントと化すわけであり、その時に働く強制力から件の寝室より逃亡することは出来なくなるらしい。
ただ、それだけでは【お嬢サンタ】の自我を奪い、その身を自由にすることは叶わない。
そこで使用するのが『支配のサークレット』と呼ばれるアイテムを頭部に装着することである。
『支配のサークレット』を装着された【お嬢サンタ】は最早、使用者の言い成りになるしかないというのだ。
『支配のサークレット』は、西遊記に登場する孫悟空の頭に嵌められた『緊箍児』と同じく、俺の思念を受けて収縮し頭部を締め付けるという。
最終的には頭部を圧壊して殺害することも可能だというのだから、恐ろしいアイテムである。
そして契約完了の証として、聖なる『契約の初口付け』で以て【お嬢サンタ】の肉体は、人間界で安定化するらしい。
この儀式を執り行わないと、高位の存在である【お嬢サンタ】の肉体は、約一日で解けて霧散することになるので注意が必要である。
その結果、ご主人様が望めば【お嬢サンタ】を淫乱な牝奴隷に堕すことも、貞淑な妻として傅かせることも思いの儘だという。
俺が【お嬢サンタ】に期待しているのは……、初々しい女友達からスタートして、行く行くは妻に迎えることであった。
一方、好みではない【お嬢サンタ】が罠に掛かった場合、下手に放流すると企みがサンタクロースに露見するため、可哀想だが殺処分する必要がある。
つまり付属されていた『慈悲の一突き』と呼ばれる短剣で止めを刺さないといけないということだ。
この際、殺害した【お嬢サンタ】の肉体や着衣などは、彼女が昇天するのと同時に解けて消失するらしい。
これは人間堕ちする以前の【お嬢サンタ】の肉体や着衣、それから子供たちに所有権を委譲する以前のクリスマスプレゼントは高位次元に属するものであり、多分に精神生命体やそれに類する不安定な状態であるからだという。
勿論、放置しているだけでも一日後には消失してしまう訳であるが、行方不明で助けを求める【お嬢サンタ】に、雇い主であるサンタクロースが気付く危険性がある。
つまり悪事が露見した場合には、それ相応の報いを受けるので、こんな残酷な処置が必要になるらしい。
従って好みのタイプの【お嬢サンタ】を誘き出すためには、靴下の選定作業が重要なのである。
しかしながら、単なる普通の男子大学生がひとりでランジェリーショップに行き、女物の高級靴下を購入することは敷居が高く、非常に困難な任務と言わざるを得ないというものだ。
ラブホテルの周囲には、大人の玩具を販売している自動販売機があることは知っているが、売っているのは避妊具や露出過多のお色気下着くらいだろう。
結局、ネット販売のサイトを覗き、薔薇の刺繍が刺された高級靴下を手に入れた。
この貴族令嬢が履くような高級靴下ならば、深窓の姫君タイプの【お嬢サンタ】が引き寄せられるのではないだろうか?
高級靴下を握り締め、捕獲した【お嬢サンタ】にあんな事やこんな事をさせるという脳内妄想に囚われてしまった。
『捕らぬ狸の皮算用』ではあるが、妄想するだけで興奮してしまう。
俺は、購入した高級靴下を鍵付きの抽斗の奥に隠すと、クリスマスイブを待った。
クリスマスイブが待ち遠しいという感覚は、いつ以来だろうか……。
そして、俺は待ちに待ったクリスマスイブの夜、枕元に薔薇の刺繍が豪奢に刺された白色を基調とする高級靴下を下げると、『隷属の雫』を垂らし、俺自身は睡眠薬を呷った。
桃色をした謎溶液である『隷属の雫』は、高級靴下に触れると直ぐに吸収して痕跡も認められない。
更に誘引剤であるというが、僕が嗅いだ感覚では無臭だった。
それから、徐に魔導書を開いて念を込めると、文字列の一部が発光して宙に浮かぶや否や光り輝く魔法陣を形成し、件の高級靴下に吸い込まれていった。
これは、魔導書に蓄えられていた魔力を用いて好みの【お嬢サンタ】を誘き寄せる助けとなる補助魔法らしい。
魔導書には、女性に関する様々な形容表現が記述されており、使用者が望んだ条件に合致する文言が活性化されて補助魔法を構成する魔法陣に変化するらしい。
そして如何やら魔導書は、一回限りの使い捨てらしかった。
因みに俺が睡眠剤を服用したのは、余りにも楽しみであり興奮して眠れなかったからだ。
そして、布団に潜り込むと睡眠薬の効果か、暫くすると意識が落ちていった。
お読み下さり、ありがとうございます。
第三話 囚われの【お嬢サンタ】
は、12月26日0時に予約投稿済みです。