表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/26

無自覚な誘惑

どちらかの家に遊びに行って、二人で日が暮れるまで夜まで遊んで寝るというなんとも怠惰で幸せな時間を送り続けていたら、GWはあっという間に過ぎてしまった。


あの日以来割とそこそこ昂りゲージが貯まってたので、『チャンスがあれば……』と二人して思っていたのだが、お互いの父親もGWがお休みになったせいで家が無人になることはなく、そんな中で盛り合う勇気は俺たちにはなかった。


『声を出さなきゃバレなくね……?』と一度勇気をもってトライした事もあるが、その瞬間を見計らったかのように俺の母親が洗濯物を干しに二階に上がってきたせいでその勇気は超絶不完全燃焼に終わった。やっぱり俺に対する第六感働いてるんじゃねーの?


まあそんなこんながあり、今日からは普通の日常がまた舞い戻ってきた。


教室は普段よりも少し浮かれていて、まるで新学期が始まった時のような喧騒に包まれていた。『早く教室に行って友達と喋りたいけれども授業は始まって欲しくない』という矛盾した意見は矛盾界の中でもかなり最強クラスだと思う。あと個人的には『人生を大事にしないやつはクズだ!死ね!』辺りも強い。


普段のように教室に入ると、少しだけその喧騒が止んでピタリとこちらを見る者がチラホラと現れる。なんでだろう……と軽く推察して、GW前に夫婦漫才をクラス中に見せびらかしてしまったことを思い出した。まあ妬みや恨みの視線で見つめられるよりもよっぽどマシではあるが、こういった優しい視線ばっかりを受けてしまうというのもなんだかむず痒い。


朝こそそんな風にみんな浮かれていたものの、いざ授業が始まってしまえばそれは普段と何ら変わりなく進んでいく。毎日勉強できるような偉い人だとそろそろテスト勉強に向けて問題集を解き始めているかもしれない。


そして俺はといえば、授業の時間を活かしてGW中に思いついた仮説についての考察をしていた。


それは――



祥子の無自覚な行動がエロいということだ。


例えば、こうして授業を受けているときの真面目(に見えるだけ)な後ろ姿とか。(この時真面目に練り消しを作ってるだけなのを後で知って絶望した)


あるいは、普段島田さんたちと喋っているときに俺の話題が出てきて真っ赤に照れている姿とか。(おい何アレコレ暴露してんだころすぞ)


あるいは、自分の興味ある話を嬉々として喋ってくるときの嬉しそうな表情とか。(昔のお前の夜のオカズなんて誰が知りたいんだ??)


必ずツッコミどころとセットでやってくるのだけはどうにかしてほしいが、その問題を差し引いても思わず男子高校生には刺激が強すぎるようなエロい表情をしてくれる時がある。


ここで、どうしても一つ難題が訪れてしまうのだ。


あの表情は無自覚にやってるからこそいいのであって、俺がお願いしてやってくれたとしてもその良さはグッと薄れてしまう。これを俺は『一発ギャグのパラドックス』と勝手に呼んでいたりするのだが、その一発ギャグのパラドックスに俺が今抱えている問題も含まれてしまうのだ。


つまり、今俺が悩んでるのは、

『お願い!!照れて!!』『え、デレてじゃなくて?』という的を得ているようで得ていないような宙ぶらりんな会話を祥子とするべきなのか、あるいはストーカーのように祥子を陰から見続けて華麗に振る舞う偽の祥子の表情を見続ける方が良いのか……。ということに集約される。



どっちだ、どっちだ、どっちの方がより隠れた祥子の可愛さを引き出すことが出来るんだ――――



「えー、じゃあこの問題は、潮。答えは何だ」


「7分の3πです」


「どうした、潮。やればできるじゃないか」



違うぞ、祥子の姿をガン見しながら考察を捗らせるために予習は全部済ませてきたんだぞ舐めんなよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ