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無自覚な誘惑-4

「それにね、もし私が綺麗になってるとしたら、それは義明のおかげだよ。


だって、ほら。


恋すりゅ……恋する女の子はカワイイっていうでしょ?」


なんだか明日を生きるための活力になりそうな程に凄く嬉しいことを言ってくれた気がするが、肝心要な部分を噛んでしまったせいで、あぅ、と顔をしかめてちょっと涙目になっている。たまらん。


いや待て、たまらんって言い方は流石に語弊を招きかねないんだけど、いややっぱりその言い方で合ってるのか?合ってるな、うん。


「まあな、恋すりゅ乙女は無敵だもんな」


「はいーそうやってすぐネタにするー」


「こんな嬉しいこと、ネタにしないわけがないだろ。一生からかってやるよ」


「する義明もカッコいいーー」


ちょっと素直に本音を言ってやるだけで、さっきまでの不機嫌はどこへやら。いつものちょろカワイイ祥子が舞い戻ってきた。最近になってようやく、祥子の正しい取り扱い方を学んできた気がする。とりあえず褒めてあげると喜ぶ。そこに本音を交えてやると狂喜乱舞してくれる。愛の告白なんてしようものなら喜びを通り越して暴走し、とんでもなく可愛くなる。よし、間違ってはいないな!!!


……今なら祥子の取扱説明書だって書けるかもしれない、なんて思い込んでいたさっきまでの自分をぶん殴ってあげたい。色眼鏡かかりすぎだろこれ。ナイフとフォークを見間違えるくらいには曇ってんぞ。


「んで、結局?何が言いたいわけ?


私の可愛い姿を見ると義明が嬉しいってことが言いたいの?」


「あー……うん……」


まるで口笛を吹く時のような軽口で、大正解を言われてしまった。想いが通じ合った喜びになんとも言えない幸福感が募って、思わず顔から火が出そうになる。なんだよコイツ俺限定のエスパーかよずる過ぎるだろ俺にもその能力よこせ。そして二人で身悶えしまくるところまで見えた。


「……はい、とても嬉しいです」


嘘がバレて正直に親に白状する子供のように、しゅんとした口調で本音を零す。まさか俺が冗談を真実で返すと思っていなかったのか、祥子は祥子で俺の返答に口を開けてあんぐりしていた。あんまり見たことのない表情だったので何となしに見つめてしまう。お互いに10秒ほど見つめ合ったところで、祥子の顔がかあっと朱くなり始めた。


「お、おう、そうか……うむ、苦しゅうないぞ」


おかげでキャラがブレブレだった。


「ち、ちなみにさぁ、義明の好きな髪型とかってーー」


「黒髪ミディアム一択。少し髪が肩にかかるくらいだと尚良し」


「お、おう……分かった」


今の祥子の髪型は、男だった当時の髪型をそのまま受け継いだようなショートスタイルになっていて、ボーイッシュな感じでこれはこれでかなり個人的には好きだったりするのだが、その髪型のせいで時折祥吾の面影が重なって見えてしまうのが大幅な減点対象になってしまうのだ。アイツは俺の記憶の中でずっと生きてりゃいいんだよ上等だろ。


そういうわけで、この後俺の理想とする女の子の髪型についてみっちりと祥子にご指導してあげた。途中から不愛想になった祥子とは対照的に、俺の方はその魅力に取りつかれてヒートアップしすぎたせいで、街ゆく人々から怪訝な目を向けられてしまったことは言うまでもない。……こともないか。


まあ結局どうなったかといえば、最後の最後に祥子が発した「でも結局髪の手入れって面倒だからやーめた」という歯に衣着せぬ発言のせいで、俺がまたしても祥子にアイアンクローをお見舞いする羽目になったわけなのですが。これ別にアイアンクローしなくてよかったよな?ゴメンな……と、俺は眠りにつく直前に、ちょっとだけ祥子に心の中で謝っておいた。ちょっとだけ。

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