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決戦前夜

お互いのことを本当に良く分かっているからこそ、お互いのことを出し抜くのは本当に難しい。


1手先じゃあダメだ。2手、3手、あるいは4手先くらいまで読み切らないと恐らく出し抜けないだろう。

祥子と告白対決(?)の約束をして別れてから、時間つぶしのソシャゲや宿題なんかをやっていたら、気づけばもう11時になってしまっていた。


とりあえず、やるからには絶対に勝たなくてはならないので、作戦を練る。


勝負ごとにおいては、先攻が有利な場合と後攻が有利な場合があるが、今回の対決はどうみても先攻が有利だろう。


2回目に見る一発ギャグがそこまで面白くないのと同義で、先に告白を受けてしまっては、どうしても相手に対して印象を与えにくい。


先に告白を受けてしまった時点で、後攻め側にもどうしても先の告白が頭の中によぎって、それと比較してしまうからだ。これではオリジナリティーに欠けてしまう。


つまりそう考えると一刻も早く告白をするべきなんだが……。時間帯だな。


明日の放課後辺りが最もシチュエーション的には楽なんだが、俺がこう考えているということは相手も間違いなく同じことを考えているということだ。


次に思いついたのは明日の昼休みだが、これも既に遅い気がしてしまう。


アイデアは鮮度が命だ。直感的に『これはイケるっ!!』と思った瞬間を狙うのが一番いいだろう。


とりあえず、明日の流れをシミュレートしてみる。


まずは朝起きて、支度を整えて祥子の家の呼び鈴を押して一緒に並んで歩いて学校へ行く。


そして授業を受けて……。


ん?


待てよ?


何ら変わりない日常の風景のはずなのに、ふと違和感を覚えてしまう。


何がおかしい?考えろ、考えろ。



そうか、当たり前すぎるんだ、そんなのはあり得ないんだっ!


俺の予想の斜め上を行くことにおいては恐らく世界で最も長けているはずのアイツが、そんな普通の行動を取るわけがないっ!


俺がもし祥子の立場に立っていたとするなら、もうこの時点で既に先制攻撃を与えているはずだ。


危なかった。


戦うフィールドを間違えるところだった。


そもそも学校で戦おうとしている時点でお話にならない。


どんなに遅くとも、登校時の通学路までには蹴りをつける必要があるが、多分もっと早くに告白できるチャンスが残っているはずだ。


もっと早く呼び鈴を押して、向こうに余裕がないときに攻め込むか?


いや、俺がどんなに早く起きたところで、アイツが寝てりゃ話にならないよな……。



ん?


今のところに何かヒントが隠されているような……。



っ!?


そうか、分かったぞ!



『俺が祥子を起こしてその流れで告白を決めれば、絶対に先制攻撃を受けることはないっ!!』


これだ!!


ここまで気づけばこの勝負にも勝機が見えてくる。


もしかしたら祥子も同じ考えにたどり着いたかもしれないが、アイツの寝相の悪さは折り紙付きだ。


この間呼びに行った時も、『あのバカ、まだ寝ちゃってて……。ゴメンなさいね、今すぐ起こして支度させるからっ!!』と、祥子ではなく祥子の母親である聡里(さとり)さんに出迎えてもらったしな。


女になった時はあんなに溺愛してたのに、わずか1か月ほどでバカ呼ばわりに戻ってるとか祥子もちょっと可哀そうだな……。なんて考えたのを思い出す。


祥子とは違って、聡里さんはお弁当を作るためにいつも早起きしてらしいので、恐らく朝6時くらいに呼び鈴を押しても問題ないだろう。


聡里さんには少し迷惑をかけてしまうが、事の発端を辿れば祥子が悪いので責任は全部アイツにつけておこう。


さて、そうと決まれば時間帯も場所も決まった。


あとは、どういう告白をやるのか、そこを考えよう。


この勝負において非常に重要なのは、いかに相手の求める理想の告白に応えられるか、という点だ。


決して自分のやりたい告白が勝利に結びつくという訳ではない。


「つ、付き合ってくださいっ!」とまるで先輩に告白するように、拙いながらも気持ちが伝わるような告白が良いのか、それとも、俺様系で「俺と付き合えよ!」のように強引に行く告白が良いのだろうか。


うーん。


どう動くべきかが全く分からない。


分からない時はセオリーに従って行動するのが一番なんだが、そのセオリー自体が存在しないこんな状況では、その一歩目を踏み出すことすら難しい。


相手の性格や考え方を読み切り、その想像の更に上を行くハイレベルな告白、か……。


残念ながら、『相手の予想の斜め上を行く』という点においては圧倒的に祥子の方が強い。


これはおそらく祥子も分かっているだろうし、そのアドバンテージを最大限に活かしてくることは容易に想像できる。


だがしかし、ほとんどの場合アイツが俺の予想を超えてくるときはロクなもんでないので、そこを気にする必要はそこまでないと思う。むしろ超えるな。


ああダメだ、ふとアイツが中学時代に本当にやりやがった『アリの門渡りに本当にアリを渡らせてみたけど実際そこまで気持ちよくなかった事件』のことを思い出してしまった。


あまりにドン引きしすぎたので、アレを聞いた瞬間から確か1週間ほど俺はアイツと口を利かなかった。


未だにあのセリフは人が発してはいけない台詞ランキングの第一位に居座っているので、そろそろ殿堂入りしてもいい頃合いだろう。何の殿堂だよ。むしろ表彰すんなよ。


親友に対してあそこまで純粋に殺意が沸いたのは恐らく最初で最後だろう。殺意を覚える親友とはなんぞや?


話が少し脱線してしまったが、結局は『相手の意表を突くことが出来るか』がこの勝負の焦点だ。


つまり言ってしまえばサプライズ対決みたいなものなんだが……。サプライズかぁ、難しいなぁ。


まさか、『告白するかどうか』じゃなくて『どういう告白をすれば相手に喜んでもらえるか』で悩む日が来るだなんて思ってもみなかった。思うわけねーだろんなもん。


ああダメだ、少し頭が回んなくなってきた。


こんな状況でいいアイデアが出てくるはずもないな。


過去の経験がこんな形で役に立つとは思ってもみなかったが、とりあえず今日のところは一旦寝て、明日早起きしてから考え直すのが良いだろう。


いつもは7時にセットしているはずのアラームを2時間ほど早めて、電気を消して眠りにつく。


さーて、どんな風にアイツを喜ばせてやるか……。


と考えて祥子の笑顔を想像するたびに、やっぱり俺は祥子が好きなんだなぁと実感しながら、俺は目を閉じようとした。






コンコンッ、と、窓をたたく音がしたのは、そんな幸せなことを考えていた時だった。

ギリセーフ、セーフ。


ランキングに上がってましたありがとうございます!!!


前回の最高は12位だったので、それを超えられるように頑張ってみたいです。


感想&ブクマ&評価の方、どしどしお待ちしております!生きがいになるんでどうか恵んでください。


次回は7/4を予定しています。 


それでは、お読みいただきありがとうございました!!

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