困らないが、困る-2
まずは一つ目からか。えーと、確か……あれは3週間くらい前の出来事だったような気がする。
人の記憶は短期記憶と長期記憶の2種類に分けられるらしく、興味のない出来事なんかは1日で直ぐに忘れてしまうが、個人にとって衝撃のある出来事だといつまで経っても覚えていられるそうだ。もっとも、遠い昔の思い出なんて脳内で脚色されまくってるから100%正しい中身を思い出せるとは限らないが。
まあつまり何が言いたいかというと、こんな衝撃的な一言は俺が死ぬまで忘れることはないということだ。
『セフレは作ってもいいけど浮気はするな!!』
いやマジで頭おかしいだろこれ。何がヤバいって、こんなド下ネタを教室でやったこともヤバいし、何より『昨日エッチしたよね~~』みたいな話でクラスがざわついた次の日にこの話を持ってきたのが最高にヤバかった。俺頭抱えてたもんあの時。なんならソシャゲのガチャで30連爆死したときよりも頭抱えてたと思う。
クラスの痛い視線を一手に集めてしまった俺は、しょうがないので元凶に全ての責任を押し付けることにした。てか俺何もやってねーし!!無罪でしょ、むしろ名誉棄損で被害者を名乗れるまである。
「氏ね」
「いやゴメン、流石に端折りすぎたと思う、ごめん」
「どこをどう端折ったらそうなるんだ??」
未だに理解が追い付かない。いや、理解したくもないけど。
と脳内では結論が着いているのに、それでも祥子の言い訳を聞こうとしている辺り、なんだかんだで俺も祥子に甘いのかもしれない。
「いや、あのー、ね?
昨日ぼけーっとテレビを見ながら考えてたんだけど、物事は多角的に見るべきってよく言うじゃん?」
「……うん、そうだな?」
「んで、それを義明と私について当てはめてみたわけなんですよ」
「……うん」
「そしたら、『あれ?女の良し悪しもこれと一緒で、一人だけじゃ分からなくない?』っていう結論になった」
「?????」
思わず両腕を組んで首をかしげる。
なんだろう、この感覚。時間をかければ理解できるんだろうけど、理解したくねえ……
「というかそもそも、俺がお前を『良い』と思ってればいい話じゃないの?それ」
「……あ。
あぁーー、鱗から目ええぇぇぇぇーー!!」
「お前の瞳はどこに付いてんだ」
どうやら祥子は自身の思考に没頭するあまり、一番大切で単純な部分を見落としていたらしい。
あぁーね、まあそういうこともあるよね。俺も出かける時の荷物チェックを何度もやって、自信満々に出かけたら肝心の財布を忘れて詰んだ、なんて経験もあるし。
「んでさー、一つすっごーく気になってることがあるんだけど、いいか?」
「うん、なーに?」
喋りながら、何十もの視線が集まっているのを感じる。もしかしたら、この視線を恐れずに祥子と喋れるようになる日が来てしまうのだろうか。そんな感覚麻痺だけは死んでも起こしたくないんだが、人間様のハイスペックな脳ではやりかねないので困る。
今の時点でただ一つ分かっているのは、とりあえずコイツは始末してあげなければいけないという事だけだ。
「どうやったらそんなことが考えられるのか気になるから、一度司法解剖にかけていいか?」
「あ……あれ?義明?司法解剖って、死者にやるものなんだよ?」
じりじりと祥子に対して距離を詰めていく。元から壁に背を預けていた祥子に逃げ場はなかった。
「ああ、それが分かってるなら話は早いじゃないか」
「……ん?義明、目が笑ってないよ?か、カッコ悪いよ?まあ待て、話せばわか……」
その後、学校を後にするまで彼女は喋らなかったそうだ。
一仕事終えてフッと息をつくと、周りのみんなからは何故か生暖かい目を向けられていた。何故だ。納得がいかん。
おいそこの女子ども、『あんなカップルいいよね~~』じゃないんだよ。むしろ俺たち世紀末だよ。なんで俺が付き合ってから出来るようになったことの一つに「祥子の弱点を一撃で突く」があるんだよおかしいだろ。
すみません、続きは一旦お休みします……。
R-18の方の練習のためです、設定はこの作品と一緒ですが、今の話から1年くらい飛ばして、熟練夫婦並みの信頼感を手に入れた二人のお話にする予定です。
8/20までにそっちをノクターンノベルスに投稿した後、こちらに復帰しようと思います、最近全然更新できてなくて申し訳ございません……。
8/20 23:40追記:なんとか投稿できましたが、半分しか書けませんでした……
本当は全部書き終えるまで投稿しない方が良いかな……とも思いましたが、やっぱり自分の発言には責任を持つことにしました。
よければそちらも見て頂けると幸いです!!
以下リンクです
女になった親友と、ただ単にイチャつくだけ。(https://novel18.syosetu.com/n5555ey/)